育児休業制度を活用して収入を増やす方法!誰でも得する情報から実例まで

 男性が育児休業を諦める理由として、「収入を減らしたくなかった」というものがあります。

 しかし、残業時間や休業時期によっては、育児休業した方が収入が増えるケースがあることはご存じでしょうか。

 本記事では、育児休業を利用して収入を増やす方法とその実例を紹介しています (当然ながら、副業等の怪しい方法ではありません)。

1.育児休業中の収入に関する制度の概要

 まずは、育児休業を利用して収入を増やす方法を紹介する前に、育児休業中の収入計算等について、簡単に紹介します。

1-1.育児休業給付金制度について

 まず初めに、育児休業中の主な収入源として「育児休業給付金」があります。

 育児休業給付金に関する詳細な情報は、調べればいくらでも出てきますし、「厚生労働省:育児休業給付金について」※PDFに詳細に記載されている為、今回は育児休業を利用しても収入が減らない(又は増える)方法に、必要な情報のみに絞って紹介します。

  • 【最低限知っておくべき育児休業給付金】
  • ・育児休業期間中に無給であった場合に、雇用保険から給付金が支給される
  • ※無給でない場合でも、一定程度収入が下がれば支給対象となる (但し、減額の可能性あり)
  • ・支給額 = 休業開始時賃金日額(※1) × 支給日数(30日) × 67%(※3)
  • ※1 休業開始時賃金日額 = 休業開始前6ヵ月間の賃金 ÷ 180
  • ※2 休業開始から6ヵ月経過以降は、50%

 色々と書き方がややこしいですが、育児休業給付金は、「直近6ヵ月間の平均月額(残業代や手当含む)」を基に、支給額が計算される、ということだけ覚えていただければ問題ありません。但し、育児休業給付金の計算に、賞与は含まれません。

1-2.育児休業中の税金控除等について

 続いて、育児休業中の税金控除 (免除)について、紹介します。

 育児休業を利用することで、その期間中の社会保険料 (健康保険、雇用年金保険)が免除されます。

 また、育児休業給付金には、所得税がかかりません。

 但し、社会保険料が免除される期間は、「育児休業等を開始した日の属する月からその育児休業等が終了する日の翌日が属する月の前月までの期間」であり、注意が必要です。

 非常に分かりにくい書き方となっている為、実例で説明すると、6月2日~8日に育児休業した場合、「育児休業等を開始した日の属する月=6月」から「その育児休業等が終了する日の翌日 (6月9日)が属する月 (6月)の前月=5月」までの期間となり、免除期間は「無し」となります。

 反対に、6月24日~6月30日に育児休業した場合、「育児休業等を開始した日の属する月=6月」から「その育児休業等が終了する日の翌日 (7月1日)が属する月 (7月)の前月=6月」までの期間となり、免除期間は「6月全て」となります。

 何故、このような計算をしているのかは分かりませんが、今回は「月末に休業していた月の社会保険料が免除される」ということだけ覚えていただければ問題ありません。

 なお、月末が休祝日などで勤務日でない場合 (例えば、6月30日が日曜日など)には、休業終了日が6月28日となってしまわないように注意しましょう (このケースでは、7月1日まで休業する方が無難と思われます)。

2.育児休業で収入が増加するケース

 続いて、本記事の本題である「育児休業で収入を減らさない(増やす)方法」について、詳しく紹介します。

2-1.賞与月に育児休業すると保険料免除でお得になる

 まずひとつめに、育児休業中の社会保険料(健康保険、厚生年金保険)が免除されることを利用して、手元に残る金額を増やす方法を紹介します。

 実際に社会保険料がどれくらいかかっているかは、前回の給与 (又は賞与)明細を見れば間違いありませんが、大まかには、「月額(総額)×約15%程度」をイメージすれば良いでしょう。

