【必見】ワンオペ育児とは?悩む前に夫婦の役割分担を!

 近年、ワンオペ育児という言葉が注目を浴びています。

 ※ここで言うワンオペとは、「ワンオペレーション=一人操業」という意味であり、一人で育児をしている状態のことを指しています。

 その理由の一つとして、核家族世帯(夫婦とその子どもで構成される世帯)や共働き世帯が増加している一方で、男性の育児時間が変わっていないことが挙げられます(「総務省統計局:明日への統計2020」より)。

家事育児分担について話し合いをしている夫婦の割合

 「女性活躍推進法による女性の社会進出」や「イクメンプロジェクトによる男性の育児参加」といった政策がなされているものの、感覚としては男性の働き方に大きな改善は見られず、女性の家事や育児負担が増加する一方だと感じている人も少なくありません。

 実際に、前述の総務省統計局の調査結果によると、男性の家事育児時間の合計は徐々に増加していますが、女性の家事育児時間の合計は、過去から大きく変わっていないことが分かります。

 そこで、本記事では、そういった状況を踏まえながら、ワンオペ育児の定義やその解決方法、向き合い方について紹介します。

1.ワンオペ育児とは?

 ワンオペ育児とは、ワンオペレーション(一人操業)で育児をすることです。

 従来は、主に店舗を一人で営業する際に使われる言葉でしたが、近年では、一人で育児をする際にも使用される機会が増えています。

1-1.ワンオペ育児の定義について

 まず大前提として、ワンオペ育児の明確な定義は決まっていません。

 元々は店舗を一人で運営している際に使われていた言葉であることを踏まえると、あえて仮に定義するのであれば、「一人で育児をしている状態」と定義することはできそうです。

 ただ、その「一人で育児をしている状態」にも様々な視点が含まれています。

 主な使われ方としては、「一人で家事や育児をしている状態」と「一人で育児にかかわる全てをしている場合」の2つのパターンがあります。

 この2つのパターンの明確な違いは、「家計を支える行為を育児と呼ぶか」という点です。

 育児という言葉には、「養育」という意味も含まれている為、言葉の定義だけで考えれば「祖父母や友人の力を借りない一人親」ということが正しい定義となります。

 その為、夫が仕事をして家計(経済面)を支えている場合は、「経済面を支えることも育児のひとつだからワンオペではない」という厳しい声も多く聞かれます。

 しかし、そもそもの成り立ちを考えると、店舗を一人で運営している状態も、その店舗の経営は別の誰か(オーナー等)がやっていることが多く、本当に全て一人で行っているわけではありません。

 本来のワンオペとは、店舗を運営する上での肉体的かつ直接的な労働を一人で行っている状態を指しているのです。

 その概念を基に、「今日は休日だけど夫が仕事だから昼間はワンオペだ」というような使われ方をしたとしても、あながち間違いではありません。

 つまり、ワンオペ育児の明確な定義はなく、人によって捉え方が異なっているのです。

 明確な定義付けがされていないことを踏まえれば、この言葉を使用したいと感じるほどに育児の負担が一人に押しかかっている状態(育児を一人でしている感覚になる状態)のことを、ワンオペ育児と捉えた方がしっくりきやすいかもしれません。

 本記事においては、「ワンオペ育児=育児負担を強く感じている状態」という考え方で引き続き紹介していきます。

1-2.ワンオペ育児のチェック方法について

 続いて、ワンオペ育児かどうかを確認する方法を紹介します。

  • 【ワンオペ育児チェック方法】
  • ・配偶者の平日の帰りが遅く(21時以降)、休日出勤も多い(週休1日以下)
  • ・そもそも単身赴任や出張で月2~3日未満しか家に居ない
  • ・夫婦共働き(勤務時間が大体同じ)で、配偶者が家事や育児を一切しない
  • ・生活するために配偶者の収入は必要ないが、配偶者が家事や育児を一切しない
  • ・平日には、飲み会に多く参加していて帰りが遅い
  • ・休日には、ゴルフ等、会社付き合いを含む趣味を優先しており、家に居ない
  • ・強い孤独感や孤立感を感じている
  • ・一時保育等、保育サービスを利用せず、家庭内だけで育児をしている
  • ・いざという時に頼れる祖父母や友人が居ない

 上記に一つでも当てはまればワンオペ育児と言える可能性があります。

 但し、前述でも記載しましたが「ワンオペ育児かどうか」ということよりも「育児負担を強く感じているか」が重要です。

 本チェック項目に当てはまらないからといって「ワンオペ育児ではない=育児負担が大きくない」というわけではないことに注意しましょう。

2.ワンオペ育児になりやすい環境とは?

