【育休とは】育児休暇と育児休業の違い!実は全く別物!?

 小泉環境大臣が取得して話題となった育休ですが、「育児休暇」と「育児休業」の違いについて理解している方は少ないのではないでしょうか。

 本記事では、全くの別物である「育児休暇」と「育児休業」の定義について紹介しています。

1.育児休暇と育児休業の明確な違い

 同じ「育休」と略される「育児休暇」と「育児休業」ですが、そのふたつには明確な違いがあります。

 まずはじめに、「休暇=短期間」「休業=長期間」と説明されている場合も少なくありませんが、育休においてはこの説明は誤りです。

 後述にて詳しく説明しますが、育児休業の条件に該当していれば、例え数日間でも「育児休業」となります。

 これらふたつは、同じものだと勘違いされることも少なくありませんが、法律上は全く異なるものであり、収入面といった取扱いにも明確な違いがあることに注意しなければいけません。

2.育児休暇とは

 まず大前提として、育児"休暇"という言葉は法律上、存在しません。

 つまり、育児"休暇"の明確な定義は存在していないと言っても過言ではありません。

 しかしながら、世の中では育児休暇という言葉が使われることは少なくありません。

 その理由として、法律に"子の看護休暇制度"という"子の養育を目的とした休暇制度"が定められていることが挙げられます。

 この制度は、主に半日~1日単位で使用されるものである為、「休暇=短期間」のイメージに近く、育児"休暇"と言われるようになったと考えられます。

 また、育児休業について詳しく知らない人たちが、「育休=育児休暇」と誤って認識してしまった可能性も考えられます。

 特に、「家庭で育児をしている=お暇を楽しんでいる」と勘違いしているような人たちが誤った認識をしやすいのかもしれません。

2-1.法律で決められた「子の看護休暇制度」

 一般的に、育児"休暇"と言われる「子の看護休暇制度」について、もう少し詳しく紹介しておきます。

 この制度は、法律によって定義されており、就業規則に織り込むことが求められています。

 万が一、就業規則に定められていない場合でも、法律に従って利用することができます。

○小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者は、1年に5日まで(当該子が2人以上の場合は 10 日まで)、病気・けがをした子の看護又は子に予防接種・健康診断を受けさせるために、休暇が取得できる

○半日(所定労働時間の2分の1)単位での取得も可能。ただし、1日の所定労働時間が4時間以下の労働者及び、労使協定により、半日単位での取得が困難と認められる業務に従事する労働者は、1日単位での取得

○労使協定により、所定労働時間の2分の1以外の時間数を半日と定めることも可能

「厚生労働省:育児休業法について」より

 要するに、育児を目的とした短期(しか利用できない)休暇制度です。

 後述する育児休業とは異なり、休暇した際の収入面を支える制度(育児休業給付金制度)はありません。

 法律では、看護休暇に対する処遇 (有給・無給)について定義されていないため、会社によって処遇が異なっています。

 現時点では、無給の場合が多いため、年次有給休暇が残っている場合はそちらを利用した方が良いでしょう。

 但し、「子の看護休暇制度」は子の養育を目的とした際にしか利用できないため、休む頻度が多い場合は、年次有給休暇と組み合わせて利用した方が良い場合もあります。

2-2.法律で努力義務とされている措置制度

 もう一つ、法律で定められているものとして「小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者に関する措置」があります。

○小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者に関して、育児休業に関する制度、所定外労働の制限に関する制度、所定労働時間の短縮措置又はフレックスタイム制等の措置に準じて、必要な措置を講ずる努力義務

○小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者に関して、配偶者出産休暇等の育児に関する目的で利用できる休暇制度を講ずる努力義務

「厚生労働省:育児休業法について」より

 この制度は、子の養育に必要な各制度や措置を会社で定めるように努力しなければいけない、というものです。

 なお、配偶者出産休暇とは、第2子以降出産時に妻が入院すると、第1子を看護する者が居なくなってしまう為、そういったことに配慮した休暇を用意する、というイメージです。

 あくまで努力義務であり、会社毎にその内容や処遇が異なっている為、就業規則等を確認してみると良いでしょう。

2-3.会社独自の休暇制度

 最後に、会社独自で育児を目的とした休暇制度を設けている場合もあります。

 その場合は、就業規則等に「育児休暇」という言葉が使われている可能性もあります。

 会社毎に異なっているため、就業規則等を確認してみると良いでしょう。

3.育児休業とは

 続いて、育児"休業"についてです。

育児"休業"という言葉は、法律によって明確に定義されています。

 一般的に、育休と言えば、こちらの育児休業を意味している場合がほとんどです。

 育児"休暇"とは明確に異なり、休業中の収入面を支える制度(育児休業給付金制度)があります。

 同じ休暇(休業)であっても、育児"休暇"では育児休業給付金制度を利用することができないことに注意が必要です。

3-1.法律で決められた「育児休業制度」

 育児"休業"と言われる「育児休業制度」について紹介します。

 育児休業制度は、育児休業法という法律によって明確に定められており、就業規則等に織り込むことが義務付けられています。

 万が一、就業規則等に定められていない場合でも、法律に従って利用することができます。

 育児休業の定義は、以下の通りとなっています。

○労働者が原則としてその1歳に満たない子を養育するためにする休業

「厚生労働省:育児休業法について」より

 育児休業の利用にあたり、いくつかの条件(勤続1年以上、雇用条件等)はありますが、ほとんどの労働者が利用できます。

 なお、育児休業制度は、1日間だけでも利用できる為、例え1日間であっても、適切な申請を行っていれば育児休業と言えます。

 但し、手続きや申請が少し面倒であるため、短期間の場合には、「子の看護休暇」や「年次有給休暇」を利用するケースが多くなっています。

 そういった背景から、「育児休暇=短期」「育児休業=長期」というイメージに繋がっているのかもしれません。

 また、育児"休業"が、育児"休暇"とは異なるもう一つの点として、休業中の収入が一定程度下がった場合に、雇用保険から育児休業給付金が支払われる点です。

 育児休業給付金制度では、直近6ヵ月間の平均手取額×約8割近くの給付金が支払われるため、収入が全く無くなる育児休暇とは大きく異なっています。

3-2.会社独自の休業制度

 続いて、会社独自に休業制度を用意している場合もあるかもしれません。

 一般的に多い制度としては、法律における育児休業期間をさらに上乗せするというものです。

 例えば、法律では最長2歳までですが、3歳未満や小学校就学の始期まで延長しているケースがあります。

 但し、法律上の休業条件に適応せず、会社独自の休業制度で延長した場合は、育児休業給付金は支払われません(育児休業給付金は、会社から支払われるものではなく雇用保険から支払われるため)。

 会社独自に給与規定などがある場合を除き、収入が無くなってしまうことに注意しましょう。

4.育児休暇と育児休業は似て非なるもの

 育児休暇と育児休業の違いについては以上です。

 同じ育休でも、育児休暇と育児休業が全く違ったものであることは、理解いただけましたでしょうか。

 現代では、育児休業のことを育児休暇と誤って発言してしまった場合、「育児のために休業することを休暇(お暇)だと勘違いしている非常識な人」だと思われてしまう懸念があります。

 ほんの少しの違いですが、意味合いが全く変わってくる為、育児"休業"という言葉を使うように、改めて注意しておきましょう。

 なお、本記事をご覧になって、少しでも育児"休業"に興味を持った場合は、制度やメリット等について別記事にて詳しく紹介していますので、ご覧いただければ幸いです。