 給与 (又は賞与)の約15%の保険料が免除されることになる為、給与月でも数万円、賞与月だと十数万円も差し引かれる金額が少なくなるケースもあります。

 少しややこしい為、社会保険料の免除を受ける為の方法と実例について、もう少し分かりやすく紹介します。

  • 【育児休業を利用して社会保険料の免除を受ける方法】
  • 免除を受けたい月の月末を含めて育児休業する (これだけ)
  • <ポイント1>育児休業の申請は、休業開始の1ヵ月前までに行うこと
  • <ポイント2>免除を受けたい月の月末を含めて育児休業すること
  • <ポイント3>利用前に、人事部や都道府県労働局 (ハローワーク)、健康保険組合、厚生年金基金等へ相談しましょう
  • 【社会保険料の免除実例】※6月が賞与月の場合
  • <良い例>育児休業期間:6月29日~7月1日、給与30万円、賞与100万円の場合
  • →月末を含んで休業している為、6月の社会保険料が免除されます。社会保険料は、超概算で130万円×15%=約20万円になる為、3日間休んだだけで、約20万円も手元に残る金額が増えます
  • <悪い例>育児休業期間:6月20日~22日、給与30万円、賞与100万円の場合
  • →月末を含んでいない為、社会保険料の免除はありません。通常通り、約20万円が控除されます (差し引かれます)
  • <ポイント1>上記は超概算である為、実際の社会保険料は、給与明細等で確認しておきましょう
  • <ポイント2>免除手続き等は会社が行います。会社に良く確認しておきましょう

2-2.残業24時間を超えると有給休暇よりお得になる

 さらに、育児休業給付金は、これまでの「手取り額×約8割」と表現されることがありますが、実は平均残業時間が24時間を超えたあたりから有給休暇よりもお得になる可能性があります。

 何故、残業時間が24時間を超えると、有給休暇よりもお得になる (給付金の支給額≒有給休暇時の手取り額になる)かは、以下の通りです。

  • 【「給付金の支給額≒有給休暇時の手取り額」となる残業時間の条件】
  • 式(1) 給付金の支給額≒有給休暇時の手取り額 (求めたい条件)
  • 式(2) 育児休業給付金の支給額=平均月額×67% (※分かりやすく月額としています)
  • 式(3) 手取り額=平均月額×約80% (※社会保険料や所得税が控除されます)
  • 式(4) 支給額(式1)/手取り額(式2)=約83% (※支給額=手取り額×約8割の根拠です)
  • 式(5) 平均月額=基本給+残業代+各種手当
  • 式(6) 有給休暇時の月額=基本給+各種手当 (※ひと月全て有給休暇としています)
  • 式(7) 式(1),(2),(5),(6)より、「(基本給+残業代+各種手当)×67%=(基本給+各種手当)×80%」
  • 式(8) 式(7)を整理すると、「残業代=(基本給+各種手当)×約19%」
  • 式(9) 残業代=基本時給×残業時間×1.25
  • 式(10) 基本給=基本時給×基本労働時間
  • 式(11) 式(8),(9),(10)より、「基本時給×残業時間×1.25=(基本時給×基本労働時間+各種手当)×約19%」
  • 式(12) 式(11)を整理すると、「残業時間=(基本時給×基本労働時間+各種手当)/基本時給×約15.2%」
  • ★ 式(12)に、労働日数20日/月、労働時間8時間/日、各種手当0円を代入すると、「残業時間=約24時間」が算出されます。
  • ※実際には、各種手当(通勤手当、住宅手当、家族手当等)が含まれる為、もう少し残業時間が必要になります。

 実際には、自身の給与明細から各種手当金額と基本時給を算出し、上記の式(12)「残業時間=(基本時給×基本労働時間+各種手当)/基本時給×約15.2%」に代入することで、「給付金の支給額≒有給休暇時の手取り額」となる為に必要な残業時間を求めることができます。

 手当額にもよりますが、概ね30時間前後になる場合が多いはずです。

 なお、色々とややこしく記載していますが、「概ね30時間前後の残業を慢性的にしている方は、有給休暇よりもお得になる可能性がある」と認識して頂ければ問題ありません。

2-3.長期連休を育児休業に変えるとお得になる

 もうひとつ、育児休業を利用して、長期連休をお得にする方法があります。

 利用方法が限定的であり、とてもややこしいですが、ポイントさえ絞れば、あまり気にせず、お得に利用することができます。

 その方法を説明する前に、育児休業給付金の計算について、もう少し詳細に説明します。

  • 【育児休業給付金の計算方法のポイント】
  • ・育児休業期間中に一定の収入があった場合、育児休業給付金額が減額される。但し、その収入の対象は、「育児休業期間中に支払われた賃金」のみである
  • (例) 賃金支払日25日の場合に、6月18日~22日に育児休業すると、その期間に支払われた賃金は、ゼロとして計算されます
  • ・育児休業期間中に賃金の支払いがあった場合でも、育児休業期間中を対象としていることが明確な賃金のみが、計算に利用される
  • (例) 賃金支払日25日の場合に、6月24日~26日に育児休業して賃金収入があったとしても、6月25日の賃金に、6月24~26日分の賃金が含まれていない場合は、その期間に支払われた賃金は、ゼロとして計算されます

