【育児の悩み】子育て中に孤独感を感じる原因とその解消法とは?

 現代社会においては、少子化や核家族化が進行し、地域社会との交流機会も減少している為、子育て中に孤立感を感じる女性(男性)が多くなっています。

 厚生労働省の調査によれば、3歳未満の子どもを持つ女性の約6~7割は家庭で育児をしており、社会からの疎外感や孤立感を感じやすくなっています(「厚生労働省:令和元年度 子供・若者白書」より)。

「内閣府:令和元年度 少子化社会対策白書」保育園と幼稚園の年齢別利用者数及び割合(平成30年)

 特に、結婚又は出産前には仕事などの社会活動を通じて他者と頻繁に交流していた方は、育児休業や離職により、必然的に他者と関わる機会が減ってしまうことも影響していると考えられます。

 本記事では、そういった子育て中の孤独感やその原因、対策について紹介しています。

1.子育て中に感じる孤独感とは?

1-1.話し相手が限られていることによる孤立感

 特に0~3歳児の育児中に多く見られるのは、とにかく話し相手がいない孤立感です。

 原則、外出を控えなければいけない生後0~2ヵ月では、会話どころか意思疎通すらできない赤ちゃんのみと関わることがほとんどであり、夫婦の両方が育児休業(や退職)などをしていない限り、家には赤ちゃんと自分一人だけになります。

 さらに、生後3ヵ月頃からやっと外出ができるようになったとしても、常に赤ちゃんを連れて外出することになる為、遠出や人が集まるような場所で積極的に交流することは難しく、関わる人や時間が限定的になりがちです。

 また、結婚を機に地域を引っ越していれば、学生時代の友人や職場の友人とも気軽に会うことは難しいですし、子育てをしていない友人は平日仕事をしていることが多い為、なかなか時間も取れません。

 そういった背景から、子育て親と子育て未経験親の交流は自然と少なくなってしまう為、つい最近まで子育て未経験親だった自分自身は、子育て親の友人が少ない可能性も高くなっています。

 育児休業中や専業主婦の場合は、保育園などの保育サービスも利用しにくい(定員オーバーである)為、ママ友などもできにくく、育児休業から復職する1歳頃~幼稚園入園の3歳までは、孤立感が続きやすくなります。

1-2.社会との関わりを感じにくいことによる疎外感

 こちらも0~3歳児の育児中に多く見られるものになりますが、社会との関わりを感じられなくなることによる疎外感があります。

 人間の欲求段階とされるマズローの欲求5段階によれば、第3段階目に「所属欲求」があります(「総務省:ICTによる人間の「拡張」の生活・働き方への影響」より)。

マズローの欲求5段階

 育児休業や退職したことにより、これまで会社に所属することで得られていた所属欲求が満たされなくなり、社会に所属している欲求が満たされにくくなります。

 前述と同様に、育児休業から復職する1歳頃~幼稚園入園の3歳頃までは、疎外感が続きやすくなります。

1-3.一人で育児に向き合っている単独感

 続いては、専業主婦(夫)やワンオペ育児をしている方が感じやすい、ひとりで育児に向き合っているという単独感です。孤独に育児やキャリアの負担を背負っている状態です。

 病院で教わったことやネット情報を基に行動するものの、それで正しいのか、自分の子どもに合っているのか、常に葛藤しながら向き合うことが多い為、ひとりで育児に向き合い続けることは、想像以上に苦しいものです。

 その大変さは、経験した方でなければ理解されにくいですし、既に経験済みの友人からは「そういうものだよ」と、誰もが経験するから仕方ない、といった諦めに近いアドバイスが飛んでくることも少なくありません。

 誰かの協力を得るか、幼稚園や小学校に入るまで解消されないことが多いかもしれません。

1-4.先行きが見えない漂流感

 意外と自分では気付きにくいですが、先行きが見えていないことで、漂流感を感じている場合もあります。

 育児経験者であれば、「○か月くらいには〇〇になって」「〇歳くらいには解消される」といったことが想像できますが、育児初心者には、そういった先行きが見通しにくいことが原因と考えられます。

