【育児基盤】育児や子育てに関する基礎知識!悩みや各政策まで!
本記事には、育児や子育てに関するあらゆる情報を集約しています。
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1.育児(子育て)とは
1-1.広義的・狭義的な育児(子育て)の定義
一般的には、「育児 = "乳幼児まで"の世話、養育をすること」、「子育て = "乳幼児から青年期まで"の世話、養育をすること」のように、対象とする子どもの年齢によって、言葉が使い分けられています。
また、育児や子育てといえば、子どもと直接かかわる行動 (授乳、食事、遊び等)を想像する場合も多いですが、子どもと直接かかわらない行動 (予防接種、教育、養育費の準備等)も含まれているものと考えられます。
参考までに、"育児"の定義について、wikipedia、世界大百科事典、日本大百科全書(ニッポニカ)に記載されている内容を紹介します。
育児(いくじ、英語: child care)とは、乳幼児の世話、養育をすることである[1][2]。乳幼児とは乳児と幼児を指し、小学校に入学する前の子供の総称である[3]。
出典:「wikipedia:育児」
生まれてきた子どもを,心身ともに社会生活が可能な年齢になるまでの間,養育する過程を育児という。狭義の育児は,出生後学齢までの乳幼児について語られることが多いが,最近では,妊娠中の母性の心身の健康状態が胎児に及ぼす影響が大きいことから,妊娠中の母体の健康維持や,健全な精神生活も育児の一部分と考えられるようになり,さらに,優生学的な見地から,妊娠前の両親の健康も考慮条件に含まれるようになった。
出典:「コトバンク:世界大百科事典」
子どもの世話、養育をすること。「子ども」はとくに乳幼児をさすことが多いものの、出生前の胎児や小学生・中学生などに広くとらえられることもある。また、育児は「子育て」と同じような意味で用いられている。しかし、近世に用いられた「子育て」が近代化の過程で「育児」にとってかわり、その後、1970年代なかば以降に「子育て」にとってかわられ、他方の「育児」は「育児不安」や「育児ストレス」など否定的な色合いを帯びて使われるようになってきたという指摘もある。
出典:「コトバンク:世界大百科事典」
日本国内においては「育児 = "乳幼児まで"の世話、養育をすること」として捉えられることが多いものの、妊娠中や青年期まで拡大して含められる場合もあるようです。
また、産後初期にうつやノイローゼを伴うことが比較的に多いことから、"育児"には育児うつや育児ノイローゼといった否定的な意味合いを持つようになっているとの指摘もあります。
対して、広義的な"子育て"の定義について、wikipediaには、以下のように記載されています。
子育て(こそだて)とは、子を育てることである[1]。子育ては乳児期から青年期の子を対象とする。これに対して、「育児」という場合、(基本的には)主として乳幼児を育てることを意味しており[3]、子供が赤ちゃんから幼児期ころまでの子育てを指す。ただし、近年、子供全般が社会的に独り立ちする年齢が遅くなる傾向があるので、従来「育児」と呼ばれていた行為の対象年齢を、中学・高校の年齢まで引き上げて考える必要もでてくるようになった[4]。
出典:「wikipedia:子育て」
つまり、日本国内においては一般的に「子育て = "乳幼児から青年期まで"の世話、養育をすること」として捉えられることが多いものの、その範囲は明確には定義されていない、と言えそうです。
2.日本の育児(子育て)を取り巻く環境
2-1.社会全体の育児(子育て)環境
社会全体から見る育児(子育て)環境は、時代と共に変化しています。
まず、育児(子育て)の歴史として、「日本大百科全書」には、以下のようなことが記載されています。
育児の方法や、子どもに対する親、地域、社会の人々の意識は時代によって変化してきた。子どもが小さな家族のなかで、両親とくに母親の丁寧な養育のもとに育てられるという現代の子育てのイメージは普遍的なものではない。歴史的には大きな「家」という経営体のなかで、非労働力である祖父母や、奉公人など他者に育てさせることも多かった。
出典:「コトバンク:日本大百科全書」
さらに、高度経済成長期における育児(子育て)についても、以下のようなことが記載されています。
第二次世界大戦後の急速な復興と経済発展を可能にしたのは、技術革新による産業構造の変化と、いわゆる「日本的経営」の形成である。戦後大企業体制下の産業化は、生産労働を担う夫と、その労働力を再生産し、家庭責任を一身に担う妻という性別役割分業家族を基盤とするものであった。