 かなり分かりにくいですが、要するに、育児休業期間中が無給扱いであれば、育児休業期間中に(別の働いた期間を対象とする)賃金収入があったとしても、無給扱いとして給付金が支給されるということです。

 また、育児休業期間の最初の5日間だけを有給として扱っている企業もありますが、その有給分の賃金が翌月に支払われる場合など、「育児休業期間中に支払われた賃金」に該当しなければ、有給と給付金の両方を受け取ることができる場合もあります。

 但し、育児休業給付金は、会社が手続きする必要がある為、会社と相談する必要があります。

 もう一つ、育児休業給付金は、「6ヵ月間の賃金÷180」で計算された「賃金日額」に、休業日数をかけて計算されます。

 通常、180日間全て労働しているわけではない為、休日を含めて「賃金日額」を計算していることになります。

 つまり、例えば、月額30万円であれば、実際の日額は、「30万円÷20日(労働日数を20日として)=1.5万円」ですが、給付金における「賃金日額」は、「30万円÷30日=1万円」となります。

 例えば、2日間の有給休暇を利用すれば、1.5万円×2日間×約80%(税控除)=2.4万円が貰えますが、2日間の育児休業では、1万円×2日間×67%=1.34万円(給付金)しかもらえないわけです。

 しかし、反対に、年末年始(12月31日~1月3日は元々休日)を挟む形で、12月30日~1月4日まで有給休暇を利用すると、1.5万円×2日間×約80%(税控除)=2.4万円ですが、育児休業にすると、1万円×6日間×67%=4.02万円を給付金として受け取ることができるのです。

 劇的に大きな金額ではありませんが、元々休む予定の期間を育児休業に置き換えるだけで、有給休暇の節約と収入増加の両方を得ることができます。

 少し分かりにくいので、いくつかケースを分けて実例で紹介します。但し、各種手当を考慮せずに計算している為、多少の誤差があることは、ご了承ください。

  • 【繁忙期だけ残業時間が多いケース】
  • (労働条件1) 1日8時間、月20日間労働、平均月額40万円(総額)
  • (計算条件2) 2月~5月まで平均残業時間:80時間
  • (計算条件3) それ以外の平均残業時間:20時間
  • (休業条件) 土日を含めて4日間休業 (労働日としては2日分)
  • →計算に使用される期間の平均残業時間:60時間 ((80時間×4ヵ月 + 20時間×2ヵ月)÷6ヵ月)
  • →内 残業代:約13万円弱 (残業代を基本給×1.25として計算)
  • ※参考:残業代=(残業時間×基本給(時給)×1.25)÷(労働時間×労働日数×基本給(時給)+残業時間×基本給(時給)×1.25)×平均月額として計算
  • →残業代を引いた基本月額:約27万円 (月額から残業代を引いた額として計算)
  • →有給休暇1日当たりの賃金:約1.35万円 (基本月額27万円÷労働日数20日)
  • →有給休暇1日当たりの手取り額:約1.08万円 (社会保険料等控除)
  • →給付金1日当たりの支給額:約0.89万円 (平均月額40万円÷30日×0.67)
  • ★4日間の有給休暇 総手取り額:約2.2万円 (労働日数2日分)
  • ★4日間の通常勤務 総手取り額:約2.5万円 (労働日数2日分+残業2時間分)
  • ★4日間の育児休業 総支給額:約3.6万円 (休業日数4日分)
  • 『繁忙期の後に休日を含めて育児休業することで収入が約1万円も増える!』

  • 【常に残業時間が多いケース(土日を含めて休業)】
  • (労働条件1) 1日8時間、月20日間労働、平均月額30万円(総額)
  • (計算条件2) 平均残業時間:30時間
  • (休業条件) 土日を含めて4日間休業 (労働日としては2日分)
  • →計算に使用される期間の平均残業時間:30時間 ((30時間×6ヵ月)÷6ヵ月)
  • →内 残業代:約5.7万円弱 (残業代を基本給×1.25として計算)
  • 参考:残業代=(残業時間×基本給(時給)×1.25)÷(労働時間×労働日数×基本給(時給)+残業時間×基本給(時給)×1.25)×平均月額として計算
  • →残業代を引いた基本月額:約24.3万円 (月額から残業代を引いた額として計算)
  • →有給休暇1日当たりの賃金:約1.22万円 (基本月額24.3万円÷労働日数20日)
  • →有給休暇1日当たりの手取り額:約0.98万円 (社会保険料等控除)
  • →給付金1日当たりの支給額:約0.67万円 (平均月額30万円÷30日×0.67)
  • ★4日間の有給休暇 総手取り額:約2.0万円 (労働日数2日分)
  • ★4日間の通常勤務 総手取り額:約2.4万円 (労働日数2日分+残業3時間分)
  • ★4日間の育児休業 総支給額:約2.7万円 (休業日数4日分)
  • 『慢性的な残業でも休日を含めて休業することで収入を変えずに休業できる!』
  • ※同じケースで、土日を3回含むように17日間(金曜~月曜まで)を休業した場合
  • ★17日間の有給休暇 総手取り額:約11万円 (労働日数11日分)
  • ★17日間の通常勤務 総手取り額:約13万円 (労働日数11日分+残業16.5時間分)
  • ★17日間の育児休業 総支給額:約11万円 (休業日数17日分)
  • 『休日を最大限に含めて休業することで収入を変えずに休業できる!』

