男性の育児休業を取り巻く環境は?取得率や期間まで

 男性の育児休業は、政府によって推進されていますが、その取得率は1桁台で推移しています。

 本記事では、「男性の育児休業を耳にする機会が増えたけど、実際のところどうなのか」という疑問に応える為、「厚生労働省:雇用均等基本調査」を基に紹介していきます

 ※なお、本調査は、3年毎に調査内容が変化している為、一部2018年度のデータが含まれている場合がありますが、2021年2月時点で最新データとなっています。

1.男性の育児休業取得率について

 まずはじめに、出産した(配偶者の出産含む)人の内、実際に育児休業を取得した人の割合を紹介します。

1-1.男性の育児休業取得率は「7.48%」

 令和元年度(19年度)の調査結果によると、男性の育児休業取得率は、たったの「7.48%」でした。なお、この取得率は、一般的に育児休業としてイメージしやすい長期休業に限らず、"1日以上"の育児休業を取得した人の割合となっています。

 また、有期契約労働者(いわゆる契約社員等)に限定すると、その取得率は「3.07%」とさらに下がります。やはり、無期契約労働者(いわゆる正社員等)に比べて、育児休業を取得しにくい環境にあることが分かります。

 このように、男性の育児休業について、耳にする機会が増えたと言っても、まだまだ10人に1人も育児休業そのものを利用していない状況であることが分かります。

男性の育児休業取得率の推移

1-2.女性の育児休業取得率は「83.0%」

 令和元年度(19年度)の調査結果によると、女性の育児休業取得率は、「83.0%」でした。

 なお、有期契約労働者に限定しても、その取得率は「77.5%」と男性よりも圧倒的に高い状況です。

 女性の育児休業に対する社会的な理解が高くなっているようにも思えますが、裏を返せば、約20%(5人に1人)の人は、育児休業を取得していない、とも言えます。

 働きながら子育てできる環境が整っている場合も見られますが、やはり「育児休業されては困る」「産後休業だけにしてほしい」といった職場の意見に委縮してしまっているケースも見られます。

 特に、中小企業等では、まだまだ理解が足りていない場合が多く、そういった職場からの要請があったという意見をよく耳にすることがあります。

 男性のみならず、女性の育児休業も完ぺきに浸透しているとは言えない状況だと言えそうです。

女性の育児休業取得率の推移

1-3.取得率は毎年1%弱増加している

 なお、男性の育児休業取得率は、平成28年度から順に、「3.14%⇒5.14%⇒6.16%⇒7.48%」と少しずつ増加しています。

 しかしながら、女性の同取得率は、平成28年度から順に、「81.8%⇒83.2%⇒82.2%⇒83.0%」とほとんど変わっていません。

 男性の育児休業取得率が増加しても、女性の育児休業取得率がほとんど変わっていないことから、女性が育児の主体となる環境は、変わっていないことが容易に想像できます。

 なお、その背景には、後述する男性の育児休業期間が短いことにあると考えられます。

2.男性の育児休業期間について

 こちらもSNS等において、「1年間取得します!」といった話を耳にする機会が、少しずつ増えてきたように感じます。

 本項目では、実際に育児休業を取得した人の取得期間について紹介します。

2-1.男性の育児休業期間 2週間未満が「71.4%」

 平成30年度(21年時点で最新)の調査結果によると、男性の育児休業期間は、短期(2週間未満)休業が「71.4%」となっています。

 つまり、現在、育児休業をしている男性の内、ほとんどは「育児を主体的に行う為の休業」ではなく、「出産直後の妻の育児環境を整える為の休暇」となっていることが分かります。

 筆者からすれば、「たったの2週間で育児の何が分かるのか」と思いますが、男性が育児について考える機会が無かった時代から考えれば、徐々に変わり始めていると捉えるべきなのかもしれません。

 なお、このような男性の育児休業期間の短さに対して、SNS上では、「2週間とかただの男性の休み」「2週間で育児は終わらない」「離乳食が始まってからも大変なのに」といった多くの指摘の声が上がっていました。

 「2週間でも育児休業しただけマシ」と思っている男性は、考え方をもう少し改める必要があるかもしれません。

2-2.男性の育児休業期間 6か月以上は「4.0%」

 また、同様の調査結果によると、長期(6か月以上)休業した男性は、たったの4.0%となっています。

 女性の育児負担を本格的に夫婦で分散する為には、最低でも6か月以上の育児休業が必要と考えられる為、実際に男女対等な育児参加ができている可能性のある家庭は、取得率7.48%×長期取得4.0%=約0.3%と言えそうです。