出典:「コトバンク:日本大百科全書」
そして、現代の育児(子育て)の基礎となる男女共同参画社会の制定について、以下のようなことが記載されています。
1985年(昭和60)の「女性差別撤廃条約」の批准を契機として、1986年に「男女雇用機会均等法」が施行され、1991年(平成3)には「育児休業法」が制定(1992年に施行)されるなど、1980年代後半から1990年代には「男女共同参画社会」への潮流が生まれた。そして母親同士や父親もともに子育てにかかわる共同育児への関心が高まりつつあった。
出典:「コトバンク:日本大百科全書」
つまり、時代と共に育児(子育て)を担う主体者が、「地域」→「女性」→「家族や社会」と変化してきていることが分かります。
なお、現代の育児(子育て)環境の基礎となる「男女共同参画社会」については、「男女共同参画社会基本法第2条」にて、以下の通り定められています。
男女共同参画社会とは、「男女が、社会の対等な構成員として、自らの意思によって社会のあらゆる分野における活動に参画する機会が確保され、もって男女が均等に政治的、経済的、社会的及び文化的利益を享受することができ、かつ、共に責任を担うべき社会」です。(男女共同参画社会基本法第2条)
出典:「男女共同参画局:男女共同参画社会とは」
現代では、男女共に育児(子育て)に対する役割や責任を有していることが、法律によって明確に定められていることが分かります。
また、日本国内においては、少子化が急速に進行することで、育児(子育て)を経験する夫婦や地域社会が減少しています。
「内閣府:少子化社会対策白書(令和元年度)」によると、0~14歳の人口割合は、1950年代「35.4%」、1980年代「23.5%」、2018年「12.2%」まで低下しています。
但し、人口割合は長寿命化(高齢化)も関係している為、単純な少子化進行を表しているとは言えません (高齢者が増えれば、相対的に0-14歳の人口割合が下がる)。
そこで、一般的に出産が可能とされる15~49歳までに出産される、子どもの平均数を表した合計特殊出生率、という指標が少子化の評価に使用されます。
その合計特殊出生率を見ると、1949年「4.32人 (過去最高)」、1973年「2.14人」、2005年「1.26人 (過去最低)」、2018年「1.43人 (微増)」と、過去最低値から若干回復傾向にあるものの、過去最高値と比較すると、半分以下になっています。
少子化の原因や少子化が招く社会的な影響については、多種多様な意見がある為、本記事では触れませんが、日本国内においては、育児(子育て)を経験する夫婦が減り続けている状況であることは、間違いありません。
なお、日本政府としては、この少子化(出生率の低さ)に対して、政治的な介入をする(回復させる)というスタンスを取っており、様々な政策(後述)により、少子化対策を講じています(「内閣府:平成17年度 少子化社会対策白書」)。
2-2.地域内の育児(子育て)環境
また、地域内の育児(子育て)環境も、時代と共に大きく変化しています。
従来の地域内の育児(子育て)は、前述した社会全体の育児(子育て)にもある通り、頻繁に自治会(町内会等)や近隣住民、祖父母といった両親以外の人間にて行われることがありました。
しかしながら、「厚生労働省:令和元年度国民生活基礎調査」によると、児童のいる世帯における核家族世帯(夫婦とその子のみの世帯)の割合は、1986年「69.6%」から、2019年「82.5%」まで増加し、同様に三世代世帯においては、1986年「27.0%」から、2019年「13.3%」まで減少しており、祖父母による育児(子育て)機会が減少していることが分かります。
さらに、「総務省:今後の都市部におけるコミュニティのあり方に関する研究会報告書」によると、近所付き合いの程度について、「ほとんどつきあいがない」と「まったくつきあいがない」と回答した人の割合は「85.3%」となっており、地域交流の希薄化により、地域社会における育児(子育て)機会も減少していることが分かります。
また、同報告書内では、地域活動として、自治会や町内会に参加していないとする割合が「62.2%」、子ども会やPTAといった活動に参加していないとする割合が「75.5%」となっています。
さらに、地域活動の「子育てを支える活動」については、「79.0%」もの人が「参加していない」と回答しています。
本調査では、「そもそも地域活動について知らない」という人も含まれている為、一概に地域活動を拒否しているわけではありませんが、"地域全体・近隣住民で育児(子育て)を支える"という姿は、時代と共に失われつつあると考えられます。
