【子育て】衝動的に怒らない自分を作るアンガーマネジメントの基本!

 「遊ばずに早くご飯を食べなさい!」「走り回らずに少しは落ち着きなさい!」等と子どもを怒鳴りつけてしまった経験は、誰にでもあるものではないでしょうか。

 今日は怒らないようにしよう、と決めていても何度も繰り返し言うことを聞かない場面があると、少しずつ苛立ちが蓄積し、どこかで爆発してしまうことも少なくありません。

 そうして爆発してしまった自分自身を責め、「明日はもっと我慢しよう…」と思うものですが、それではいつまで経ってもイライラや怒りの爆発が解消することはないかもしれません。

 本記事では、そういった「ついつい子どもを怒鳴りつけてしまう」という方向けに、子育てのアンガーマネジメント(怒りの制御/管理)について紹介します。

1.衝動的に子どもを怒鳴りつけてしまう人の特徴

 まずはじめに、衝動的に子どもを怒鳴りつけてしまう人にはいくつかの特徴があります。

 もちろんこれらの特徴が無い方でもイライラして怒ってしまうことはありますが、まずは以下で紹介する特徴に該当しているか確認し、自分の怒りの"原因"を把握しておきましょう。

1-1.物事を計画通りに進めたい人

 物事を計画通りに進めたい人は、子育てにおいてイライラしやすい傾向があると考えられます。

 例えば、朝の支度(化粧や髭剃り等)を済ませることがいつもより少し遅くなって焦っている時に、子どもがおもちゃを散らかして遊んでいると、「部屋が汚い!」「遊ぶ前に準備しなさい!」と大きな声で怒鳴りつけてしまう、といったケースが見られます。

 子どもからすれば、いつも通り遊んでいただけ(と思っている)にも関わらず、親の状況によって、怒られる時と怒られない時があるのでは、「今日は親が怒っている(イライラしている)」ということしか記憶に残らないはずです。

 このケースでは、「準備が遅れる原因が他にあった→計画通りにできず焦っている→子どもが思い通りに動かない→子どもにイライラをぶつける」という構図ができあがっていると考えられます。

 確かに子どもにも非があるかもしれませんが、冷静に考えてみれば、時間の分からない子どもに対して、何も言わなくても完ぺきに準備しておけ、というのは少し酷すぎるように思います。

 このように、物事を計画通りに進めたい人は、「計画が思い通りに進まない焦り」を起点として、イライラを蓄積していく傾向があります。

1-2.理想が高く子どもや自分に過度に期待している人

 また、理想像が高く、子どもや自分の能力に過度に期待している人も、子育てにおいてイライラしやすい傾向があります。

 前述した例で説明すると、「自分の子どもは準備ができるはず(実際に準備できていたこともある)」「自分は少々遅れても計画通りに進められるはず(過信)」といった期待を持っている方が、これに該当します。

 「自分や子どもはもっとできるはず」であるにも関わらず、「実際にはできていない自分や子ども」に対して、落胆してしまうのです。

 つまり、この特徴を持っている方は、先ほどと同じケースでも、「準備が遅れる原因が他にあった→計画通りにできない悔しさや虚しさを感じている→できない子どもにイライラをぶつける」という構造ができあがっていることになります。

 「理想通りにできないのは子どものせいだ」と、他人や環境のせいにすることで、自分自身を正当化しよう(自尊感情を守ろう)としている場面もあるかもしれません。

1-3.心配性で不安になりやすい人

 同様に、心配症で不安になりやすい人も、子育てにおいてイライラしやすい傾向があります。

 こちらも前述した例を基にすると、「計画が遅れたことで出社が遅れたらどうしよう」「ご飯の準備が遅れたらどうしよう」と、その後の影響が不安になってしまう方が該当します。

 冷静に考えれば、子どもがおもちゃを散らかしていたとしても、せいぜい数分のロスにしかなりませんが、心配性の方は「やばいやばい」と焦ってしまいやすく、「重大なロス!」と脳内で処理されてしまう場合があります。

 「この数分のロスが影響して間に合わなかったら…」と、最悪の事態を想像して過剰に焦ってしまうのです。

 つまり、このケースでは、「準備が遅れる原因が他にあった→その後の影響を不安に感じる→子どもが思い通りに動かない→子どもにイライラをぶつける」という構図ができあがっています。