 日々の成長は感じていても、短期間で劇的に成長するわけではないですし、成長には個人差がある為、「いつまで苦労が続くのか」と不安感が募り、その不安を感じているのが自分だけだと感じ、漂流感を感じることもあります。

 実際に、成長が目に見え始める頃(1~3歳頃)までは、自分の子どもの成長速度や生活の変化をイメージしにくく、解消しにくいかもしれません。

1-5.思い通りにいかない無力感

「文部科学省:子どもを取り巻く環境の変化を踏まえた今後の幼児教育の方向性」では、以下のようなことが指摘されています。

 物質的に豊かで快適な社会環境の中で育ち,合理主義や競争主義などの価値観の中で育った者が多い今の親の世代にとって,必ずしも効率的でも,楽でもなく,自らが努力してもなかなか思うようにはならないことが多い子育ては,困難な体験であり,その喜びや生きがいを感じる前に,ストレスばかりを感じてしまいがちであるとの指摘もある。

出典:「文部科学省:子どもを取り巻く環境の変化を踏まえた今後の幼児教育の方向性」

 つまり、自分の努力が実りにくい (又は効果を実感しにくい)子育てに対して、無力感を感じやすくなっていると言えます。

 子の誕生前までは、「自分でも子育ては何とかできる」と思っていた感情が打ち崩されてしまい、安全欲求(マズローの欲求5段階における2段階目)すらも、満たされなくなることも少なくありません。

 自分では色々と努力しているのにうまくいかず、配偶者もその努力を認めてくれないことで、自分自身の存在意義が分からなくなり、その無力感が孤独感に変わっている場合もあります。

2.子育て中に感じる孤独感の原因とは?

2-1.生活圏が合う友人が少ない

 前述でも少し触れましたが、生活圏や活動時間が一致している友人が少ないことが、孤独感を感じる原因かもしれません。

 就職や結婚を機に県外に引っ越した場合には、学生時代の友人や前職時代の同僚は近くに居なくなります。

 また、出産前の友人は、「出産前の自分 = 仕事をしている自分」と生活時間が一致している為、出産後の自分とは生活時間が合わないことも少なくありません。

 新たな友人を探そうにも、子どもを連れていかなければいけない為、必然的に子育てママしか繋がりにくくなります。

 田舎では、地域のコミュニティには期待できませんし、例え地域のコミュニティ等があっても、参加している子育てママの中には、異様にマウントを取りたがる(人を見下して上に立ちたがる)方がいたり、話が合わなかったりと親しい間柄にはなれないことも少なくありません。

 ただでさえ子育てで疲れているのに、人付き合いでさらに疲弊したくないと考え、新たな友人作りを避けている場合、必然的に友人関係が少なくなり、孤独感を感じやすくなっているのかもしれません。

2-2.社会活動が制限されている

 こちらも前述で少し触れましたが、出産前よりも社会活動 (会社や趣味、外食等)が制限され、家庭内だけで生活することが多くなっていることが、孤独感を感じる原因かもしれません。

 生活圏の一致している友人が少なければ、外出先も限定されますし、小さい赤ちゃんを連れていくには限界がある為、必然的に社会活動が制限され、疎外感を感じやすくなるでしょう。

2-3.承認欲求が満たされていない

 続いて、所属欲求が満たされている場合には、その上の階層である「承認欲求 (誰かに認めてほしい感情)」が満たされていないことが、孤独感に繋がっている可能性があります。

 会社活動をしていれば、自然と誰かとやり取りをする中で、自分の必要性を感じることができ、誰かから業務を依頼されたり、感謝されることで、その承認欲求は自然と満たされていることがあります。

 しかし、育児休業や退職したことにより、家庭内での生活が中心となれば、自分のことを認めてくれる人は、配偶者しかいません (赤ちゃんも居ますが、赤ちゃんは意思疎通が難しいですから…)。