地域社会における育児(子育て)機会が減少したことにより、子育て世帯や子育て親の孤立化が進んでいるという指摘もあります。
そういった背景から、厚生労働省は「地域子育て支援拠点事業」という名の下に、常設の地域の子育て拠点を設け、地域の子育て支援機能の充実を図る取り組みを実施しています。
- 【地域子育て支援拠点事業の概要】
- ○主な機能:常設の地域の子育て拠点を設け、地域の子育て支援機能の充実を図る
- ○実施主体:市町村 (地方自治体)
- ○基本事業1:子育て親子の交流の場の提供と交流の促進
- ○基本事業2:子育て等に関する相談・援助の実施
- ○基本事業3:地域の子育て関連情報の提供
- ○基本事業4:子育て及び子育て支援に関する講習等の実施
- 参考:「厚生労働省:地域子育て支援拠点事業」
地域の近隣住民や自治会の育児(子育て)を支える機能が低下し、子育て親の孤立化が進むと同時に、子ども自身が地域活動における多様な経験をする機会が減っていると言えそうです。
2-3.家庭内の育児(子育て)環境
続いては、家庭内の育児(子育て)環境についても、社会(地域)の変化に伴い、大きく変化しています。
「総務省統計局:平成28年度社会生活基本調査」によると、6歳未満の子どもを持つ夫婦の1日あたりの家事育児時間 (週平均時間)は、「女性:454分/日」「男性:83分/日」となっています。
それに対して、政府は2020年(令和元年)までに、「男性:150分/日」まで引き上げることを、数値目標としています(数値目標は、「内閣府男女共同参画局:令和2年度第4次男女共同参画基本計画における成果目標の動向」より)。
また、同調査結果によると、専業主婦(夫のみ有業)世帯における男性の同時間が「75分/日」であるのに対して、共働き世帯では「84分/日」となっており、女性の働き方によらず、男性の家事育児時間が短い結果となっています。
但し、現代の女性は、短時間勤務やパート勤務が多いことから、仕事と家事育児の合計時間は、男女共に約540分/日であり、大きな差はない結果となっています。
男性の家事育児時間が短い要因として、子育て男性の長時間労働といった、労働環境が改善されていないことが原因として指摘されています。
こういった背景から、家事育児の負担が極端に女性に偏っており、男女共同参画社会基本法に掲げられている社会像が実現されているとは言えない状況となっています。
さらに、「内閣府男女共同参画局:令和2年度男女共同参画白書」によると、日常の家事のマネジメントや家庭生活を滞りなく送る為の管理についても、主に女性が担っている場合が多い状況となっています。
また、「内閣府男女共同参画局:令和2年度男女共同参画白書」によると、 「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」という考え方に対して、「賛成」又は「どちらかといえば賛成」と回答した割合は、1986年「女性:70.1%」「男性:75.6%」に対して、2019年「女性:31.1%」「男性:39.4%」となっており、性別による役割分担意識は、時代と共に変化している結果となっています。
ネット上では、「男性のせいだ」「男性が政治主導である為だ」と男性の責任とする声が聞かれますが、統計上は、「男女ともに、ほぼ同じ意識である」ということが分かります。
いずれにしても、性別による役割分担に関する意識は変わっていますが、実際の役割分担はほとんど変化しておらず、女性主導の育児(子育て)となっていることが分かります。
3.日本の育児(子育て)に関する法律・施策
3-1.育児(子育て)における経済的支援
育児(子育て)に関する経済的支援は、主に養育(日常生活、医療等)に関する支援と、教育に関する支援に分けられます。
なお、本サイトで紹介しているものは、育児(子育て)世帯に直接関わる一般的な支援策に限定しており、各市町村や慈善事業、間接的な支援等による支援策は含まれていないことにご留意願います。
- 【養育に関する主な経済的支援】
- ○妊婦健康診査の公費負担
- ○出産手当金
- ○出産育児一時金、家族出産育児一時金
- ○高額療養費制度
- ○育児休業給付制度
- ○児童手当制度
- ○乳幼児医療費助成制度
- 【妊婦健康診査の公費負担の概要】
- ○概要:妊婦健康診査に掛かる費用の一部又は全額を公費にて負担する制度
- ○内容:市区町村毎に回数や方式は異なるが、全ての市区町村で実施されている(平成30年4月時点)。妊婦健康診査の検査項目が示された受診券が交付される「受診券方式」、又は補助額が記載された受診券が交付される「補助券方式」がある。
