男性が利用できる育児に関する制度!短時間や残業規制など
近年、男性の育児休業が注目を浴び始めていますが、育児に関する制度は育児休業以外にもあります。
また、育児に関する制度に性別の差はなく、男女ともに同じ制度が利用できます。
所定労働時間外の制限や時間外労働の制限、さらに所定労働時間の短縮(短時間勤務)といった、幅広い制度が法律によって定められています。
本記事では、法律で定められた育児に関する制度について、詳しく紹介します。
1.育児に関する休暇(休業)制度について
21年1月時点で、男性が最も利用する可能性の高い休暇(休業)制度から紹介します。
1-1.育児休業制度について
育児休業制度の定義は、「労働者が原則としてその1歳に満たない子を養育するためにする休業」とされています。
なお、有期雇用者であっても所定の条件を満たせば、育児休業制度の対象となります。
休業中の給与に関しては、法律では定められておらず、会社によって異なりますが「無給」となる会社がほとんどです。
但し、会社によっては、一定期間のみ有給扱いとしている場合もありますので、就業規則を確認してみると良いでしょう。
1-2.子の看護休暇について
子の看護休暇の定義は、「小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者が1年に5日まで子の看護や予防接種・健康診断を目的とした休暇」とされています。
なお、育児休業と同様に、有期雇用者であっても所定の条件を満たせば、対象となります。
また、この休暇は、半日単位で使用が可能 (令和3年1月1日以降は時間単位)で、全ての労働者が利用できます。
休暇時の給与に関しては、法律では定められておらず、会社によって異なりますが、「無給」となる会社がほとんどです。
なお、令和元年度の雇用均等基本調査によると、「無給:52.9%」「有給:30.1%」「一部有給:17.0%」となっていますので、優良企業であれば有給となる可能性もあるかもしれません。
2.育児に関する労働制限(規制)制度について
続いて、男性が育児に主体的に参加する為に欠かせない労働制限に関する制度について、紹介します。
2-1.所定外労働を制限する制度について
所定外労働制限の定義は、「3歳に満たない子を養育する労働者がその子を養育するために請求した場合において、事業主は所定労働時間を超えて労働させてはいけない」とされています。
なお、所定労働時間とは、就業規則で定められた労働時間のことですので、一般的に定時と言われる時間(フレックスタイム制の場合は、その時数)内で労働するように、会社に請求できる権利ということです。こちらも有期雇用者であっても所定の条件を満たせば、利用可能です。
例えば、保育園の送り迎え等で、必ず定時退社が必要な場合などに利用することが想定されます(当然その他の理由でも利用可能です)。
2-2.時間外労働を制限する制度について
時間外労働制限の定義は、「小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者がその子を養育するために請求した場合において、事業主は24時間/月、150時間/年を超えて労働時間を延長してはならない」とされています。
なお、時間外労働時間とは、法定労働時間(8時間/日、40時間/週)に対して適用されるため、所定労働時間からの超過時間ではないことに、注意が必要です。
こちらも有期雇用者であっても所定の条件を満たせば、利用可能です。
例えば、多少の残業は可能であるが、夫婦の負担を考慮して、残業が過剰になることを避けたい場合などに利用することが想定されます(当然その他の理由でも利用可能です)。
2-3.深夜業を制限する制度について
深夜業制限の定義は、「小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者がその子を養育するために請求した場合において、事業主は深夜労働させてはならない」とされています。
この制度は、保育できる同居者が居る場合や、所定労働時間の全てが深夜労働である方は利用できません(会社によって異なる可能性はありますが、法律上は対象外となっています)。
例えば、ひとり親である場合や夫婦ともに深夜業である場合に利用することが想定されます(当然その他の理由でも条件を満たせば利用可能です)。
2-4.所定労働時間の短縮制度について
所定労働時間短縮の定義は、「3歳に満たない子を養育する労働者がその子を養育するために請求した場合において、1日の所定労働時間を原則として6時間とする」とされています。
いわゆる短時間勤務や時短勤務と呼ばれるものです。
労使協定によって業務上短縮困難だとされる業務においては、利用できない場合もありますので、就業規則等を確認することが望ましいでしょう。
例えば、所定労働時間では保育園の送り迎えができない、といった場合などに利用することが想定されます(当然その他の理由でも利用可能です)。
3.育児に関するその他制度について
最後は、自分から申請して利用する制度ではなく、これまで紹介した制度を利用する(した)際に、知っておくと損をしない制度になります。
3-1.育児休業等に関するハラスメント防止について
育児休業等(今回紹介した制度全て)を理由とするハラスメントは、法律によって禁止されています。
その禁止範囲は、退職勧告といった扱いを禁止するだけでなく、制度利用を妨げるような言動(上司だけでなく同僚も含む)まで、幅広く制限されています。
本来は、企業内で防止措置を講じ、発生時は速やかに解消することが求められますが、企業内でハラスメントの解消が難しい場合、国の相談窓口(都道府県の労働局)に相談し、介入してもらうことも可能となっています。
ハラスメントの典型例を挙げると、「退職してほしい」「働かない人が居ると周りが大変だ」「入社早々に制度利用は図々しい」「妊娠は避けてほしい」「出世は難しい」「意に反して軽易な業務や雑務だけに転換させる」といった言動は、全てハラスメントに該当する可能性があります。
「これっておかしい?」と疑問に感じたら、調べたり、相談するように、心掛けておくと良いでしょう。
3-2.労働者の配置に関する配慮について
労働者の就業場所の変更(いわゆる転勤)によって、子の養育が難しくなる場合、その子の養育の状況に配慮する義務が事業主に課されています。
但し、あくまで配慮する義務であり、単身赴任が可能(配偶者によって子の養育が可能)な場合など、転勤そのものを避ける義務はないことに注意しましょう。
転勤自体は、就業規則によって定められた会社側の権利でもある為、転勤を有効とするか無効とするかは、各家庭と会社の双方の事情を踏まえた上で、判断されるケースが多くなっています。
3-3.不利益な取扱いの禁止(防止)について
育児休業等(今回紹介した制度全て)を理由とする不当な取扱い(解雇含む)は、法律によって禁止されています。
解雇といった直接的な取扱いに限らず、継続就業が困難となるような間接的な取扱いについても禁止されています。
4.育児制度は企業毎の上乗せ制度も確認しよう
以上で、2021年1月時点で法律によって定められた育児関連制度の紹介は終わりです。
企業によっては、法律よりも期間や適用条件を緩和するなど、各種上乗せ制度を整備している場合もあります。
(配偶者の)出産を控えた男性は、ぜひ一度、自社の就業規則を確認してみてはいかがでしょうか。