【パパママ必見】育休明けに復帰しないで退職や転職しても大丈夫!でも?

 育休(育児休業)に入る前は、「絶対に復職しよう」と思っていても、いざ育休生活に慣れると「復帰せずに退職したい」「復帰早々に転職したい」と考える方は少なくありません。

 また、生活水準を維持するために、「育児休業給付金の返還が必要なのか?」「職場への退職理由はどうすればいいか?」といった退職(転職)を前提とした情報に意識が向きがちですが、それ以前に、退職にはそれなりのリスクがあることを理解しておかなければいけません。

 本記事では、育休明けに復職しない場合の法的な取扱いやそのリスクについて紹介します。

1.育休明けに復職せず退職や転職してもいい?

1-1.育休明けの退職や転職は法的には問題ない

 まず、結論から延べれば、育休明けに退職や転職することは、法的には問題ありません。

 また、育児休業中に給付された育児休業給付金についても、基本的に返還する必要はありません。

 これらは、「厚生労働省 育児休業給付Q&A」にて説明されていますので、参考までに以下に紹介しておきます。

Q1:育児休業を取得予定ですが、育児休業中に在職中の事業所を退職することを予定しています。この場合も育児休業給付の対象となりますか。

 育児休業給付は、育児休業終了後の職場復帰を前提とした給付金です。このため、育児休業の当初からすでに退職を予定しているのであれば、育児休業給付の支給対象となりません。ただし、受給資格確認後に、退職する予定となり、退職した場合は、その退職日を含む支給単位期間の一つ前の支給単位期間までは支給対象となります(支給単位期間の末日で退職した場合は当該期間も含む。)。

「厚生労働省 育児休業給付Q&A」より

Q16:育児休業期間中に、退職した場合は、それまで受給した育児休業給付は返金する必要がありますか。

  育児休業開始時点で退職が予定されている場合を除き、育児休業期間中に退職した場合は、その支給単位期間以降、支給対象となりませんが、それまで受給した育児休業給付を返金する必要はありません。

「厚生労働省 育児休業給付Q&A」より

1-2.職場の理解は得られない可能性が高い

 法的には何ら問題のない育休明けの退職や転職ですが、厚生労働省の育児休業給付Q&Aにも記載されている通り、「職場復帰を前提としたもの」ですので、職場や社会からの理解が得られない(厳しい言葉を浴びせられる可能性がある)ことは覚悟しなければいけません。

 そうは言っても、自分たち家族が望む生活を確保する為に、退職や転職が必要と考えられる場合には、仕方がないこともあります。

 実際に、「厚生労働省:平成30年度雇用均等基本調査」によると、育休明けに退職した割合は、女性10.5%、男性5.0%となっています。

 また、上記の調査データは、育休明け直後に退職したかどうかである為、現実的には「働いてみて継続就業が難しい」と判断して退職せざるを得なかった方を含めれば、さらに増加すると考えられます。

 以下に、一般的に理解の得られにくい退職(転職)理由と、理解の得られやすい退職(転職)理由について紹介します。

  • 【理解の得られにくい退職(転職)理由】
  • ・育児休業給付金を受け取るためだった等、「元々復職するつもりがなかった」と考えられる理由
  • ・残業が多い、勤務先が遠い等、「休業前から想定できた」理由
  • ・夫の協力が得られない、育児負担が大きい等、「出産前から想定できた」理由

  • 【理解の得られやすい退職(転職)理由】
  • ・育児休業を通じて働き方や生活の価値観が変化した等、「育休後に考え方が変わった」とする理由
  • ・子どもや家族(自分含む)の障害や精神疾患といった体調不良等、「育休後に新たに発覚した」理由
  • ・子どもの預け先がどうしても確保できない等、「育休後に新たに発覚した」理由

 基本的には、「ある程度、育休前から想定できた理由」については理解が得られにくく、「育休後にやむを得ず発生した理由」については理解が得られやすい傾向があると言えます。

 但し、理解が得られやすいといっても、会社や同僚から見ればどんな理由であっても、「復職せずに辞める」という結果は変わりません。

 つまり、「結局復職せずに辞める人」というネガティブな印象を持たれてしまうことは、受け入れるしかないかもしれません。

2.育休明けに復職しない場合の注意点

 続いて、育休明けに復職せずに退職(転職)する場合の注意点について紹介します。

2-1.退職や転職の理由を再確認すること

 まず、本当に退職や転職しなければいけないのか、退職や転職をして望む姿が実現できるのか、改めて確認することが大切です。

 例えば、「子どもとの時間を確保したい」と考えて退職を選択する場合は、以下について確認しておかなければ、後になってから「やっぱり再就職しないといけない」となる可能性もあります。

 なお、後述しますが、退職してから再就職することは、圧倒的に不利となることに注意しなければいけません。

  • 【子どもとの時間確保を理由とする場合】
  • ・短時間勤務等、働きながら子どもとの時間を確保する方法はないか
  • ・子どもの就学費用等、経済的な不安はないか
  • ・配偶者の死亡や離婚といった状況になっても育て続けられるか