- ○その他:妊産婦歯科検診を補助する自治体もある
- 参考:「厚生労働省:妊婦健康診査の公費負担」
- 【出産手当金の概要】
- ○概要:被保険者が出産のため会社を休み、その間に給与の支払いを受けなかった場合に、全国健康保険協会から一定の手当金が支給される
- ○期間:出産の日(実際の出産が予定日後のときは出産予定日)以前42日(多胎妊娠の場合98日)から出産の翌日以後56日目までの範囲内で、会社を休んだ期間を対象として出産手当金が支給される
- ○支給額:1日単位で算出「1日あたり支給額:(支給開始日の以前12ヶ月間の各標準報酬月額を平均した額)÷30日×(2/3)」
- ○その他:所得税・住民税は非課税
- 参考:「全国健康保険協会ホームページ」
- 【出産育児一時金・家族出産育児一時金の概要】
- ○概要:健康保険の被保険者(本人)が出産したとき、出産・育児の費用として全国健康保険協会から出産育児一時金が支給される
- ○支給額:出産・育児の費用として1児につき、404,000円(産科医療補償制度加入医療機関での出産は420,000円)が支給される
- ○その他1:被保険者の家族(被扶養者)が、出産した場合も家族出産育児一時金として同額が支給される
- ○その他2:所得税・住民税は非課税
- 参考:「全国健康保険協会ホームページ」
- 【高額療養費制度の概要】
- ○概要:医療機関や薬局の窓口で支払う医療費が1か月(歴月:1日から末日まで)で上限額を超えた場合、その超えた額を支給する制度
- ○その他1:自然分娩等の正常分娩は保険適用外である為、利用できず、帝王切開等、医療行為を必要とする異常分娩が対象となる。
- ○その他2:医療費の上限額は、年齢や年収によって異なる
- 参考:「厚生労働省:高額療養費制度について」
- 【育児休業給付制度の概要】
- ○概要:雇用保険加入者の育児休業期間中に雇用保険から支給される給付金
- ○対象:原則1歳又は1歳2か月に満たない子を養育する為に休業した被保険者 (特定の条件を満たす場合は、最長2年)
- ○支給額:休業開始時賃金日額×支給日数の67%(育児休業の開始から6か月経過後は50%)相当額
- ○その他:社会保険料、雇用保険料は負担なし、所得税、住民税は非課税 (但し住民税は前年度の収入に基づく為、休業中は徴収される)
- 参考:「厚生労働省:ハローワークホームページ」
- 【児童手当制度の概要】
- ○概要:中学校卒業まで(15歳の誕生日後の最初の3月31日まで)の児童を養育している方へ一定額が給付される制度
- ○その他:所得制限あり。所得が別途定められた所得制限限度額以上の場合は、特例給付として月額一律5,000円が給付される
- 参考:「内閣府:児童手当制度のご案内」
- 【乳幼児医療費助成制度の概要】
- ○概要:各市区町村が実施する乳幼児等に係る医療費の援助制度
- ○その他1:全ての都道府県及び市区町村が乳幼児等に係る医療費の援助を実施している
- ○その他2:所得制限や自己負担の有無は各都道府県・市区町村により異なる (自己負担の無い市区町村あり)
- 参考:令和元年度「乳幼児等に係る医療費の援助についての調査」(厚生労働省)
なお、乳幼児等の医療費の無償化は、不必要又は過剰な受診等を促進してしまうことで、社会保障費を圧迫するといった指摘もあり、一概に「無償化=良いこと」とは言えないことに注意ください。
- 【教育に関する主な経済的支援】
- ○幼児教育、保育の無償化
- ○高等教育の修学支援新制度
- ○奨学金制度の充実
- 【幼児教育・保育の無償化の概要】
- ○概要:幼稚園、保育所、認定こども園などを利用する3歳から5歳児クラスの子供たち、 住民税非課税世帯の0歳から2歳児クラスまでの子供たちの利用料が無料
- ○対象:幼稚園、保育所、認定こども園、地域型保育、企業主導型保育事業、幼稚園の預かり保育、認可外保育施設、障害児の発達支援
- ○その他:対象施設や年齢等により無償範囲は異なるが、3~5歳児の無償化に所得制限はない
- 参考:「内閣府:幼児教育・保育無償化ホームページ」
- 【高等教育の修学支援新制度の概要】
- ○概要:意欲ある子供たちの進学を支援するため、授業料・入学金の免除または減額と、返還を要しない給付型奨学金の大幅拡充する制度
- ○対象教育:大学、短期大学、高等専門学校、専門学校
- ○対象者要件:成績のみではなく、学習意欲も考慮されるが、進学後の学修状況は厳しく評価される
