【実体験】男性の育児休業はメリットだらけ!個人から社会全体のメリットまで
男性の育児休業におけるメリットは、「家族との時間を過ごすことができる」という、閉鎖的な価値観で表現されることがよくありますが、それだけではありません。
本記事では、「育児休業に興味はあるけど、会社に迷惑をかけてまで取得する勇気がない」と育児休業を踏みとどまっている方の為に、男性で社内初の長期育児休業(1年間)を取得した筆者の経験を基に、「休業者自身」「家庭内」「社会全体」それぞれのメリットについて、紹介していきます。
1.男性の育児休業によって家族が得られるメリット
まずはじめに、男性の育児休業によって得られる家族のメリットを紹介します。
実際に、一番実感しやすいメリットであり、素直に「育児休業して良かった」と感じられるメリットが多くなっています。
1-1.育児の大変さや喜びを夫婦で共有できる
まず第一に、育児休業を通じて、「育児の大変さや喜びを夫婦で共有できる」というメリットがあります。
具体的には、赤ちゃんが寝返りをする、声に反応する、目で追ってくる、手で物をにぎる、はいはいする、といった成長のひとつひとつを、夫婦でリアルタイムに体験することができます。
夫婦で育児休業をしていなければ、成長のほとんどを妻から聞くことになる為、成長の喜びを実感しにくいものです。
育児休業を通じて、夫婦で一緒に子どもの成長を目の当たりにすれば、その瞬間を一緒に喜びを分かち合うことができるようになります。
育児の大変さや喜びは、夫婦で育児をがっつりと経験していなければ得られにくく、夫婦二人で経験するからこそ得られる、かけがえのない経験となるでしょう。
1-2.お互いに尊重し合う関係ができる
また、育児休業を通じて、お互いの大変さを知ることで、「お互いに尊重し合う関係ができる」というメリットがあります。
生後初期に、家事と育児を全てこなすことは本当に大変ですが、夫が昼間に仕事をしていると、その大変さを理解しきれず、妻への思いやりが足りなくなることも少なくありません。
育児休業をしていなければ、相手が苦労している姿を目の当たりにすることがない為、お互いの大変さ (授乳や仕事、家事の大変さ)を理解しにくく、「もう少しできるのではないか」と相手を責めるような感情を抱いてしまうこともあります。
しかし、夫婦で育児休業を取得し、24時間共に生活することで、お互いの苦労や努力を目の当たりにすることができる為、お互いを理解し、尊重し合えるようになる可能性が高まります。
筆者自身も、恥ずかしながら第1子誕生時には育児休業を取得していなかった為、妻の大変さを理解しきれておらず、第2子誕生時に育児休業を取得して初めて、「妻はこんなに大変なことをしていたのか」と気付かされました。
1-3.核家族(夫婦とその子)で育児に向き合える
また、夫婦で育児休業をすることで、「核家族だけで育児に向き合う自信が得られる」というメリットがあります。
育児休業を取得すれば、「育児をするのために休んでいる」という大義名分ができる為、核家族(夫婦とその子)だけで育児に向き合う気持ちが強くなります。
祖父母に頼って育児をすることも大切ですが、夫婦で一緒に育児休業すれば、「自分たちで何とかしたい」という思いが強くなり、結果的に親としての自覚(責任感)を持つことに繋がります。
祖父母に頼り続けていては、親としての責任感が薄れ、子どもが大きくなっても頼り続けることになってしまう懸念もあります。
しかし、夫婦で育児休業して育児に向き合うことで、里帰り等をせずに生後初期の育児に深く関わり、父親 (母親)としての自覚を持つことで、将来に渡り、核家族だけで育児をしていく自信を得ることができるでしょう。
1-4.育児のやりがいや充実感を感じることができる
また、育児の大変さや喜びを夫婦で共有できるようになることで、「育児が本来持つやりがいや充実感を得られる」というメリットもあります。
家事や育児の大変さを一人で抱えていると、育児のやりがいや充実感を感じる前に、ストレスやプレッシャーに押しつぶされてしまうことがあります。
実際に、孤立感を感じている母親は非常に多く、母親の10人に1人は産後うつや育児ノイローゼを発症するとも言われています。
男性が育児休業し、夫婦で育児の負担を分散することで、育児が本来持つやりがいや充実感を感じる心の余裕を作り、夫婦で育児の喜びを感じることができるようになります。
1-5.家庭に夫の居場所を作ることに繋がる
また、父親の役割を作り出すことで、「家庭に夫の居場所を作る」というメリットがあります。
生後初期の育児への関わりが少ない場合、父親は育児に対して経験が足りず、家庭では役立たずになりやすいものです。
