育休中は会社や上司と連絡を取り合おう!その頻度や内容について

 男性の育児休業取得率が徐々に増加し始めていますが、それと同時に育休明けの離職率も徐々に高まっています(反対に正規社員の女性の離職率は下がっています)。

 男性の育児休業は、女性と比べて事例が少なく、会社側も取得者側も対応に慣れていない為、一般的に配慮されるようなことが配慮されず、離職率が高まっている懸念があります。

 その配慮のひとつとして「会社との連絡」があります。

 日々の慣れない家事や育児に追われて連絡を忘れていたり、何となく連絡しにくいという理由から、復職直前まで会社と連絡していなかった、というような方も少なくありません。

 しかし、育休中に上司と連絡を取り合うことは、スムーズな復職の為に欠かせません。

 そこで、本記事では育児休業中に連絡すべき内容と、その頻度について紹介します。

1.育休中に上司と連絡を取り合う必要性

 まずはじめに、「厚生労働省:平成30年度雇用均等基本調査」によると、育休明けに復職した割合は、女性89.5%、男性95.0%となっています。

 「ほとんどの人が復職している」ように見えますが、3か月以上の育児休業を取得した割合は、女性96.4%に対して、男性7.0%しかありません。

 つまり、男性は長期間の育児休業取得者がほとんどいないにも関わらず、女性の半分もの離職率となっていると言えます。

 また、当該データは育休明けに復職したかどうかである為、「職場の雰囲気や働き方に適応できずに、その後退職した」人は含まれておらず、育休に起因した離職率はもう少し高いと推測されます。

復職しにくくなる主な原因として、「変化についていけない」「職場の理解の無さ」「会社へ迷惑をかけた罪悪感」の3つが挙げられます。

1-1.会社や職場の変化を把握する

 男女に関係なく、「職場の雰囲気や働き方の変化に適応できなくなる」といった事態を避けるためには、育休中の職場の変化をしっかりと把握しておくことが大切です。

 せっかく会社のことを忘れて休業しているにも関わらず、会社に意識を向けておくことは不本意かもしれませんが、会社や職場の変化を把握しておくことで、あなた自身もスムーズに復職しやすくなりますし、上司や同僚からの信頼を得やすくなります。

 「休業していたから職場の変化は知らなくても仕方ない」と甘えてしまっても仕方ないかもしれませんが、その甘えに対応するのは上司や同僚です。

 口では「休業中は会社のことは忘れて、しっかり家庭や子どもに向き合ってください」と声をかけてくれるかもしれませんが、その言葉に甘えすぎて、会社の負担を増やすことは望ましくありません (無理はいけませんが)。

 会社があなたを支えてくれるからこそ、あなた自身もそれに応える(会社に意識を向ける)努力が必要でしょう。

 また、法律では「不利益な取扱い」は禁止されていますが、「利益のある最大限の協力」は保証されていません。

あなた自身が、会社のために努力する誠意を見せる(スムーズな復職の為に会社や職場の変化を把握する)ことで、上司や同僚からの協力が得られやすくなると考えられます。

1-2.自身や家族の状況変化を連絡する

 それと同時に、自分自身や家族の近況報告をしておくことも大切です。

 特に、復職時の働き方や復職のタイミングといった会社に影響を与える可能性のある事象については、会社側の体制を整えなければいけない場合が多く、速やかな連絡が必要になります。

 会社の体制が十分に整わなければ、希望通りの復職がしにくくなったり、復職後に働きにくくなったりする懸念がある為、あなた自身のためにも、速やかな連絡が必要だと言えるでしょう。

 法律上は、概ね"1か月前まで"の連絡が基本となっていますが、1か月では会社の体制が整わない場合が多く、会社に迷惑が掛かります (迷惑が掛かると復職しにくくなります)。

 また、こういった内容は"連絡しにくい内容"である為、どうしても連絡が遅くなりがちです。

 「授乳も落ち着いて少し眠れるようになりました」「保育園の為に先日から乳離れ練習中です」といった近況報告を普段からしておくことで、少し連絡しにくい事情についても説明しやすくなり、速やかな連絡ができるようになります。

 「変化があった時」だけ連絡するのではなく、「変化のない時」にも連絡するように心がけることで、遅滞なく連絡できるようになり、結果的に職場に迷惑をかけにくくなります。

1-3.スムーズな復職に密な連絡は欠かせない

 上司や同僚と頻繁に連絡を取り合うことで、前述した復職しにくくなる主な原因の3つを取り除くことができます。具体的には、以下の通りです。

  • 【復職しにくくなる3つの原因】
    • (1)職場の変化についていけなくなる
    • (2)職場の理解が無い
    • (3)会社へ迷惑をかけた罪悪感がある
  • 【復職しにくくなる3つの原因への対策】
    • (1)上司や同僚と頻繁に連絡を取り合うことで、職場の変化を把握できる
    • (2)自分自身の近況を頻繁に伝えることで、あなた自身に対する理解を深められる
    • (3)上司や同僚と頻繁に連絡を取り合うことで、連絡遅れを減らし、自分が原因となる迷惑を無くすことができる