 自分自身の中にある焦りや不安をかき消す為に、大きな声で怒鳴りつけ、子どもの行動を支配しようとしている状態です。

1-4.傷付くことを極端に恐れる人

 前述でも少し触れましたが、失敗してしまうことや傷付いてしまうことを極端に恐れる人も、子育てにおいてイライラしやすい傾向があります。

 怒りは、相手を拒絶、威嚇し、意見の正当性に関係なく、相手を抑え込む力を持っています。相手を抑え込む効果は一時的ですが、短期的に見れば非常に高い効果を持っています。

 その為、傷付くことを極端に恐れる人は、身の危険(計画ミスによる自尊心の傷付き、不安、苛立ち等)を感じた瞬間に、誰かを怒鳴りつけて自分を守ろうとしてしまうのです。

 過去のトラウマや経験から、自分自身を守るための手段として"怒り"を利用している為、何も考えずに"怒り"を抑えてしまうと、自分自身を守れなくなってしまう可能性があります。

 このケースでは、"怒り"を抑えることに注目するのではなく、何に対して身の危険(心の危険含む)を感じているのか、書き出して整理することが大切だと分かります。

 書き出して整理してみると、「数分遅れたところで人生は変わらない」「子どもがおもちゃを散らかしても将来への致命的な影響はない」というように、人生に致命的な影響を与えるようなものではない(過剰に心配するようなことではない)ことが一目で分かります。

1-5.気持ちを伝えることが苦手な人

 また、自分の気持ちを素直に伝えることが苦手な人は、子育て中のパートナーにイライラをぶつけやすい傾向があります。

 例えば、家事や育児をもっと分担したいのであれば、素直に「家事や育児を手伝ってほしい」と伝えて話し合いをすれば良いのですが、ついつい「寝転がってないで手伝ってよ!」「仕事ばっかりして!」と怒ってしまいがちです。

 自分の気持ちを伝えることが苦手である為、怒りの勢いに任せて相手の反論を抑え込み、一方的に意見をぶつけ、相手に解決策を考えてもらおうとしているのです。

 言い換えてしまえば、「自分では解決策が分からないから助けて!」と叫んでいる状態とも言えるかもしれません。

 これでは相手もどうすれば良いのか分からなくて当然ですが、「何故わかってくれないのか」という伝わらない葛藤から、さらに怒りが増長することも少なくないでしょう。

1-6.ストレス発散が苦手な人

 また、ストレスを発散する方法を持っていない人も、子育てにおいてイライラしやすい傾向があります。

 例えば、「疲れた時は甘いスイーツを食べる」「のんびり寝転がって本を読む」といった自分でも気付いていない無意識の行動が、ストレス発散に繋がっていることがあります。

 子育ての忙しさに追われて、のんびり読書をする(ストレス発散をする)機会が失われてしまったり、食事改善の名のもとにスイーツ断ちをしたり、と知らない内にストレス発散を抑制してしまっている可能性があります。

 さらに、子育ての忙しさに追われていると、ついつい簡単な食事で済ませてしまいがちです。食生活が乱れることで、ストレス耐性に欠かせないビタミンB群/C、たんぱく質、カルシウム等の栄養素が不足してしまいがちになります。

 このように、ストレスに対する耐性が知らず知らずのうちに下がってしまうことで、ストレスをうまくコントロールできず、子どもにストレスをぶつけてしまうようになっている場合もあるでしょう。

2.衝動的な怒りを抑えるアンガーマネジメントの基本

 ここまで衝動的な怒りを感じやすい人の特徴を紹介してきましたが、実は、この特徴を知ることがアンガーマネジメントの基本だと言えます。

2-1.怒りは二次感情である

 アンガーマネジメントの基本として、怒りは一次感情ではなく二次感情である、ということが挙げられます。

 一次感情とは、何らかの行為や言動によって最初に持つ感情のことです。怒りに繋がりやすい一次感情としては、前述したような「焦り、落胆、虚しさ、悔しさ、不安、危機感、疲労感」があります。

 この一次感情である「焦り、落胆、虚しさ、悔しさ、不安、危機感」が蓄積していくことで、二次感情である"怒り"が生まれると言われています。言い換えれば、一次感情は内面的な感情(自分の中の感情)、二次感情は外面的な感情(自分の外の感情)とも言えるかもしれません。

 また、一次感情が"怒り"に変わるまでの早さや程度は人によって異なり、一瞬で怒りに切り替わる人もいれば、少しずつ怒りに切り替わっていく人もいるでしょう。

 「キレどころが分からない」と言われる人は、他の人とは異なるトラウマや経験を持っていて、何らかの一次感情(例えば、悔しさ等)が極端に"怒り"に繋がりやすいのかもしれません。