そうなると、「帰っても手伝えることはない」という状態となり、ますます家庭では役立たずになっていきます。
そして、そういった状態が続くと、家庭内の夫の役割はお金だけとなり、家庭内での居場所を失ってしまうことも少なくありません。
育児休業を取得し、生後初期の育児にしっかりと関わることで、夫自身の育児スキルを向上させ、将来に渡り家庭に夫の居場所を残しやすくなります。
1-6.妻の産後鬱や育児鬱といったリスクを回避できる
2020年時点において、女性の産後初期の死因トップは「自殺」です。
産後初期には、身体的な疲れと重なり、ホルモンバランスの乱れや睡眠不足などによる心理的な負担があると言われています。
特に、産後鬱や育児鬱は「私は大丈夫」「明るい人だから大丈夫」と言われる人でも発症するリスクがあり、その発症リスクがない人はいません。
この記事を見ているあなたの家庭にも、同様にそのリスクがあります。
育児休業を取得することで、家事や育児の負担を分散するだけでなく、妻の一番近くで「妻の異変」に早期に気付けるようになり、最悪の事態を回避する可能性を上げることができます。
2.男性の育児休業によって休業者自身が得られるメリット
続いて、男性が育児休業をすることによって得られる個人的なメリットについて、紹介します。
2-1.父親としての自覚を持つことに繋がる
まずはじめに、男性の育児休業には、「父親としての自覚を持つ」ことができるメリットがあります。
男性は妊娠期間が無い為、実際の育児を通じて、少しずつ父親としての自覚を持つと言われています。
本能的にも、女性よりもその自覚を持ちにくいとされており、生後初期の育児に関わっていなければ、生涯、父親としての自覚を持つことが難しくなります(自分がしなくても子どもが育つ環境ができてしまう為)。
育児休業によって、生後初期の育児にしっかりと関わる時間を持つことで、父親としての自覚を芽生えさせることができるでしょう。
2-2.自身の働き方(家族との向き合い方)を見直す機会になる
仕事に追われる忙しい毎日を過ごしていると、自身の働き方(残業や休日出勤など)に慣れ、違和感を感じることが少なくなります。
また、日本人には「苦労が美徳」という感覚が古くからある為、楽な生き方を不安に感じる傾向があり、楽な生き方を選択できない人も少なくありません。
育児休業によって、仕事の忙しさから離れ、家族だけと向き合う時間を持てることで、落ち着いて自身の働き方を見直すことができるようになるかもしれません。
2-3.マネジメントスキルを磨くことができる
家事や育児は、不十分な計画や手順では予定通りに進みません。
家事や育児を計画的に行うためには、タイムマネジメント(時間管理)やアンガーマネジメント(怒り管理)、リスクマネジメント(危機管理)といった、仕事においても必要とされる様々なマネジメント能力が必要となります。
育児休業を通じて、試行錯誤しながら育児にかかわることで、マネジメントスキルを学び、実践することができます。
2-4.究極の行動心理学を学び実践することができる
これまでの人類の研究によっても、育児の最適な答えは見つかっていません(時代や環境によって答えが変化しています)。
どんな大変な仕事よりも難しい育児に向き合う為には、「何故そう行動するのか(行動心理)」を日々考えながら、試行錯誤し、子どもと接していかなければなりません。
行動心理学を学び、一つ一つの体験によって達成感を伝え、やる気を高め、更なる困難に挑戦できる子どもを育てることは、会社で部下を育てることと通じるものがあるでしょう。
2-5.能力開発や自己研鑽に思う存分、時間を使うことができる
また、物理的に自分で調整できる時間が増加する為、「能力開発や自己研鑽に使える時間が増える」というメリットもあります。
夫婦で家事や育児の分担をしっかりしておくことは必要ですし、長時間のまとまった時間は確保しにくいかもしれませんが、短時間の空いた時間を有効活用することができれば、これまで以上に自分の時間を確保することができるようになります。
また、前述のマネジメントスキルが向上すれば、1日あたり数時間は自由時間を確保することも可能となります。
2-6.中長期的な視点を持ち、挑戦的な人材であると評価される
現代社会において、男性の育児休業は、中長期的な視点や勇気が無ければ取得が難しい状況です。
そのような社会的な背景を理解している会社(上司)であれば、育児休業を決断した勇気や視点を評価してくれる場合もあります(筆者の場合、直属の上司に限らず、他部署の部課長までわざわざ来てくれて「志の高い君を評価する」と激励してくれました)。
大手企業に勤める方であれば、想像以上にこういった評価を受ける可能性が高いかもしれません。但し、しっかりと自分の意思を伝えておく必要があることは言うまでもありません。