 毎日のように、「ありがとう」「疲れているだろうから今日は代わるよ」等と、あなたの努力を認めて承認してくれるような配偶者は多くない為、あなたの承認欲求は徐々に満たされなくなり、「誰も私を認めてくれない」といった孤立感を感じるようになると考えられます。

2-4.具体的なゴールが見えていない

 前述にて少し触れていますが、具体的なゴールがイメージできていない、又はイメージできていても将来のことすぎる場合、「いつまで苦労が続くのか」といった不安感が募ります。

 そしてそういった不安感は、実際の苦労を感じているあなた自身が一番強く感じやすい為、周囲の不安感とあなた自身の不安感に大きな差が生まれ、「自分だけが強い不安感を抱いている」と感じてしまうことがあります。

 自分だけが出口の見えないトンネルを走っているような感覚となり、これが孤独感を感じさせる原因となっている可能性も考えられます。

2-5.経験談や悩みを共有する環境がない

 また、子育ての経験談や悩みを共有したり、相談する機会が無い (又は少ない)ことも、孤独感を感じやすくさせる原因だと考えられます。

 子育て経験は多種多様であり、夫婦の働き方や子どもの性格等によって全く異なることがほとんどです。

 その為、相談窓口が少なければ、自分の経験や悩みが相手と合わず、「他にも悩んでいる人がいる」ということを感じられず、「自分だけできていない」「自分だけ悩んでいる」といった感情に陥りやすくなります。

3.子育て中に感じる孤独感の解消法

 孤独感を感じる原因が分かれば、その解消法は既にイメージできているかもしれませんが、具体的な支援施設や解消法について、紹介します。

3-1.子育て支援施設を利用する

 まずはじめに、各市区町村が実施している子育て支援拠点事業を利用してみることをおすすめします。

 子育て支援拠点事業では、主に「子育て親子の交流の場の提供と交流の促進」「子育て等に関する相談、援助の実施」「地域の子育て関連情報の提供」「子育て及び子育て支援に関する講習等の実施」が行われています。

「厚生労働省:子育て支援拠点事業とは」

 必ずしも誰かと積極的に関わる必要はなく、気軽に足を運んでみる程度の気持ちで参加してみると良いでしょう。

 何度か参加しているうちに、施設の方とも話しやすくなるかもしれませんし、同じような境遇の子育てママと出会うこともあるかもしれません。

 支援施設を利用する際の大切な心掛けとして、「必ず誰かと仲良くなって連絡先を交換するぞ!」と張り切らないことです。まずは、孤独感を少しでも解消する為に、気軽に参加するように心掛けると良いでしょう。

3-2.地域社会と積極的に交流する

「総務省:今後の都市部におけるコミュニティのあり方に関する研究会」によれば、地域交流が希薄化していることが指摘されています。

 一昔前までは、地域の小さなお祭りや防災活動、ラジオ体操などが頻繁に実施されていましたが、現代ではそういった活動も減少しつつあります。

 そんな中でも、ボランティア活動等、調べてみれば意外と地域交流の場は残っています。

 地域交流の主な目的な、「社会への所属欲求を満たす為」ですので、子育てに関することでなくても問題ありません。

 子育て支援施設等では、他者との交流が中心になる為、人見知りや人付き合いが苦手な人にとっては抵抗感が強いかもしれませんが、ボランティアであれば、特定のボランティアをする為に集まった人たちで形成されている為、無理に交流しなくても良いところがメリットです。

 例えば、清掃活動等であれば、一緒に協力して何かをする必要は無い(個人で拾っていくだけ)ですが、成果物を誰かと共有することができる為、あまり意気込まずに、参加してみると良いでしょう。

