【必見】自治会や地域社会との交流の必要性!面倒でも欠かせないは本当?

 近年では、多くの自治会 (町内会など)が解散されています。また、引っ越し時の隣近所への挨拶回り等も避けられるようになり、地域交流も希薄化してきています。

 その一方で、自治会の必要性を感じ、現代に合わせた仕組みに見直しながら、活性化を図っている自治会もあります。

 本記事では、自治会 (地域交流含む)の必要性や、自治会等が失われることによるデメリットについて、紹介しています。

1.自治会とは

 まずはじめに、自治会とは何か、ということについて、簡単に紹介します。

 総務省の資料によれば、自治会とは、以下の通り定義されています。

 町又は字の区域その他市町村内の一定の区域に住所を有する者の地縁に基づいて形成された団体

 区域の住民相互の連絡、環境の整備、集会施設の維持管理等、良好な地域社会の維持及び形成に資する地域的な共同活動を行っている

出典:「自治会とは(総務省)」

 少し分かりにくいですが、要するに「地域社会を維持する為に、地域住民が形成する団体」ということです。

 そもそも「地域の為に地域の人たちで運営する団体」ということを考えれば、任意加入団体とは言いながらも、その地域に住む以上は、加入した方が一般的だという考え方もあります。

 しかし、後述していますが、「地域の為に」という大前提が欠如してしまっている自治会が存在することも事実です。具体的には、非加入者に嫌がらせをする、過去を踏襲した不必要な活動をしている、といったことがあります。

 そういった背景から、「自治会は無駄、面倒くさい」というネガティブな印象を持つ人も多く見られます。

 「地域の為に」という大前提が欠如した自治会には、加入する必要がない、と判断して当然だとも考えられます。

 なお、地域ごとに、自治会の活動内容は異なっています。具体的には、以下のような活動があります。

  • 【自治会の活動内容 (一例)】
  • ・防犯情報や地域情報の相互連絡 (回覧板等)
  • ・生活区域、地域環境の整備 (ごみ集積所や用水路の清掃等)
  • ・地域行事の運営 (お祭りや集会等)
  • ・警察や消防署等と連携した防災、防犯活動 (防災訓練や見回り等)
  • ・地域交流の場を提供 (老人会や子ども会等)

 地域住民の希望に関係なく、これら全ての活動に手を出してしまったり、希望と異なる活動に注力してしまう自治会もあります。

2.自治会の解散や地域社会との交流が希薄化する原因

 続いて、前述した機能を持つ自治会が解散したり、地域社会との交流が希薄化している原因について、紹介します。

2-1.とにかく人付き合いが面倒くさい

 「自治会に参加したくない」「自治会は必要ない」と考える一番の要因は、「人付き合いの面倒くささ」だと考えられます。

 自治会は任意団体でありながら、半強制的に加入させている場合も多く、加入者の性質は多種多様となっています。

 そういった背景から、残念ながら、自分のことだけを考えて、自治会にあれやこれやと不満を連ねるような方もいます。

 周囲との関係性や合理性を考えずに、自分の意見だけを述べる人や、価値観の合わない人とは、誰でも一緒に活動したくないものです。

2-2.活動の方針や透明性が分かりにくい

 また、自治会を運営する体制によっては、自分の意見だけを主張する「声の大きい人」の意見ばかり反映される場合もあります。

 明らかに住民の総意ではない「一部の声の大きい人の利益」が優先されると、その活動の方針に疑問が生まれます。

 さらに、幅広い年代が生活する地域では、高齢者と若年者で要望が異なっている場合も多く、総意を取ることが難しくなります。

 年代に偏りのある自治会の役員が活動内容を決めた場合、活動内容にも偏りが出てしまうことがあり、活動の透明性が見えにくくなります。

 高齢化が進む現代において、少数派になりやすい若年者にとっては、自分たちの利益は少なくなりやすく、自治会の必要性を感じなくても仕方がないのかもしれません。

 ただ、そういった問題は、単に運営者の実力不足に限らず、後述する通り、自治会への参加意欲が低下している現代において、総意を取ること自体が難しくなっている、ということも要因として考えられます。