 つまり、全子育て世帯の内、たったの0.3%しか男性が主体的に育児参加できていない状況ということが言えます。なお、必ずしも育児休業が必要ではありませんが、後述する女性の長期取得率を見れば、男女の育児負担が対等でないことは明らかです。

2-3.女性の育児休業期間 6か月以上が「89.4%」

 同様の調査結果によると、長期(6か月以上)休業した女性は、「89.4%」となっています。

 育児休業する人の内、10人中9人は6か月以上休業しており、男性よりも圧倒的に長期休業者が多いことが分かります。

 その背景には、「保育園の定員が溢れている」「祖父母に頼れない」「他に育児してくれる人がいない」といった理由があるようです。

2-4.短期取得率は増加、長期取得率は変わらず

 また、同様の調査結果によると、平成24年度における男性の2週間未満の育児休業取得者が「60.7%」であるのに対して、平成30年度では、「71.4%」となっている為、6年間で約10%近く男性の短期休業率が増加しています。

 ただ、平成24年度における男性の6か月以上の育児休業取得者が「4.4%」であるのに対して、平成30年度では、「4.0%」となっており、6年間で長期休業取得者の割合は、ほとんど変わっていない状況だと言えます。

 つまり、短期の育児休業取得が推進された(5日間だけ有給処理など)ことで、育児休業取得率そのものは少しずつ増加していますが、長期の取得率はほとんど変わっていないことが分かります。

育児休業が持つ「男女対等な育児参加」や「女性の継続就業や復職支援」といった本来の目的は、まだまだ達成できていない状況(変わっていない状況)だと言えるでしょう。

3.男性の育児休業後の復職状況について

 男性が育児休業を考えるうえでセットになるのが、復職についてでしょう。

 こちらも厚生労働省の雇用均等調査結果を基に、復職状況について紹介していきます。

3-1.男性の育児休業後の復職率は「95.0%」

 調査結果によると、平成30年度における男性の育児休業復職率は、「95.0%」となっています。

 なお、平成24年度の同復職率は「99.6%」である為、休業後に復職しない割合が少しずつ増加しているようです。

 育児休業(や育児休業申請時の会社の態度)を機に、生活設計を見直す人が増えているのかもしれません。

3-2.女性の育児休業後の復職率は「89.5%」

 同調査結果によると、平成30年度における育児休業復職率は、「89.5%」となっています。

 なお、平成24年度の同復職率は「89.8%」である為、女性の復職率はほとんど変わっていません。

 男性の長期取得率がほとんど変わっていない為、退職せざるを得ない女性もいるのかもしれません(但し、退職理由はそれだけが要因ではないと考えられます)。

3-3.復職時の職種は現職復帰が「67.6%」

 同調査結果によると、平成30年度における育児休業後の復職時の職種(職場)について、「現職又は現職相当の職種(職場)に復帰する」の割合は「67.6%」となっています。

 同様に、「本人の希望を考慮し、会社側で決定する」の割合は「24.0%」となっています。

 これらを合計すると、全体の91.6%の方が希望に近い復職ができていると言えます(但し、"復職時"のデータですので、その後、どうなったかは明らかではありません)。

 ただ、会社都合で職場を決定された割合が3.1%ある為、育児休業の取得を検討している方は、上司や会社側に復職時のイメージをしっかりと伝えておいた方が良いかもしれません。

4.男性の育児休業は誰かの第一歩で大きく進む

 本記事では、2021年2月時点での男性の育児休業を取り巻く環境について紹介しました。

 男性の育児に対する意識は少しずつ改善しているように感じますが、実際の取得率(長期)は、ほとんど変わっていないのが現状です。

 その背景には、「収入が下がる」「職場の雰囲気的に難しい」「会社の制度が不十分」といった要因が挙げられていますが、一番の要因は「父親としての自覚や責任感が足りていない」ということではないでしょうか。

 短期の育児休業で諦めている方や、育児休業そのものを諦めてしまっている方は、いま一度、育児休業について真剣に考えてみてはいかがでしょうか。

 なお、男性の育児休業取得率が上がらない要因(男性が育児休業を諦める要因)について、「【人事必見】男性の育児休業取得率が上がらない理由は?意識改革が必要か」でも詳しく紹介していますので、参考にして頂ければ幸いです。