 同じ悩みや困りごとを共有することはできないかもしれませんが、社会に貢献しているという実感が、孤独感の解消に繋がることもあるでしょう。

3-3.配偶者に素直な気持ちを伝える

「内閣府:令和元年度 仕事と生活の調和推進のための調査研究」によれば、約4~5割の夫婦が家事や育児の分担について、十分に話し合えていません。

家事育児分担について話し合いをしている夫婦の割合

 また、同調査によれば、何度も話し合いをしている夫婦の方が育児の満足度が高い結果となっています。

家事育児分担について話し合いをしている夫婦の割合

 その為、一番身近にいる夫(妻)に「育児で孤独感を感じている」と素直に伝えるだけで解消される可能性もあります。

 素直に伝えても伝わらない配偶者がいることは事実ですが、単に相手の孤独感に気付いてない配偶者がいることも事実です。

 もし、夫婦でしっかりとした話し合いをしたことがないのであれば、気持ちを伝えて話し合ってみると良いでしょう。

3-4.将来像をスケジュール化してみる

 続いては、先行きがイメージできていないことによる不安感を解消するために、子育ての流れを可視化してみると良いでしょう。

 子どもの成長や生活の変化、収支の変化などを中心に調べ、可視化するようにしましょう。

 そして、それらを基に夫婦で話し合いをすることで、不安感を共有でき、孤独感を解消することに繋がりますし、将来に向けて生活を見直すこともできる為、一石二鳥です。

3-5.経験談や悩みを収集する

 また、「自分だけできない」「自分の子どもだけできない」等、自分や子どもの無力さによる悩みがある場合は、SNS等で経験談や悩みを収集することも有効です。

 ほとんどの場合、似た境遇の方が居ますし、自分と似た境遇の人が頑張っていることを知れば、孤独感の解消に加えて、自分の自信にも繋がります。

 但し、SNS等は同族が集まりやすい傾向があり、負の連鎖が発生してしまうことも少なくない為、経験談や悩みを収集する程度とし、あまり深く関わらないように注意しましょう。

3-6.良いところだけを書き出して一人占めする

 どうしても孤独感が解消されそうにない場合、自分の気持ちを良い方向に変えてみることも有効です。

 育児に対して孤独ということは、育児に関する良いこと(赤ちゃんが可愛い、成長がリアルタイムで見える等)を独占しているということです。

 悪い部分だけを集めれば、つらい孤独感になりますが、良い部分だけを思い返すことで、幸せの独占感を味わうこともできます。

 環境を劇的に変えることは難しいですが、自分自身の気持ちは変えられる為、どうしても孤独感の解消が難しい場合には、試してみると良いかもしれません。

3-7.配偶者の育児参加を増やす

 最後に、環境を劇的に変える為に、最も簡単な解消法は、配偶者の育児参加を増やすことです。

 簡単な例で言えば、育児について話し合いの時間を持つことや、家事育児の分担をすることですが、これらは「自分から配偶者に働きかける」為、より孤独感が増幅する可能性もあります。

 そこで、強制的に育児への主体性を持ってもらう為に、育児休業や短時間勤務といった育児制度を利用してもらうことをおすすめします。

 一昔前までは、男性の育児休業は希少でしたが、政府は2025年までにその取得率を30%まで引き上げることを目標としており、決して珍しい話ではなくなってきています。

 「早く帰ってきてほしい」等と言っても、残業は会社命令である為、配偶者も逆らえませんが、所定外労働制限 (残業規制)は労働者の権利である為、そういった制度を利用していれば、会社は残業を命じることができなくなります。

 中途半端な対応では、中途半端な育児参加となってしまう為、強制的に育児参加する環境を作ってしまうことが大切です。

何もしなくても孤独感は時間が解決してくれる

 以上で、育児による孤独感とその原因、解消法については終わりです。

 もし、今回紹介した方法で解消できなかった場合でも、育児による孤独感は生涯ずっと続くものではありません。

 その孤独感も育児の一つの経験だと振り返る日がいつか来るはずです。

 本記事をご覧になっている方が、少しでも楽しい育児ライフを送れることを願っています。