2-3.共働き世帯が増え、時間が確保できない

 共働き世帯が急増し、自治会に参加する余裕がなくなっていることも、「自治会は必要ない」とする原因として考えられます。

「明日への統計2020 (総務省統計局)」によれば、共働き世帯は全体の48%となっています。

 自治会が必要とされた時代に比べて、共働き世帯が増加し、自治会への関わり方も変わっています。

 そういった背景から、「これまで通りの働き方で、これまで通りの自治会運営を望む人」と「共働き等の働き方で、自治会運営を変えたい人」の衝突が多く見られます。

共働き世帯数の推移

2-4.プライバシー意識が高まり、情報交換しにくい

 さらに、プライバシーに関する防犯意識が高まり、「いつ留守にしている」「両親が共働きである」といった個人情報を近隣住民に知られたくない家庭が増えています。

 近年では、防犯の観点から、表札を掲げることも避けられるようになるほどです。

 ただ、近隣住民の関わりがないことで、不審者かどうか判断できない、といった地域全体での防犯機能は、低下していると考えられます。

 また、プライバシー意識の高まりから、自治会に個人情報が提供されなかったりと、自治会の運営そのものに影響を与えている場合もあります。

2-5.家族の自立性が高まり、助け合いの機会が少ない

 共働き世帯の子育て支援や、保育園の拡充によって、家族の自立性が高まっていることも原因として考えられます。

 一昔前までは、子育てをするなら、祖父母に頼ること (里帰り出産や三世代世帯)がほぼ欠かせませんでした。

 三世代での子育ては、「母親の心身を休める」「子育てのノウハウを伝承する」「ダブルチェック等によるリスク軽減」等、多くの役割を果たしていたと考えられます。

 しかし、近年では、男性の育児休業制度が拡充されたり、病院や保健所による母子健康管理が整備されてきたことで、家族だけでも子育てを担えるようになりつつあります。

 実際には、両親の急な体調不良 (インフルエンザ等)があった場合に、赤ちゃんの預け先がない、保育園に入れない、といった不十分な一面も残っていますが、その問題は政府の課題として扱われているのが現状です。

2-6.活動内容が時代に合っていない

 そういった時代の変化と共に、地域に必要な活動内容は変わってくると考えられます。

 しかし、過去の活動内容を踏襲している自治会も多く、その活動内容が見直されていないことも少なくありません。

 その要因は様々ですが、住民の要望を適切に吸い上げられていない、自治会の役員会が機能していない、といった要因が考えられます。

 住民の声を拾い上げて、予算内で振り分けながら、その透明性を説明することは、かなりの労力が必要と考えられます。

 そういった責任も業務も大変な役員ですが、ほぼ無償 (年間0~数万円)でしなければならない自治会が多く、適切な担い手が居ないことも、原因のひとつかもしれません。

2-7.都市部では"自分の町"という意識が薄い

 また、田舎と比べて、都市部では「親やその親も育った故郷」という意識が薄いことも原因として考えられます。

 そういった場合は、そもそも「自分たちで自分たちの住む地域を良くする」という概念がないかもしれません。

 また、都市部では、共働き世帯も多く、自治会に十分な時間を使える世帯は多くないと考えられます。

 働き盛りの世帯が多い都市部においては、「自分たちで何とかする」という自治会の仕組み自体が向いていないのかもしれません。

 反対に、世帯数が多く、税収面でも有利な都市部においては、その税収を活かして、行政面での拡充の方が向いているかもしれません。

2-8.自治会のネガティブな印象が広まっている

 また、SNS等において、自治会のネガティブな情報が広まっていることも原因として考えられます。

 当たり前のことですが、SNS等に記載されているほど、悪質な自治会は多くありません。

 SNS等では、ポジティブな情報はあまり伸びず、悪質な情報の方が広まりやすい傾向があります。

 そういった背景から、自治会に参加する前から、「自治会」という組織そのものに、ネガティブな印象を持っている人も少なくありません。

 自治会に対して、最初からネガティブな印象を持っている為、少しでもSNS等の悪質な情報と一致することがあれば、「やっぱり自治会はダメだ」という印象を持ちやすくなると考えられます。

3.自治会の解散や地域社会との交流が希薄化するデメリット

 続いて、自治会の解散や地域社会との交流が希薄化することによって、どういったデメリットが生まれるのか、確認していきます。

3-1.有事の際の防犯・防災活動に支障が出る

 まず、一番大きいデメリットとして良く挙げられるのは、防犯・防災活動に支障が出る、ということです。

 自治会や地域交流によって、様々な防犯・防災活動が想定されている為、それらの活動ができなくなる可能性があります。

  • 【自治会の防犯活動】
  • ・防犯パトロールによる犯罪の未然防止、早期発見
  • ・防犯カメラの設置、運用
  • ・子どもの登下校の見守り
  • ・あいさつ (声掛け)運動
  • ・警察と連携した地域に根差した啓発活動
  • 【自治会の防災活動】
  • ・「火の用心」などの意識啓発活動
  • ・災害前の住居養生補助 (雨養生等の手伝い)
  • ・地域防災計画の策定 (消防署等と連携)
  • ・災害時の避難誘導、安否確認
  • ・災害時の一時対応 (初期消火、救護活動等)
  • ・災害時の避難所運営、初期対応

