【人事必見】男性の育児休業取得率が上がらない理由は?意識改革が必要か

 育児休業制度が確立してから、数十年が経過していますが、男性の取得率は7.48%と低い水準を維持しています。

 「会社側の制度不足や体制不足」を指摘する声も多く聞かれますが、厚生労働省の労働者調査結果を見ると、育児休業取得率が上がらない原因はそれだけではないことが分かります。

政府や人事担当者の頭を悩ませる「男性の育児休業取得率が上がらない原因(背景)」について、厚生労働省のデータや社内初の男性長期育児休業を取得した筆者の経験を基に紹介していきます。

 なお、使用するデータは、全て「厚生労働省:平成30年度仕事と育児等の両⽴に関する実態把握のための調査研究事業 労働者調査」より、抜粋しています(2020年10月時点で最新)。

1.男性が育児休業を諦める要因(背景)について

 男性の育児休業取得率が上がらない原因は、主に以下の3パターンが考えられます。

  • 【育児休業取得率が上がらない原因パターン】
  • 1.育児休業制度を詳しく知らない
  • 2.育児休業の必要性を感じていない
  • 3.育児休業したくてもできなかった

 まずは、厚生労働省の調査の中にある「3.育児休業したくてもできなかった(諦めた)」理由から確認していきます。

1-1.会社に育児休業制度が整備されていなかった「23.4%」

育児休業を取得できなかった理由の第1位は、「そもそも会社に育児休業制度が整備されていなかった」となっています。

 しかし、「厚生労働省:令和元年度雇用均等基本調査」の事業所調査データによると、従業員30人以上の事業所において、「93.2%」の事業所で育児休業制度が規定されているとされています。

 また、育児休業は、会社に制度が整備されていなくても法律に従って利用できるものであることを踏まえると、会社の「整備不足」に限らず、「周知不足」による影響も含まれていることが考えられます。

令和元年度 育児休業制度の規定状況の推移

1-2.収入を減らしたくなかった「22.6%」

 続いて、育児休業を取得できなかった理由の第2位は、「収入を減らしたくなかった」となっています。

 育児休業中は、育児休業給付金(直近6ヵ月間の手取り額×約8割)を雇用保険から受け取ることができます。

 これは、単純に計算すれば、残業を月24~32時間以上している方であれば、残業代ゼロの給料よりも高くなります。

 有給休暇を取得した場合よりも高くなるケースがあるにも関わらず、現時点よりも収入を減らしたくない、と考える人が本当にこれほど居るのか、疑問が残ります。

 後述していますが、配偶者の妊娠が発覚した時点で、育児休業給付金制度を認知していた男性が「54.9%」しかいないことを踏まえると、この調査における「収入を減らしたくない」の中に、収入100%⇒0%(給付金制度を知らない)だと勘違いしている方も含まれていると考えられます。

 つまり、こちらも実際には「周知不足」によるものが含まれていると考えられます。

 なお、育児休業給付金については、「育児休業制度を活用して収入を増やす方法!誰でも得する情報から実例まで」にて詳しく紹介していますので、良ければそちらもご覧ください。

1-3.育児休業を取得しにくい職場の雰囲気だった「21.8%」

育児休業を取得できなかった理由の第3位は、「職場の雰囲気」となっています。

 少し脱線しますが、筆者自身はこの雰囲気を変えなければいけない、という使命感から育休取得を決意しました。

 筆者の職場では、「育児休業どころか定時帰りや有給消化すら認められない」というような、「働くことが美徳」と言わんばかりの雰囲気が漂っていました。

 その雰囲気から、職場の誰もが常に忙しさを感じており、日々の疲れから新たな発想を押し殺してしまっている状況でした。

 忙しさのあまり、新たな発想が生まれない為、職場環境はいつまで経っても変わらず、悪循環に陥っていました。

 そこで、「まずは繁忙感や働かないといけないという意識から変えなければいけない」と考え、水曜日の定時の日にはチーム全員必ず定時に帰らせる、お盆などの長期休暇は必ず連休にする、といった意識改革を進めていきました。

 そして、トドメの一撃と言わんばかりに、育児休業の取得に踏み切りました。

 日々の意識改革が効いていたのか、激励の声が多く、チームとして後押ししてくれました。

 本題から外れてしまいましたが、取得しにくい雰囲気だからこそ、その雰囲気を破壊できる人材が勇気を出して取得を推進することで、雰囲気が変わるかもしれません。

1-4.会社や上司、職場の理解がなかった「15.1%」

育児休業を取得できなかった理由の第4位は、「職場の理解不十分」となっています。

 こちらは、言葉が少し違っていますが、第3位(職場の雰囲気)とほぼ同じ意味だと考えられます。

 なお、改めて考えてみれば分かりますが、「誰も育児休業を申請したことがない」職場において、初めから全てをスムーズに理解してもらうことは難しいものです。

 「チーム内の誰かの育児休業取得」を機に、理解が深まっていくものだと考えれば、第3位と同様に、誰かが育児休業を取得しなければ、解消することは難しいと考えられます。

1-5.残業が多く、繁忙期であった「13.4%」

育児休業を取得できなかった理由の第5位は、「忙しかった」となっています。

 こちらも言葉は違いますが、第3位(職場の雰囲気)とほぼ同じ意味です。

 「繁忙期は忙しくて当然だ」という負の感覚が慢性化(習慣化)してしまい、その繁忙期に備える組織体制が構築されていないと考えられます。

1-6.自分にしかできない(属人化した)業務があった「12.5%」

育児休業を取得できなかった理由の第6位は、「属人化した業務があった」となっています。

 私が上司や人事の立場で、この理由が下から上がってきたら、間違いなく即是正します。

 育児休業以前に、特定の人にしかできない重要な業務が存在していること自体、会社にとって非常に大きなリスクとなるからです。

 職場にこの理由で諦める人が居れば、それは業務構造を見直すチャンスかもしれません。

育児休業又は何らかの休暇を諦めた理由(男性)