- ○対象大学:「文部科学省:高等教育の修学支援新制度の対象機関(確認大学等)」を参照
- 参考:「文部科学省:高等教育の修学支援新制度」
- 【奨学金制度の概要】
- ○概要:経済的理由で修学が困難な優れた学生に学資の貸与を行い、また、経済・社会情勢等を踏まえ、学生等が安心して学べるよう、「貸与」または「給付」する制度
- 参考:「日本学生支援機構:奨学金」
なお、「厚生労働省:令和元年度国民生活基礎調査」によると、児童のいる世帯の平均所得金額は「745.9万円」、高齢者世帯以外の世帯は「659.3万円」であり、児童のいる世帯は、その他世帯よりも平均所得金額 (公的年金等を含む)は高くなっていますが、経済的に「苦しい (大変苦しい、やや苦しい)」と感じている割合は、児童のいる世帯の方が多くなっています。
3-2.育児(子育て)における雇用就業支援
育児(子育て)における雇用就業支援は、主に「仕事と生活の調和」(内閣府)や「仕事と家庭の両立」(厚生労働省)と表現されています。
- 【育児(子育て)に関する雇用就業支援】
- ○仕事と家庭の両立支援制度 (育児・介護休業法)
- ○女性労働者の母性健康管理措置
- ○次世代育成支援対策推進法
- ○イクメンプロジェクト
- ○放課後児童健全育成事業
- 【仕事と家庭の両立支援制度 (育児・介護休業法)の概要】
- ○概要:労働者の子の養育を理由とする休暇、休業、労働制限 (短時間勤務等)制度を法律で定めると共に、 それら制度利用によるハラスメント、不利益な取扱いの防止、就業規則の整備等、労働者の育児が包括的に支援されている
- ○その他:子の養育に関わる柔軟な働き方 (フレックスタイム等)、当該制度を反映した就業規則等を周知する努力義務が企業に課されている
- 参考1:「厚生労働省:育児・介護休業法のあらまし」
- 参考2:「厚生労働省:仕事と家庭の両立支援制度」
- 【女性労働者の母性健康管理措置の概要】
- ○概要:女性労働者が妊娠中又は出産後も安心して働き続けるために、業務負荷を調整したり、労働環境を整備する措置
- ○法律:男女雇用機会均等法、労働基準法
- ○主な内容:保健指導又は健康診査を受ける時間確保、不利益取扱いの禁止、産前・産後休業、軽易業務転換等
- 参考1:「厚生労働省:働く女性の母性健康管理措置」
- 参考2:「厚生労働省:女性に優しい職場づくりナビ」
- 【次世代育成支援対策推進法の概要】
- ○趣旨:次代の社会を担う子どもが健やかに生まれ、かつ、育成される環境の整備を図るため、国、地方公共団体、企業、国民が担う責務を明らかにする
- ○概要:国及び地方公共団体の機関、企業は、主務大臣が定める行動計画策定指針に即して「一般(特定)事業主行動計画」を策定する (100人以下の企業は努力義務)
- ○主な内容1:一般事業主行動計画には、従業員の仕事と家庭の両立等について、目標及びその為の措置の行動計画を策定する
- ○主な内容2:特定事業主行動計画には、地域における子育て支援、親子の健康の確保、教育環境の整備、子育て家庭に適した居住環境の確保、仕事と家庭の両立等について、目標及びその為の措置の行動計画を策定する
- ○その他:平成17年4月1日から10年間の時限立法(但し、平成27年4月1日に改正された法律が施行され、令和7年3月31日まで10年間延長されている)
- 参考1:「厚生労働省:次世代育成支援対策推進法の概要」
- 参考2:「厚生労働省:次世代育成支援対策推進法関係パンフレット」
- 【イクメンプロジェクトの概要】
- ○趣旨:社会全体で、男性がもっと積極的に育児に関わることができる一大ムーブメントを巻き起こす為に発足されたプロジェクト
- ○主な内容:男性の育児・育児休業に関する制度、体験談、よくある質問といった労働者側向けの情報、及び労働者の育児参加を推進する管理者や企業向けの情報が包括されている
- 参考:「厚生労働省:イクメンプロジェクト」
- 【放課後児童健全育成事業の概要】
- ○概要:児童福祉法に基づき、保護者が労働等により昼間家庭にいない小学校に就学している児童に対し、授業の終了後等に小学校の余裕教室や児童館等を利用して適切な遊び及び生活の場を与えて、その健全な育成を図るもの
- ○運営主体:市町村、社会福祉法人、保護者会、運営委員会、その他の者
- ○実施場所:学校の余裕教室、学校敷地内専用施設、児童館など
- 参考:「厚生労働省:放課後児童健全育成事業について」
3-3.育児(子育て)における母(父)子支援
育児(子育て)に関する母(父)子支援は、主に妊娠中の健康管理と出産後の母子健康管理、指導等があります。