 このように、自治会は多くの防犯・防災機能を担っています。大災害時には、道路の分断や通信機器の停電等によって、自衛隊や消防署等の公共機関の行動が制限されることもあり、速やかな対応は期待できません。

 また、地域の特性を理解している地域住民であれば、どの道路が分断されやすく、どのような代替手段があるか、事前に想定することができます。

 さらに、どういった場所の住民が孤立しやすいか、等も想定しやすく、年齢層等から救出の優先順位も付けやすいはずです。

 公共機関が到着してからも、速やかな誘導や状況把握に繋がり、災害対策に大きな効果をもたらすことが想像できます。

 また、公共機関が備蓄している救助用の資機材のみで、全住民を救うことはできません (全然足りません)。住民各々の備蓄を促し、さらに自治会での必要量を備えておくことで、初めて避難対応をすることができます。

 「防犯・防災は行政の役目でしょ?」という声もありますが、行政だけで細やかな対応をすることは容易ではありません。

 近年では、インターネット等を経由して、不審者情報や災害情報を得ることができる為、速やかな情報網という意味では、自治会の機能はほとんど必要なくなっているかもしれません。

 インターネットを持たない世帯等 (高齢者など)の逃げ遅れが、課題として掲げられていますが、防災無線や地域のスピーカーを通じて、そういった情報を得られるようにもなってきています。

 さらに、ドコモやソフトバンクと言った携帯キャリアで、安否確認掲示板が開設される等、地域に関係なく、安否確認ができるようにもなってきています。

 近隣住民の発見よりも、速やかかつ正確である為、利用を促している自治会もあるかもしれません。

 それでも、すぐ近くにいる近隣住民の助けが必要な状況 (急を要する助けが必要な状況)においては、そういった情報だけでは手遅れになるケースも考えられます。

 また、高齢者のように、一人での避難 (や土嚢等の養生)が困難な場合等には、自治会による補助が必要なケースも考えられます。

 自治会では、行政等に代わるほどの大きな機能は持っていなくても、大災害時に簡易に救える命を救ったり、犯罪を未然に抑制する、といった機能があります。

 消防局などの公共機関も、こういった機能を地域ごとに持つ必要性について提唱しています。自治会が解散することで、そういった機能が失われてしまうかもしれません。

3-2.有事の際に子どもの預け先が無い

 また、夫婦の体調不良 (インフルエンザ等)が発生した場合に、新生児の預け先が見つからない可能性もあります。

 近くに夫婦の両親 (祖父母)や親戚もおらず、近隣住民にも頼れないとなれば、どんなに体調不良でも、自分たち夫婦で面倒を見なければいけません。

 公共機関に頼ろうとしても、新生児の預け先は見つかりにくいものです (事前に面談が必要など)。

 自治会とは関係ないかもしれませんが、地域交流が希薄化していることで、近隣に信頼できる住民が居なくなってしまうかもしれません。

3-3.子どもの多様な体験や成長の機会が減る

 さらに、子どもの多様な体験や成長の機会が減ることも考えられます。

 地域活動では、様々な催し物や交流を通じて、多種多様な体験をすることができます。

 普段会わない高齢者や他業種の人たちと直接関わったり、その関わりの中で、いつもと違う両親の姿を見たり、日々の生活では体験しにくいことも多くあります。

 大人が活躍する世界の裏側 (お祭りの裏方など)に触れることで、子どもなりに感じることもあるはずです。

 文部科学省は、「家庭」「地域」「教育機関」ごとに異なった学びがあることに触れており、家庭や地域の学びが減っていることを危惧しています。

 地域交流が希薄化することで、そういった体験や成長の機会が失われてしまうかもしれません。

3-4.地域毎の特色・特徴に配慮した体制が失われる

 また、地域ごとの特色・特徴に配慮した体制が失われてしまう可能性もあります。

 少子高齢化の進む地域では、「子どもを地域全体で守る」「高齢者同士の繋がりを作る」といった機能が求められると考えられます。

 反対に、働き盛りの年代が多い地域では、「親不在時の子どもの見守り体制を拡充する」「自治会の活動は有事の最小限にする」といったことが求められると考えられます。

 自治会では、行政機関だけでは補いきれない細やかな機能について、地域の特色に応じた対応を取ることができます。

 また、地域の弱点を補うだけでなく、地域の特色を生かした強みの強化を図ることもできます。

 自治会の解散が進むことで、こういった地域の特色に応じた体制が失われてしまうかもしれません。

3-5.公共機関・行政の負担が増大する

 前述までの機能が失われてしまうことで、公共機関・行政の負担が増大していくことが想定されます。

 また、公共機関だけで、地域に根差した細やかな対応をすることは難しく、現実的ではないと考えられます。

 本来であれば、地域ごとに必要な部分のみに焦点をあてれば良いですが、行政が介入することになれば、ある程度、網羅的に対応せざるを得なくなる部分もあると考えられます (地域の特色を把握することが難しい為)。