 上記の通り、上司との「密な連絡」を心掛けることで、復職しにくくなる主な原因の3つを解消することができます。

2.育休中に上司に連絡する内容とその頻度

 続いて、実際に上司と連絡を取り合う際の内容とその頻度について紹介します。

2-1.会社の近況確認に上司や同僚への気遣いを添える

「厚生労働省:育休復帰支援プラン」では、育児休業中の連絡について、以下の通り記載されています。

●○休業中の情報提供

 企業は、育休取得者と定期的に連絡を取り、部署の定例会資料や業務マニュアル等を用いて、会社全体の組織体制やルールの変更、所属する部署や関係部署に関する変化、職場復帰後に担当する業務の進捗状況を伝えましょう。育休取得者も、自身の状況を定期的に企業に報告するようにし、復職に備えましょう。

「厚生労働省:育休復帰支援プラン」より

 上記では、企業側から育休取得者に対して情報提供することが推奨されていますが、実際には、これら資料の存在や、情報提供の必要性について理解している上司は多くありません。

 職場初の育児休業であったり、これまでの慣習に基づいて対応している場合には、これら資料の存在すら把握していない可能性が高い為、あなた自身からこういった資料の存在を上司に伝えることも有効です。

 スムーズな職場復帰や、自身の能力アップの為に、会社の近況や変化が分かる資料の送付をお願いすることで、あなたの会社に対する誠意を伝えることもできます。

 そして、そういった情報交換の依頼と同時に、引き継いだ業務の進捗など、職場の近況確認をすると良いでしょう。

2-2.自身の近況報告に上司や同僚への感謝を添える

 また、会社の近況確認に合わせて、自身の近況報告と上司や同僚への感謝の気持ちを伝えることも大切です。

 上司や同僚は、自分たちが支えている家庭(あなたの家庭)の状況を知ることで、多少の負荷増加にも、やりがいを感じやすくなるためです(全く知らない家庭よりも、赤ちゃんの成長や楽しみ、悩みを知っている方が協力しやすくなります)。

 また、感謝の気持ちを伝えられて嫌な気持ちになる人はいません。

 「育休は権利だから」といって、感謝を伝えることを嫌がる方もいますが、今後も協力的に接してもらう為に、感謝の気持ちを伝えるようにしておくと良いでしょう。

 なお、メールする際の具体例を、以下に紹介します。

【上司に近況確認と報告、感謝を伝えるメール例】※宛名等は省略しています。

 この度は、私の育児休業にあたり、ご協力ありがとうございます。おかげさまで母子ともに健康に過ごすことができています。

徐々に赤ちゃんとの生活にも慣れ始め、少しずつ落ち着いた時間を持てるようになり、私の引き継いだ業務や職場の状況について、気になっています。

また、厚生労働省にて提供されている「育休復帰支援プラン」を確認したところ、職場の状況や変化を把握しておくことが、円滑な職場復帰に繋がるとの記載もありましたので、それら情報把握に努め、円滑に職場復帰できるようにしておきたいと考えています。

そこで、お手数でない範囲で、職場の情報提供について、ご協力いただけると幸いです。

関連メール等の転送で問題ありませんので、よろしくお願いいたします。

 文面にこだわらず、「情報提供の依頼」「円滑な職場復帰の意思」「感謝の意思」を伝えるようにすると良いでしょう。

 また、抵抗のない範囲で「子どもの名前」や「子どものしぐさ(夜泣きの有無等)」といった、子育ての情景がイメージできる情報も添えると良いでしょう。

2-3.1~2か月に1回を目安にメール連絡する

職場の状況や自身の近況に変化がない場合でも、1~2か月に1回程度、"あなたから"メール連絡するように心がけましょう。

 「メールだと失礼になりそうだから電話で…」と考える方もいますが、あなたが電話したタイミングに上司が出られなかった場合、上司からの折り返しを待たなければいけません。

 さらに、上司が折り返す場合には、「家事をしているかも」「授乳をしているかも」等、気を使わなければいけませんし、反対にあなた自身が電話に出られなかった場合に、面倒なことになります。

 また、「勤務中は仕事の邪魔になるし…」と考えて、勤務時間外に電話してしまう方もいますが、育休取得者を支えることはれっきとした上司の仕事ですので、勤務中に連絡することが望ましいでしょう。

 これらを考慮すると、急ぎの内容でない限り、勤務時間やお互いの都合を気にしなくてよいメール連絡が適切だと言えるでしょう。

2-4.復職2か月前を目安に面談を依頼する

 続いて、復職2か月前には、具体的な復職の流れや今後の働き方の認識合わせをするために、上司との復職前面談を依頼しましょう。

 なお、復職前面談は、「厚生労働省:育休復帰支援プラン」の中でも推奨されています。

●○復職前面談

 仕事と育児の両立にあたって配慮してほしいことや今後の働き方について、管理職と話し合う機会を設けましょう。

「厚生労働省:育休復帰支援プラン」より

 面談時には赤ちゃんを連れていると集中できない可能性がある為、一時的に祖父母や夫に預かってもらうと良いでしょう。

 もし、周囲に預かってもらえる人が見つからない場合は、一時保育施設(「一時保育 ○○市」等で調べると出てきます)を利用するか、良く寝ている時間帯に面談を設定してもらうようにしましょう。

 また、この時点までに、「復職後にどう働きたいか」「短時間勤務等の育児関連制度に関する疑問」を明確にしておき、上司に相談、確認できるようにしっかりと準備しておきましょう

3.休業中も少しだけ職場のことを思い出そう

 育児休業中に会社と連絡を取り合うことは、お互いの安心や信頼感を得ることにも繋がっています。

 育児休業中は仕事のことを忘れて、家庭に集中したい気持ちも理解できますが、1~2ヵ月に1回30分だけでも、自身の復職の為に、上司や同僚と連絡するように心掛けると良いでしょう。