- 【育児(子育て)に関する母(父)子支援】
- ○親子手帳 (母子健康手帳)
- ○乳児家庭全戸訪問事業
- ○養育支援訪問事業
- ○児童相談所
- ○ひとり親関連支援
- ○社会的養護 (児童養護施設等)
- 【親子手帳 (母子健康手帳)の概要】
- ○概要:母子保健法に基づき、妊産婦、乳児及び幼児に対する健康診査及び保健指導の記録を行う為の手帳
- ○その他1:当事者が健康記録を所持・記載することで、妊産婦・乳幼児を必要な保健医療支援等に結び付けるとともに、当事者自身による妊産婦・乳幼児の健康管理を促す重要な手段とされる
- ○その他2:予防接種記録等、重要な個人情報が記載されており、汚損、紛失等に厳重な注意が必要である
- 参考:「厚生労働省:母子健康手帳」
- 【乳児家庭全戸訪問事業の概要】
- ○概要:生後4か月までの乳児のいる全ての家庭を訪問し、子育て支援に関する相談、情報提供等を行うとともに、親子の心身の状況や養育環境等の把握や助言を行い、支援が必要な家庭に対しては適切なサービス提供に繋げる事業
- ○実施主体:市区町村
- ○訪問者:愛育班員、母子保健推進員、児童委員、子育て経験者等が幅広く登用される
- 参考:「厚生労働省:乳児家庭全戸訪問事業について」
- 【養育支援訪問事業の概要】
- ○概要:育児ストレス、産後うつ病等の様々な原因によって、子育てに対して不安や孤立感等を抱える家庭に対して、子育て経験者等による育児・家事の援助又は保健師等による具体的な養育に関する指導助言等を訪問により実施する
- ○実施主体:市区町村
- 参考:「厚生労働省:養育支援訪問事業について」
- 【児童相談所の概要】
- ○概要:児童(満18歳に満たない者)及びその家庭に関する問題についての相談、児童及びその保護者の指導などを行う施設
- ○その他1:児童福祉法に基づき、各都道府県・指定都市に必ず1つ以上設置されている
- ○その他2:児童保護のみを目的とするイメージが強いが、保護者側の相談も受け付けている
- 参考:「厚生労働省:児童虐待防止対策」
- 【ひとり親関連支援の概要】
- ○概要:子育て・生活支援策、就業支援策、養育費の確保策、経済的支援策の総合的支援が行われている
- 参考:「厚生労働省:母子家庭等関係」
- 【社会的養護の概要】
- ○概要:保護者のない児童や、保護者に監護させることが適当でない児童を、公的責任で社会的に養育し、保護するとともに、養育に大きな困難を抱える家庭への支援が行われる
- ○施設:児童養護施設、乳児院、児童心理治療施設、児童自立支援施設、母子生活支援施設、自立援助ホーム、児童家庭支援センター、その他里親委託等
- 参考:「厚生労働省:社会的養護」
4.国際的に見た日本の育児(子育て)環境
4-1.社会全体の育児(子育て)環境の国際比較
育児に向き合う主体者に対する国民の意識は、国によって差があります。
直接的な統計データではありませんが、「夫は外で働き,妻は家庭を守るべき」という考え方に対する賛否についての調査結果によると、諸外国と比較して「賛成」が多くなっています (「内閣府男女共同参画局:平成19年度 男女共同参画白書」より)。
育児(子育て)を経験する機会について、少子化の推移を指標として見れば、多くの諸外国で少子化傾向(子育てを経験する機会の減少)が見られます。
教育水準に関しては、OECD(経済協力開発機構)の生徒の学習到達度調査(PISA)を指標とすれば、国際的に平均以上からトップクラスに位置付けられています(「国立教育政策研究所:PSIA2018」より)。
但し、本調査は、主に「読解力」「科学的リテラシー」「数学的リテラシー」を測るものであり、広義的な教育水準ではないことをご留意ください。
なお、諸外国の教育指標等については、各国毎に違いがみられる為、「文部科学省:令和2年度 諸外国の教育統計」を参照されたい。
続いて、家族関係社会支出 (主に家族を支援する為に支出される現金給付など)の対GDP比を見ると、諸外国 (アメリカ除く)の半分以下となっています。
なお、諸外国と比較して家庭を支援する支出は少なくなっていますが、各種制度そのものが大きく劣っているというよりは、育児休業取得率など、各種制度の利用率が影響している可能性が高いと考えられます (当該支出には、育児休業給付金などが含まれており、その利用率の高いスウェーデン等と比較すると、必然的に少なくなってしまうことが考えられます)。
つまり、単純にGDP比との比較により、「日本は家族支援にお金をかけない政策をしている」と勘違いしないように注意が必要です。
4-2.家庭内の育児(子育て)環境の国際比較