2-7.社内事例となり、同僚や同志のヒーローになれる
最後は、私の実体験に基づくメリットですが、「同僚や同志のヒーローになれる」というメリットがあります。
同僚の中には、「育児休業したいけど社内初は不安だから諦める」と考えている人たちが、意外と存在しています。
そういった方たちから、「君の育児休業を全力で応援する」「本当にありがとう」といった激励を受けることがあります。
社内初の育児休業取得は、職場に業務負担が掛かりやすく、短期的には迷惑がかかる場合も少なくありませんが、長期的には育児休業の前例を作ったことで、職場の労働環境が改善するといったメリットが発生する可能性もあります。
3.男性の育児休業によって社会全体が得られるメリット
最後に、男性が育児休業することによって得られる社会全体のメリットについて、紹介します。
3-1.男女に関係なく育児休業しやすい社会の実現に繋がる
男性が積極的に育児に参加することで、「男は外で働き、女は家庭を守る」といった性別による役割分担意識を無くし、誰もが働き、家事育児を担うことができる社会を実現することができます。
前述した性別による役割分担意識は、20年以上前に制定された男女共同参画社会基本法によって、法律上は解消されていますが、実際には、現代でも根強く残っています (「厚生労働省:令和2年度 男女共同参画社会白書」より)。
男性の育児休業は、一人一人が望む生き方を選択しやすい社会の実現に欠かせないと言えるでしょう。
3-2.女性が活躍しやすい社会の実現に繋がる
男女対等に家事育児に向き合うことで、女性(男性)の継続就業やスムーズな復職を可能にします。
「女性だけが産休&育休を取る」という世の中の通例が、「男女ともに育休を取る」という通例に変われば、女性も社会で活躍しやすくなります。
「内閣府:仕事と生活の調和レポート2018」によれば、出産を機に約半数の女性が退職しています (反対に男性は、ほぼ退職していません)。
こういったデータからも、まだまだ世の中では、「出産すれば女性が退職する」というイメージが根強く残っていることが分かります。
男性が育児休業を通じて、育児に責任を持つことで、女性が社会進出できる社会の実現に一歩近づくことができます。
3-3.第2子以降の出産意欲を高め、少子化抑制に繋がる
また、「厚生労働省:平成30年度 少子化対策社会白書」によると、日本は他の先進国に比べて男性の家事育児への参加が少なく、必然的に女性の家事育児負担が大きくなっています。
さらに、育児に伴う休業や休暇によって、職場に迷惑をかけられないという思いが、継続就業や復職、第2子以降の出産意欲を低下させている、という指摘もあります。
育児休業を通じて、夫婦で協力して育児に向き合うことで、第2子以降の出産意欲を高める効果があると言われています(男性の育児時間や残業時間と、第2子出産意欲には相関があることが分かっています)。
3-4.多様な価値観が尊重される社会の実現に繋がる
男性の育児休業が普及すれば、その他の休業(介護など)や時短勤務、在宅勤務といった多様な働き方も受け入れられやすくなると考えられます。
多様な働き方を尊重することは、国際的な開発目標(SDGs)においても掲げられており、その実現に一歩近づくことができます。
3-5.結果的に労働人口を増加させることに繋がる
働く意思のある人材に働きやすい環境が与えられ、家庭に入りたい人材に家庭に入りやすい環境が与えられることで、性別に関係なく、その人にあった環境で生き生きと活躍できるようになります。
そうなれば、育児鬱や仕事鬱といった精神的なリスクや、ストレスからくる身体的なリスクも下がると考えられます。
単に女性が働けるようになるから、労働人口が増えるのではなく、その人に合った環境で健康的に働けるようになることが、結果的に労働人口を増加させることに繋がると考えられます。
3-6.日本の生産性向上に繋がる
また、多様な価値観が尊重され、労働人口も増加すれば、様々な価値観を持つ人材が、一緒に仕事をすることができるようになり、新たなイノベーション(創造)に繋がりやすくなります。
多様な生き方を受け入れることが、日本の生産性を向上させ、日本が将来に渡り先進国であり続けることに繋がります。
4.男性の育児休業は魅力にあふれている
以上で、育児休業によって得られるメリットの紹介は終わりです。
ひとりひとりの価値観や、生活している環境によってもメリットは異なる為、自身で実際に育児休業を体験し、新たなメリットを見つけていくことも男性育児休業の楽しみのひとつかもしれません。
いかなる人生の選択においても、真面目に向き合えば絶対に無駄になることはありません。
ぜひ、新たな選択に一歩踏み出してみてはいかがでしょうか。