 行政の負担は、国民の税負担でもある為、自治会費以上の過剰な税負担が必要になってくるかもしれません。

4.自治会や地域社会との交流を避ける場合の対処法

 自治会が解散することで、多くのデメリットが生まれることは明らかですが、社会構造や意識の変化によって、自治会を維持しにくくなっていることも事実です。

 そこで、続いて、自治会の解散や地域交流の希薄化が進む中でも、自分たちにできる対策について、紹介します。

4-1.災害時の備えと緊急連絡網を準備する

 自治会に期待できない分、自分たちで災害の備えと避難計画を立てることが必要になります。

 具体的には、以下の準備を進めておくとよいと考えられます。

  • 【災害時の備えと避難計画】
  • ・災害の可能性を知る (ハザードマップなどを参照)
  • ・災害を未然に防ぐ (可能性に応じた対策を取る)
  • ・災害の備えをする (避難計画を立てて共有する)
  • ・避難の備えをする (避難中の資機材を備蓄する)
  • ・災害避難を訓練する (ライフラインが停止した想定で訓練する)

 準備した計画を一度実行してみることで、自分たちの家族に合った計画になっているか、見直すことができます。

 特に、自分たちの家族に合った備蓄 (哺乳瓶やオムツ、体温維持の為の毛布など)は見落としがちである為、注意が必要です。

4-2.子どもの預け先や交流場所を確保する

 緊急時になる前に、公共機関等の預かり先を確認しておきましょう。実際に、一度電話などをしてみて、万が一の際の預かり可否を確認しておくと良いでしょう。

 新生児などで預かりが難しそうな場合は、両親 (祖父母)や頼れる友人の近くに住むことも、検討しなければいけないかもしれません。

4-3.自治会に頼らない自助を強化する

 自治会の持つ様々な機能が失われても、困らないような生活設計をしていかなければいけません。

 現時点で困っていなくても、「子どもが生まれた」「高齢で足腰が悪くなった」「避難が困難な病気になった」といった場合でも、困らないように備えておく必要があります。

 現時点では、「自治会に所属していないだけで、必要なら自治会に加入できる」という状態だとしても、多くの人がそう考える様になれば、自治会の機能は維持できなくなります。

 自治会を維持していくつもりがないのであれば、「有事の際でも自分たちだけで何とかする」という、強い覚悟を持たなければいけないかもしれません。

4-4.近場の親戚周りの関係を強化する

 近年では、親戚周りの関係性も希薄化していると考えられます。

 親族との繋がりは、自治会を小規模にしたようなものでもあり、同じようなメリット・デメリットがあります。

 自治会や地域交流を避ける人は、親族との繋がりまで避けてしまう傾向があるかもしれませんが、そうなってしまうと、自分たち家族と公共機関しか頼れるものが無くなります。

 有事の際のリスク軽減を考慮して、少し面倒でも近場の親戚周りとの関係は、維持するように心掛けた方が良いかもしれません。

 少し面倒で頼りない親族だったとしても、有事の際には意外と協力してくれることもあるはずです。

5.自治会や地域交流は有事の際に役に立つ!

 これまで紹介してきた通り、自治会や地域交流は、有事の際に本領を発揮すると考えられます。

 例えば、普段の生活の中で、そのライフライン (電気、水道、道路など)を当たり前に利用できるありがたみを感じることは多くありません。

 それはもはや"当たり前"になっており、特別な位置づけではなくなっている為だと考えられます。

 「普段の生活の中で、自治会の必要性は感じない」という方は、そういった視点で、改めて必要性を考え直さなければいけないのかもしれません。

 必要性を考え直す中で、自治会が本来の必要な機能を有していないと考えられる場合は、自分たちの為にも、自治会に対して提言してもいいでしょう。

 また、待機児童や新生児の預かり先がないことは、「全て行政のせい」というように勘違いしている方もいますが、本来はひとりひとりの責任でもあります。

 有事の際のリスクや、家族以外の協力が必要な場面を想定せずに、核家族化や共働きが一方的に進められてきたことも、ひとつの原因だと考えられます。

 私たちは、自分たちの現在 (日常)だけに焦点をあてて、自治会の必要性を判断してしまうことも少なくありません。

 その焦点を有事の際や子育て期など、未来 (非日常)に広げて、周囲との繋がり方を考えていくことが必要なのかもしれません。

 最後になりますが、そもそも自治会は、「地域の為に地域住民で取り組む」ものです。地域全体での取り組みが必要な災害対策等、最低限必要なことだけでも、維持していくことが必要ではないでしょうか。