諸外国と比較して、日本の育児主体者は、女性に大きく偏っています。6歳未満の子を養育する男女の家事育児を見ると、諸外国の男性の家事育児時間が「2時間以上」であるのに対して、日本の男性の同時間は「1時間23分」と、極端に少なくなっています(「内閣府:平成30年度 少子化対策社会白書」より)。
なお、平成7年の非常に古い統計データですが、諸外国と比較して、子育てに対する肯定的な感情 (子育てにやりがいや楽しみを感じる)を持つ割合が低くなっています (「内閣府:子どもと家族に関わる国際比較調査の概要」より)。
また、同統計データによると、諸外国と比較して、子どものことについて、夫婦で話し合う機会も少ない結果となっています。
国際比較から話はそれますが、話し合いを重ねた夫婦の方が、子育てに対して肯定的な感情を持っている割合が、約10%高いというデータがあります (「内閣府:令和元年度 仕事と生活の調和推進のための調査研究」より)。日本では、夫婦間の話し合いが少ないことによって、子育てに肯定的な感情を持つ人の割合が少なくなっているのかもしれません。
5.日本の育児(子育て)に関する課題・対策
5-1.社会全体の育児(子育て)の課題と対策
社会全体の育児(子育て)の課題は、大きく分類すると「少子化問題」と「世帯構造の変化に伴う社会的支援の不足」の二つに分けられます。
さらに、「少子化問題」は、以下の課題に分類することができます。
- 【少子化問題の課題】
- ・女性偏重の育児負担の是正 (男性の育児参画を推進)
- ・男性偏重の稼得負担の是正 (女性の社会進出の推進)
- ・晩婚化、未婚化の是正 (結婚や出会いの推進)
- ・妊娠、出産、養育に伴う経済的負担の緩和
また、男性の育児参画状況を、男性の育児休業取得率から見ると、その取得率は「7.48%」と非常に低くなっています (「厚生労働省:令和元年度 雇用均等基本調査」より)。
現在の日本では、男性の育児参画が進まなければ、女性の社会進出がしにくく、女性の稼得能力が上がらなければ、男性の育児参画を進めにくい、という負の連鎖に陥っている、と捉えることができます。
なお、男性の育児参画が進まない (育児休業取得率が上がらない)主な要因として、「会社やキャリアへの影響懸念」が指摘されています。
実態調査において、育児のために何らかの休暇・休業を"利用しなかった"理由について、約6割が「会社やキャリアへの影響を懸念した」となっており、最も高い割合を占めています (「厚生労働省:平成30年度 仕事と育児の両立に関する実態把握のための調査研究事業」より)。
また、女性の社会進出が進まない (継続就業率が上がらない)主な要因として、「仕事と育児の両立の難しさ」が考えられます。
末子妊娠発覚時に退職した理由について、約6割が「仕事と育児の両立の難しさ」(ハラスメント等を含む)と回答しており、最も高い割合を占めています (「厚生労働省:平成30年度 仕事と育児の両立に関する実態把握のための調査研究事業」より)。
続いて、晩婚化及び未婚化の進行も深刻な状況となっています。
生涯未婚率ともいわれる50歳時の未婚割合の推移 (女性)を見ると、1990年「4.3%」に対して、2015年「14.1%」まで上昇しており、今後も未婚率は上がる見込みとなっています (「内閣府:令和2年度 少子化対策社会白書」より)。
5-2.就業環境の育児(子育て)の課題と対策
就業環境の育児(子育て)の課題は、大きく分類すると「企業体制」と「個人の意識」の二つに分けられます。
- 【企業体制の課題】
- ・育児制度の認知度向上
- ・育児制度利用によるハラスメント防止
- ・人材の流動性向上
- ・多様性を活かすマネジメント体制の構築
特に男性の育児制度に対する認知度は低く、約半数近くの男性が「育児休業給付金について知らない」「パパ・ママ育休プラス制度を知らない」と回答しています (「厚生労働省:平成30年度 仕事と育児の両立に関する実態把握のための調査研究事業」より)。
また、男性が関わる育児制度(パパ・ママ育休プラス、男性の育児休業の再取得)に関しては、女性の約半数が「知らなかった」と回答しており、男性のみなら図、総じて「男性の育児制度」に対する認知度が低いことが分かります。
企業は、育児休業等の育児制度を個別に周知する"努力義務"が法律によって課されていますが、実際にはほとんど周知されていない状況です。
同調査によれば、育児休業給付金について、「会社からの説明は無かった」と回答した男性(正社員)の割合が「60.4%」となっています。