2.男性の育児休業に対する意識について

 これらを踏まえた上で、前述した「男性の育児休業取得率が上がらない原因(3パターン)」の割合について、確認してみましょう。

2-1.育児の為の休暇(休業)が必要だと感じた割合「31.6% + 17.7%」

 育児の為に、何らかの休暇・休業(年休利用を含む)を取得した男性の割合は「31.6%」です。

 また、同様に何らかの休暇・休業を希望したが取得しなかった割合は「17.7%」です。

 これらを合計すると、育児の為に、何らかの休暇・休業の必要性を感じた割合は「49.3%」となります。

2-2.育児の為の休暇(休業)が必要だと感じなかった割合「50.7%」

 続いて、育児の為に、何らかの休暇・休業(年休利用を含む)を希望しなかった割合は「50.7%」です。

 つまり、男性の半数以上が、育児の為に何らかの休暇・休業を取得する必要は無い、と考えていることになります。

 但し、そもそも育児に関する制度や社会的な背景を知らない為、そういったことを考える機会が無かった(頭になかった)という人も含まれていると考えられます。

2-3.男性で育児休業制度を十分に認知している割合「54.9%」

 続いて、前述した育児に関する制度を知らなかった割合については、詳しいデータが無い為、「育児休業給付金制度」を認知していたかどうか、についてのデータで見ると、男性で育児休業給付金制度を認知していた割合は「54.9%」となっています。

 つまり、約半数の男性は、育児休業に関する基本的な知識すら有していない、ということが分かります。

 なお、会社から育児休業に関する制度について説明があった割合は「16.5%」となっていることから、会社からの制度の周知が足りていないことが読み取れます。

 ちなみに、会社側には「育児休業に関する制度を周知する"努力義務"」が課せられているにも関わらず、実際には、この程度しか周知されていない状況です。

2-4.夫の育児休業を希望しない女性の割合「60.5%」

 ここまでのデータによると、男性の認識や理解が足りていないように読み取れますが、夫の育児休業を希望するかどうかについて、女性に確認したデータを見ると、夫の育児休業を希望しない女性の割合は「60.5%」となっています。

 つまり、男性のみならず、女性としても男性の育児休業を理解していない(期待していない)ということが分かります。

 この要因としては、これまで「男は仕事」「女は家庭」という風習の中で育ってきた世代である為、頭では違うと分かっていても、その風習に慣れてしまっていることも考えられます。

 又は、現代の社会の構造や理解度を踏まえると、育児休業することに大きなリスクがある、と判断している可能性も考えられます。

3.男性の育児休業取得率が上がらない理由について

 最後に、これまで紹介してきたデータを基に、本題である男性の育児休業取得率が上がらない理由について、紹介していきます(一部、内容の重複があるかもしれません)

3-1.男性の育児関連制度や社会的背景の認知度が低い

 育児関連制度を十分に理解していなかった為に、育児休業しなかった割合は、全体の「8.1%」と算出できます。

 ※2-1:休業を希望して取得しなかった割合「17.7%」 × 制度認知不足で取得しなかったと考えられる割合(1-1:制度不十分「23.4%」 + 1-2:収入減「22.6%」)で算出しています。

 同様に、ひとりひとりが社会的背景(男性育児参加の必要性)を十分に理解していなかった為に、育児休業しなかった割合は、全体の「50.7%」となります。

 ※2-2:何らかの休暇休業を希望しなかった割合「50.7%」。実際には、「1-4:職場の理解不足」等を加えると、もう少し増える可能性もあります。

 これらのデータから考えると、会社や社会として注力すべきなのは、制度や補償の拡充ではなく、ひとりひとりの意識付けだということが分かります

3-2.制度が先行して体制や施策が遅れている

 単にデータだけで見れば、職場の体制不足によって育児休業しなかった割合は、全体の「8.4%」しかありません。

 ※2-1:休業を希望して取得しなかった割合「17.7%」 × 体制不足で取得しなかったと考えられる割合(1-3:職場の雰囲気「21.8%」 + 1-5:繁忙期「13.4%」 + 1-6:属人化した業務「12.5%」)より算出しています。

 しかし、この調査だけでは読み取れませんが、「体制が無い為、考えても無駄」と考え、情報を集めようとしていない人が一定数以上いることが考えられます

 こういった複数の要因が絡み合っている為、完全に切り分けることはできませんが、いずれにしても取得しやすい体制や施策づくりは、今後も必要だと考えられます。

4.男性の育児休業は誰かの第一歩が最も大切!

 最後は、少し複雑になってしまいましたが、男性の育児休業取得率が上がらない主な要因としては、「男女ともに男性の育児に対する意識(理解)が足りていない」ことと「男性が育児参加しやすい体制や施策が足りていない」ことが考えられます。

これらの最も簡単な解決策は、「誰かが育児休業を取得すること」と考えられます。

 誰かが取得すれば、おのずと認知度は上がりますし、取得に必要な体制も後からついてくると考えられるためです。

 実際に、社長(や管理者)が積極的に育児休業を推進している会社では、高い取得率となっています。

 まずは、様々な周知策や施策に頭を悩ませる前に、職場の誰かに育児休業を取得させてみてはいかがでしょうか。