  • 【常に残業時間が多いケース(年末年始を含めて休業)】
  • (労働条件1) 1日8時間、月20日間労働、平均月額30万円(総額)、賞与100万円
  • (労働条件2) 平均残業時間:30時間
  • (休業条件) 年末年始を含めて6日間休業 (労働日としては2日分)
  • →計算に使用される期間の平均残業時間:30時間 ((30時間×6ヵ月)÷6ヵ月)
  • →内 残業代:約5.7万円弱 (残業代を基本給×1.25として計算)
  • 参考:残業代=(残業時間×基本給(時給)×1.25)÷(労働時間×労働日数×基本給(時給)+残業時間×基本給(時給)×1.25)×平均月額として計算
  • →残業代を引いた基本月額:約24.3万円 (月額から残業代を引いた額として計算)
  • →有給休暇1日当たりの賃金:約1.22万円 (基本月額24.3万円÷労働日数20日)
  • →有給休暇1日当たりの手取り額:約0.98万円 (社会保険料等控除)
  • →給付金1日当たりの支給額:約0.67万円 (平均月額30万円÷30日×0.67)
  • ★6日間の有給休暇 総手取り額:約2.0万円 (労働日数2日分)
  • ★6日間の通常勤務 総手取り額:約2.4万円 (労働日数2日分+残業3時間分)
  • ★6日間の育児休業 総支給額:約4.0万円 (休業日数4日分)
  • ★賞与の社会保険料免除額:約15万円 (保険料率15%として計算)
  • 『年末年始を含めて賞与月に休業することで16.4万円も収入が増える!』

 非常にややこしくなりましたが、要するに、育児休業給付金の支給額は、直近6ヵ月の賃金(残業代含む)を基に計算される為、直近6ヵ月間の残業が通常よりも多い場合は、通常勤務や有給休暇よりもお得になるケースがあるのです。

 裏を返せば、繁忙期が終わった後に、ちょっとした連休を育児休業として取得するだけで、有給休暇の節約と収入アップが見込めることになります。

 最後に、育児休業をお得に利用するポイントについて、まとめておきます。

  • 育児休業をお得に利用するポイントまとめ
  • <ポイント1>休日を最大限に含めて休業すること
  • <ポイント2>賞与月の月末を含めて休業すること
  • <ポイント3>直近6ヵ月の平均残業時間が多いタイミングで休業すること
  • ※但し、本来は夫婦が必要とする時期に休業するべきです

3.育児休業自体が非常にお得な制度である

 最後に、育児休業は使い方次第で、収入をほぼ減らさずに利用できる非常にお得な制度です。

 収入の減少を懸念する声も多くありますが、「家族の為に出産後は残業減らして早く帰ろう!」と思っているのであれば、実際の収入に差が無くなる (又は休業した方が収入が増える)可能性もあります。

 裏を返せば、本来、育児休業を取得できる1年間は、残業代を貰う為だけに働いている状態になると言っても過言ではありません (時給100円台の可能性も…)。

 また、残業代や賞与を含めなければ、生活が成り立たないような生活水準にしている場合は、残業ゼロ化や経済不況が進むと生活できなくなるリスクを背負っている為、非常に危険な状態です。

 もしもそのような収支バランスになっているのであれば、育児休業に関係なく、直ちに基本給だけで生活できるレベルまで、生活水準を落とせるようにしておくことをオススメします。

 いずれにしても、「残業代を稼ぐためだけに働いている」「家族との貴重な時間を持つ」ということを総合的に考えれば、今回紹介した短期休業よりも、長期休業の方が、圧倒的にお得と考えられます。

 ぜひ、育児休業を短期で諦めるのではなく、勇気を出して長期での育児休業を検討していただければ、幸いです。