 また、「職場の理解が無い」と考えて退職や転職を選択する場合は、以下について注意しておかなければいけません。

  • 【職場の理解が無いことを理由とする場合】
  • ・他の会社で理解が得られそうな見込みがあるか
  • ・会社や労働局などに相談しても解決しないか (相談する前に諦めていないか)
  • ・子どもとの時間確保を理由とした場合と同様の問題はないか

 現代の法律では、働きながら子どもと向き合うことができるように所定外労働制限や、短時間勤務といった働き方が用意されています。

 そういった制度は、会社の就業規則に定められているか否かに関わらず利用できる為、本当に働きながら解決できないのか、会社や労働局に相談してみると良いでしょう。

2-2.再就職が難しくなる傾向あり

育児休業や短時間勤務といった制度は、同一事業主に1年以上雇用されていなければ利用できません(「厚生労働省:育児休業法のあらまし」より)。

 あくまで法律上決められている利用条件である為、会社によっては利用できるケースもあるかもしれませんが、働きたい会社で利用できる保証はありませんし、地域によっては会社の選択肢が極端に少なくなる可能性もあります。

 また、第2子以降の出産予定があった場合に、育児休業ができず、退職を余儀なくされる可能性もあります(育児休業給付金は、直近2年間で1年以上雇用保険に加入していなければいけない為、こちらも受給できない可能性があります)。

 再就職してすぐに、短時間勤務や所定外労働制限が利用できなかったり、退職から再就職まで極端に期間があく(子どもの就学後に再就職などとする)と、正規雇用は難しくなり、非正規雇用やパートタイムといった雇用形態となる可能性が高まります。

 また、「前職にて仕事と子育ての両立ができなかった」「前職でも出産直後に辞めていて、第2子出産予定もあるならまた辞める可能性が高い」と判断されると、再就職が難しくなる可能性も高まります。

2-3.再就職時の給与水準が下がる傾向あり

 一般的に選択されやすい「子どもが生まれて一旦退職し、子どもが就学後にパート等として再就職」した場合、収入面でかなりの損失があります。

 参考までに、「ニッセイ基礎研究所:大学卒女性の働き方別生涯所得の推移」では、以下のように紹介されています。

(略)

 女性が大学卒業後、同一企業で働き続けた場合(ケースA)の生涯賃金は2億3,660万円、退職金(2,156万円)を合わせると、生涯所得は2億5,816万円となる。

(略)

 一方、大学卒業後、同一企業で働き続ける女性が、二人の子を出産・育休を2回利用し、フルタイムで復職した場合(ケースA-A)の生涯賃金は2億1,152万円で、退職金(1,856万円)を合わせた生涯所得は2億3,008万円である(ケースAより△2,808万円、△10.9%)。

(略)

 一方、第1子出産後に退職し、第2子小学校入学時にフルタイムの非正規雇用者として再就職した場合の生涯賃金は9,332万円で、退職金(338万円)を合わせた生涯所得は9,670万円である(ケースAより△1億6,146万円、△62.5%)。また、同様に、日本で昔から多い、パートで再就職した場合の生涯賃金は5,809万円で、退職金(338万円)を合わせた生涯所得は6,147万円である(ケースAより△1億9,669万円、△76.2%)。よって、過去の政府推計と同様、最新値で推計しても、出産退職は2億円のマイナスとなる。

(略)

「ニッセイ基礎研究所:大学卒女性の働き方別生涯所得の推移」より

 要約すると、退職せずに短時間勤務等を活用しながら継続就業した場合と、一旦退職して非正規雇用等として再就職した場合では、約2億円近くも生涯賃金に差がでる、ということです。

 つまり、金銭面から見れば、「落ち着いてから再就職するつもり」ならば、「落ち着くまで短時間勤務等を活用して働き続ける」方が圧倒的に有利であると言えます。

3.退職ではなく復職か転職を再検討しよう

 これまでの内容をまとめると、将来落ち着いてから再就職する可能性があるならば、「退職ではなく復職か転職を再検討すべき」と言えそうです。

  • 【復職や転職が有利な理由】
  • ・育児に関する制度利用がしやすい
  • ・再就職に比べて労働環境の相談体制がしっかりしている (再就職時のストレスが無い)
  • ・再就職(非正規)に比べて、最大約2億円も生涯賃金が多い

 小さい企業でなければ、会社内で職場を変える等、育児をしていても働ける場合も少なくありません。

 「お金は少なくても何とかなる」と思いがちですが、配偶者の急な体調不良や病気、子どもが私立大学や海外留学を希望する等、想定よりも支出が増えるケースは少なくありません。

 小さい我が子に向き合える貴重な時間は今しかありませんし、法的には何ら問題はない「育休明けの退職」ですが、"職場への迷惑"を考えるよりも前に、"自分たちの将来を見据えた"冷静な判断が必要だと言えそうです。