2-2."怒る前に深呼吸"は意味がない

 これらのことから、"怒る前に深呼吸"(="二次感情の抑え込み")は、全く意味がなく、むしろ逆効果であることが分かります。

 一次感情が二次感情に切り替わる前に抑え込み、"怒り"という外向きの感情に切り替わらないようにすることも大切ですが、それでは一次感情がどんどん蓄積されている状態となってしまいます。

 どれだけ深呼吸をして怒りの感情を抑え込んだとしても、いつかは一次感情が許容量を超え、風船のように破裂してしまうのです。

2-3.怒りやすい場面と原因を把握する

 アンガーマネジメントでは、怒りの感情を無理に抑え付けるのではなく、自分が怒りやすい場面と原因を客観的に把握することから始める必要があります。

 前述の朝の支度を例にすれば、「あ、時間が遅れているから焦り始めているな」「焦っているとイライラしやすいな」というように、自分が怒りやすい場面や原因を把握していきます。

 このように怒りの感情に切り替わりそうになる前から、自分の中の一次感情を客観的に観察し続けておくことが大切です。

 一次感情を客観的に観察し、自分の感情やその傾向を把握しておくことができれば、深呼吸をしなくても、"怒り"を制御することができるようになります。

 客観的に一次感情を観察していく中で、自分がどの一次感情(焦り、落胆、虚しさ、悔しさ、不安、危機感、疲労感)で怒りやすいのか、を把握するようにすると良いでしょう。

2-4.怒りの周期を分析する

 さらに、自分の中で怒りに切り替わりやすい(又は怒りに切り替わりやすい一次感情が発生しやすい)時間帯や曜日を把握しておくことも大切です。

 意外かもしれませんが、怒っている時間帯や曜日は固定されている場合も多いです。

 例えば、「朝の支度や夕食準備中のバタバタした時間に怒りやすい(焦りがイライラに繋がりやすい)」「金曜日の夜に怒りやすい(疲労感がイライラに繋がりやすい)」といったことが考えられます。

 もちろん怒りの周期や程度は人によって異なります。

 自分の怒りやすいタイミングを全く想像できない場合は、怒りの記録(いつ怒ったか、どの一次感情で怒ったか)を取ってみると良いでしょう。

 ネガティブな記録である為、あまり気乗りしない場合は、意識的に「今回怒ったのは○曜日の○時だった」や「○○をしている時だった」というように、怒りと時間や出来事を関連付けるようにするだけでも構いません。

 何度か繰り返している内に、「この前もこの時間帯に怒っていた気がする」というように、怒りのタイミングを知ることができるようになるでしょう。

 自分の怒りのタイミングを把握することで、怒りに備えやすくなり、結果的に怒る回数を減らすことができるはずです。

2-5.期待している理想を見直す

 怒りに繋がりやすい一次感情、場面、原因、周期を全て把握することができれば、あとはその一次感情の発生を制御していくだけです。

 例えば、子どもの行動に落胆したり、虚しさを感じて怒りやすい場合は、子どもに期待している理想像を見直すことで抑えることができるようになります。

 「子どもに期待しないようにする」という意味ではなく、年齢に応じた現実的かつ短期的な理想像に見直すというイメージです。

 具体的な例を挙げれば、「毎回完ぺきにお片付けができる」という理想像を持つのではなく、年齢や成長に応じて「3回に1回は完ぺきにお片付けができる」「お気に入りのおもちゃはお片付けができる」と、段階的に理想像を作るようにします。

 また、決めた理想像を達成できる見込みが無さそうであれば、その理想像が早すぎる可能性もある為、より緩めることも必要になるかもしれません。

 なお、これはあくまで"最低限ここまでは達成してほしい"という親としての基準線を引くものであり、「片付けなくても良い」と甘やかす行為とは、全く異なることに注意が必要です。

 つまり、基準線はあくまで自分自身の中に引いておけばよいものである為、表向きには「お片付けしようね」というスタンスを保っていても構いません。

2-6.不安な要素を整理して把握する

 また、不安な感情(このままお片付けができない子になるかも、出社や登園が遅れてしまうかも、といった感情)が怒りに繋がりやすい場合は、不安に感じている部分を整理すると良いでしょう。