 続いては、実際にワンオペ育児になりやすい(妻に育児負担がかかりやすい)環境について紹介します。

2-1.妻は専業主婦、夫は仕事で分業されている

 SNS等で多く見受けられるのが「妻は専業主婦だから家事育児全般」「夫は仕事で経済面全般」という役割分担をしているケースです。

 このケースでは、妻に全ての家事育児の負担が掛かり、家庭内のワンオペ傾向が強くなります。

 特に生後初期は、出産の身体的な疲れに加えて2時間おきの授乳が必要であり、家事育児の負担が大きく、ワンオペ育児と感じやすくなります。

 また、上記の役割分担がされている場合、「仕事にも大変な時はあるから」と捉えられることもあり、夫が家事や育児に協力してくれないことも少なくありません。

 但し、言い換えれば稼得責任(お金を稼ぐ責任)は、全て夫が担っている状態です。

 夫に養育費を稼ぐ責任を押し付けたまま、家事や育児にも積極的に参加しろ、というのはかなり難しい要求であることも忘れてはいけません。

 妻が専業主婦で夫が仕事をしている家庭は、妻が一人で家庭を支え、夫が一人で家計を支えている状態です。

 お互いに大変であることは間違いありませんが、完全分業されている為、お互いの大変さを共有しにくく、意外と衝突の多い関係性です。

 意外かもしれませんが、専業主婦世帯よりも共働き世帯の方が、妻が家事育児の負担を感じている割合が小さいというデータもあります(「内閣府:少子化社会対策白書」より)。

2-2.夫の仕事の負担が大きい

 夫の仕事負担が大きい(残業が多い)場合、どうしても子どもと直接関わる育児は、妻中心となります。

 お風呂などはどうしても一人では大変ですが、夫の帰宅が21時以降になると子どもが寝てしまうため、一人でやらなければいけないことも少なくありません。

 夫が出世を狙っている場合や経済的に残業が必要な場合においては、残業を制限することも難しく、夫婦二人ともに大きな負担がかかることになります。

 仕事と家庭の両立に対する社会的な理解が進んでいないことによる弊害とも言えるため、夫婦どちらかを責めるのではなく、今の社会環境を責めるべきなのかもしれません。

2-3.夫婦で役割分担について話し合っていない

 「ワンオペ育児」を感じる原因として夫婦で役割分担についてしっかりと話し合っていないことが多くあります。

 何となく出産前の役割分担のまま過ごし、夫婦で見直すことなく生活している家庭も少なくありません。

 出産前の役割分担のまま単純に育児が追加されれば、妻の負担だけ増加し、夫の負担はほとんど変わらないため、自分だけ育児負担が増加したように感じるケースもあるようです。

 夫が出産前と変わらない生活を送っているのを見ると「私だけ苦労している」と感じる場合もあります。

 本来は自分の努力によって夫が幸せに過ごせているため、誇りを持てれば良いのですが、日々のストレスから苛立ちを感じること少なくありません。

 なお、「内閣府:令和元年度 仕事と生活の調和推進のための調査研究」によれば、約4~5割の夫婦が家事や育児の分担について、話し合っていません。

家事育児分担について話し合いをしている夫婦の割合

 同調査によれば、話し合っていない夫婦よりも、話し合いをしている夫婦の方が、育児に対して前向きな感情を抱いている割合が高いことが分かっています。

家事育児分担についての話し合い有無別、夫婦の満足度

 家事育児の分担について、しっかりと話し合いをしていない場合、暗黙的に家事や育児を押し付けられている (押し付けている)可能性があります。

2-4.どちらか一方が育児ストレスを感じやすい

 また、初めての育児を計画的に進めることは難しいですし、育児の中には心配しなければいけない要素が多く含まれています。

 その為、少し怒りやすい方や心配性の方、計画的に物事を進めたい方などは、育児ストレスを感じやすい傾向があると考えられます。

 そういった傾向のある方は、育児を計画的に進めることができるようになったり、不注意から起きる不慮の事故等を防ぐ良い面がある一方で、そのストレスを感じやすいのです。

 夫婦のどちらか一方(又は両方)が育児ストレスを感じやすい性格の場合、同程度に育児を分担していても、「私(僕)の方が育児負担が大きい」と感じてしまうこともあるでしょう。

 育児ストレスを感じやすい側の育児負担を下げると、物理的にもう一方の育児負担が上がり、ワンオペ傾向が強くなります。反対に、育児ストレスを感じやすい側に同程度の育児負担を割り振ると、精神的にワンオペ感を感じてしまう可能性も考えられます。

 何よりも大切なことは、ワンオペ感(一人で抱えている感)を感じないことだと考えられる為、必ずしも同程度に家事や育児負担を割り振ることが最善ではない、ということが言えるかもしれません。

3.ワンオペ育児を軽減する対策とは?