また、認知度が比較的に高い女性においても、約3~4割は「会社からの説明は無かった」と回答しており、男女関係なく会社からの周知が不足していると考えられます。
このような実態を踏まえ、2020年11月時点で「育児休業に関する制度の周知"義務"」を課すことが検討されています (2021年2月時点では時期等未定)。
しかし、男性の育児休業に対応する為の企業体制や仕組みが構築されていないことを理由に、中小企業の多くは難色を示しています。
「体制が構築されていないから育児休業できない」のか「育児休業する人が少ないから体制が構築されない」のかは定かではありませんが、進まない男性の育児参加を推し進める為の一手だと期待されています。
また、「男性が育児休業するなんて妻は何をしているのか」「妊娠は順番待ちです」「辞めさせるために異動や嫌がらせを行う」といったハラスメントも多く残っています。
公的機関(雇用環境均等部)に寄せられている育児・介護休業法に関する相談は、年間51,641件あり、その内の4,124件は「育児休業に関する不利益な取扱い」となっています (「厚生労働省:都道府県労働局雇用環境・均等部(室)における法施行状況について」より)。
詳しい内容は記載されていませんが、育児に関するハラスメント防止は、企業課題のひとつであると考えられます。
こういった実態を招いている原因として、「終身雇用制度による人材の流動性の低さ (一度雇ったら解雇できない)」や「多様性を活かす為のマネジメント層の教育が追い付いていない」といったことも挙げられています。
5-3.個人・家庭内の育児(子育て)の課題と対策
家庭内の育児(子育て)の課題は、身体的負担や精神的負担、及び経済的な負担があります。
厚生労働省の実態調査によると、希望通りに仕事と育児の両立ができている男性は約5割、女性は約7~8割となっています。
なお、特に希望と一致していない希望と実態の組み合わせは、男女で大きく異なっています。男性は、「長期休業を取得して子育てしたい」「短時間勤務で働きながら子育てしたい」といった育児に重点を置く希望が通りにくくなっているのに対して、女性は、「様々な形態で働きながら子育てしたい」「パートナーに子育てを任せたい」といった仕事に重点を置く希望が通りにくくなっています。
それと同時に、通りにくい希望を持っている人の割合は低く、世の中では少数派であることが分かります。
また、家庭内における負担感は、子どもの成長につれて、身体的又は精神的な負担から、経済的な負担へシフトしていく傾向が見られます。
子どもの成長と共に「自分の時間が持てない」「子育てによる身体の疲れが大きい」といった趣旨の悩みが減少するのに対して、「子育てに出費がかさむ」といった趣旨の悩みが増加することを明らかにしている調査結果もあります (「厚生労働省:21世紀出生児縦断調査(特別報告)結果」より)。
同調査によれば、「仕事や家事を十分にできない(両立が難しい)」とする悩みは、ほぼ横ばい状態であり、子どもの年齢によらず、仕事と家庭の両立が大きな負担感に繋がっていることが分かります。
これら課題に対する主な対策は、男性の育児休業推進や女性活躍推進法等によって少しずつ進められている状況です。
6.一般的な育児(子育て)の流れ
6-1.時系列で見る育児(子育て)の流れ
子供の成長を時系列的に見れば、妊娠、出産、乳児期(0~1歳頃)、幼児期(1~6歳頃)、児童期(6~12歳頃)、青年期(12~25歳頃)までに分類されることが多いと考えられます。
乳児期から幼児期にかけては、主に脳や身体の基礎が構築されると言われています。児童期では、集団行動を通じて知識や技能を習得し、生活習慣等を身に付けていきます。青年期前半からは、自我の芽生えと共に自立や自己同一性を身に付け始めます。
6-2.時系列で見る育児(子育て)の支出
育児(子育て)に必要な支出額は家庭状況によって異なりますが、内閣府の資料を基にすれば、以下の通りとなっています。
子ども一人当たりの年間子育て費用は、未就学児(乳幼児期)が約100万円/年、児童期(小学生)が110万円/年、中学生が150万円となっています (「厚生労働省:平成21年度インターネットによる子育て費用に関する調査」より)。
未就学児の費用負担は、保育費が大きな割合を占めています。また、子どもの成長につれて食費、教育費が増加し、中学生では全体の約半分を占めていることが分かります。本データを基にすれば、中学校卒業までの総費用は、約1,500万円であることも分かります。
なお、高校生以降は、公立や私立、就学環境によって支出額が大きく異なる為、一般化しにくいものの、中学生よりもさらに増加する傾向があります。