 冷静に考えてみると、出社や登園が遅れたところで、短期的に少しの迷惑がかかる程度で、自分の人生に致命的な影響はありません。

 同様に、幼児(や小学生)がたまにお片付けできないだけで、大人になってもお片付けができない可能性は低いですし、お片付けが苦手であれば、得意なパートナーや家政婦を選べば良いだけです。

 誰にでも得意なことや不得意なことがあって当然です。大人になれば得意になる場合もあれば、反対に苦手になることもあるでしょう。

 将来を不安に思うあまり、厳しくしつけてしまいがちですが、その不安が人生の致命的なダメージになる可能性は高くないはずです。

 子どもに関しても、自分自身に関しても、不安に押しつぶされそうな時は、「その不安は人生に致命的な影響を与えることか(死ぬようなことか)」という視点で整理し直してみると良いでしょう。

 心配性の方は、「どちらに転んだとしても大して影響がないことを想定して多くの時間を使うよりも、転んでから考えた方が圧倒的に効率的だ」くらいの気持ちを持っておくと良いかもしれません。

2-7.子どもの行動心理を勝手に決めつけない

 また、子どもの行動心理を一方的に決めつけないことも大切です。

 親から見れば「片付けたくないだけ」「甘えているだけ」というように感じてしまいますが、子どもの内面には「ママと一緒に何かをしたい」「おもちゃをそこに置いておきたい」といった思いがあるかもしれません。

 そのように考えている子どもに対して、一方的に「片付けなさい!(親が決めた場所にまとめて置きなさい!)」と指示していては、子どもも納得できず、従いたくないと感じることもあるでしょう。

 親が思っている以上に、子どもは素直な一面を持っているものです(ずる賢い一面も持っていますが…)。

 「どう考えてもこう考えている!」「話を聞くだけ無駄!」と思う場面もあるかもしれませんが、子どもの意見を聞かずに一方的に親の意見を押し付けることは望ましくありません。

 子どもの心理を自分の脳内で勝手に処理してしまい、その妄想から"怒り"を生み出してしまうことがないように意識しておくことが大切でしょう。

 もちろん「やっぱり思っていた通りだった」ということも多いものですが、数少ない「想像と違っていた」を大切にすることで、"怒り"の回数を減らすことができるはずです。

3.怒りは必ずしも悪いものではない

 なお、ここまで"怒り"を悪いもののように扱ってきましたが、"怒り"という感情は必ずしも悪いものではありません。

 特に子育てにおいては、「子どもが交差点に飛び出しそうになった」「ベランダの手すり付近で押し合っている」といった命の危険がある場面も経験するはずです。

 そうした際には、まずは「ダメ!」という言葉で制止した上で、何故いけなかったのかを話すようになるはずです。

 このように、ある特定の場面(瞬時に命の危険がある場面など)に限定して意識的に利用することは全く問題ないものだと考えられます (交差点に飛び出しそうになった子どもに対して深呼吸している親はいないですよね)。

 しかし、日常的に"怒り"を多用しすぎると、その効果が弱まってしまい、いざという時に効果を発揮できない可能性があります。

 つまり、前述した通り、アンガーマネジメントは"怒り"を抑え込む技能ではなく、怒りを制御(管理)する技能だということに注意する必要があります。

4.衝動的な怒りで罪悪感を感じているなら

 最後に、衝動的によく怒ってしまう方は、衝動的に怒ってしまったことによる罪悪感や虚しさを感じていることが多いと考えられます。

 この罪悪感は、一見すれば反省のように思えますが、単なる後悔でしかありません。

 少し厳しい言葉になりますが、罪悪感を感じることで「過去の怒った自分」を無かったことにし、「自分は衝動的に怒らない良い人間になろうとしている」と自分を正当化しようとしているだけなのです。

 もっと言えば「怒ってしまった相手の感情」よりも、「相手にどう思われているか」という自分の方が重要になってしまっている場合もあるかもしれません。

 少し厳しい表現になってしまいましたが、罪悪感を感じて後悔するだけでは、何も変わりませんし、何も解決しません。

 もしも真剣に罪悪感を感じているのであれば、罪悪感を感じる労力を今回紹介したアンガーマネジメントの習得に使い、怒りを制御できるように努めましょう。

 繰り返しになりますが、アンガーマネジメントは怒りを抑えることではありません。

 アンガーマネジメントは、怒りをうまく活用しながら制御していくことです。

 アンガーマネジメントの基本を習得し、子育てにおいて、"怒り"を"意識的"に活用できることを願っています。