 続いて、ワンオペ育児による育児負担を軽減する対策について、紹介します。

3-1.夫婦の役割分担を整理しなおす

 まずは、本当に「ワンオペ育児」なのかを明らかにするために、夫婦の役割分担を整理しましょう。

 なお、役割分担を整理する際には子どもと直接かかわる育児だけでなく、経済面を支える仕事についても考慮する必要があります。

 また、誰にでも平等なものは「時間」です。まずは全ての家事や育児にかかる時間を算出し、1週間当たりの家事育児時間と仕事時間を比較してみることから始めましょう。

 参考までに「総務省統計局:明日への統計2020」によると、「家事育児の合計時間は1日あたり約8~9時間」となっています。

 家事育児に休日はないため「8時間×7日間 = 56時間」が1週間の家事育児時間となります。

 同様に夫の勤務(8時間)、残業(2時間)、通退勤(1時間)とすると「仕事に関する合計時間は1日当たり約11時間」になります。

 週休2日で1週間に換算すると「11時間×5日間 = 55時間」ですので、家事育児時間と仕事時間は、ほぼ同等だと言えるかもしれません。

 但し、あくまで全世帯の平均時間であるということと、仕事時間は残業によっていくらでも調整できてしまうことを踏まえれば、各家庭で本当に必要な家事育児時間と仕事時間を比較してみると良いでしょう。

 また、前述した通り、家事や育児時間が同程度だからと言って、育児ストレスが同程度とは言えない場合もある為、時間割合だけに注目しすぎないように注意しましょう。

3-2.夫婦で手を抜くことを決める

 お互いの負担(時間)を算出したうえで夫婦の分散が難しそうである場合、手を抜いてしまうことも一つの手です。

 但し、家事や育児、仕事は家族のための役割であるため、どちらかが一方的に決めるのではなく「つらいから手を抜きたい」ということを伝え、夫婦で納得感をもって決めることが大切です。

 例えば、洗濯の負担を軽減する場合「洗濯しない」「タオルをある程度使いまわす」「乾燥まで全自動の洗濯機を買う」など、様々な選択肢があります。

 さすがに「洗濯しない」は難しいでしょうから、負担を軽減するための方法や効率化を夫婦で考えると良いでしょう。

 参考までに筆者の家庭では、乾燥まで全自動で完了する洗濯機を使用しています。

 少し値が張りますし、衣服が縮みやすいといったデメリットはありますが、毎日の15~30分 (洗濯物を干す、取り込む)は大きい為、家事の負荷軽減を優先しています。

3-3.ワンオペ育児であることに気付かないフリをする

 意外と効果がある方法として、ワンオペ育児だと思わないようにする方法があります。

 夫婦で生活している以上、「自分一人でしている」と考えること自体、非常に悲しいことです。

 また、完全に夫婦平等に生活することは難しいため、多少自分の負担が大きくても、それに気付かないようにすることも必要かもしれません。

 大切なことは、誰かに負荷が偏っていないかということではなく、家族全員(自分含む)が幸せかどうかということです。

 育児負担を無理に抱えることは良くありませんが、完全な夫婦平等を望むと反対に疲れてしまうことも少なくありません。

 夫に家事や育児の協力を得ることも大切ですが、協力させるためにあれこれする方が労力を使う場合もあります。

 家事や育児の手順を変えたり方法を変えるといった効率化を考える方が、結果的に良い方向に向かうこともあるでしょう。

4.本当のワンオペ育児は存在しない

 以上で、ワンオペ育児とその対策については終わりです。

 繰り返しになりますが、社会に所属している以上、「ワンオペ」ということはあり得ません。

 ただ、それと同時にワンオペかどうかに関わらず、育児に真剣に向き合うことが大変であることは間違いありません。

 誰もが様々な苦労を抱えている中で、「自分一人がワンオペだから大変だ」という主張をするのではなく、「大変だからお互いにねぎらい合う」ことが大切ではないでしょうか。

 また、自分自身の努力を認めてもらうにはまず、相手の努力を心から認めてあげる必要があることを忘れてはいけません。

 最後に、あなたの育児は、社会全体で支えられています。孤立感に苦しめられている場合は、一人で抱え込みすぎず、「国の相談窓口:心の健康相談」に相談してみることも考えてみましょう。

 匿名で相談できますし、話を聞いてもらうことで楽になることもあります。ネット上の情報よりも信頼できますし、何よりも身近で心の支えとなってくれるはずです。

 繰り返しになりますが、あなたは決して一人ではありません。家庭内で助けが無ければ、社会に助けを求める勇気を持って行動しましょう(相談しにくければ、気軽に筆者(下部の問い合わせ先参照)までご連絡を頂いても構いません)。