【体験談】多忙な職場で育児休業を決意するも欠員補充されなかった話
長時間労働が慢性化し、社員の9割以上が常に繁忙感を感じているような多忙な職場で、育児休業を決意した筆者の体験談を紹介します。
1.育児休業を決意した時の職場環境
まずは、筆者が育児休業を決意した時の職場環境 (労働環境)について、紹介します。
1-1.長時間労働が慢性化していた
筆者が、育児休業を決意した職場では、完全に長時間労働が慢性化していました。
昨今の社会的背景から、具体的な数字は伏せますが、会社全体から見ても明らかに飛びぬけて残業時間が多く、労働組合からも常に目を向けられているような職場でした。
また、会社を支える基幹的な位置付けの職場である為、労働組合がいくら指摘しても、劇的に改善されることはありません。
法律上、大きな声では言えませんが、繁忙期には1~2ヵ月間以上、休日は無くなり、いつ出社して退社したのか分からなくなるほど、過酷な労働環境となることも珍しくありません (但し、ここ数年でコンプライアンス意識が高まり、かなり改善され始めています)。
1-2.社員の9割以上が繁忙感を感じていた
そのような労働環境である為、社員の9割以上が「繁忙感に追われて優先順位の高いものだけを処理しても追いつかない」と答えていました。
本来は、どれだけ忙しくても限られた資源 (人材)で実行するしかない為、優先順位順に実行し、追い付かない部分は切り捨てるしかありません。
そこで切り捨てられた業務が問題となる場合は、業務をこなすことができる体制に見直す、ということが自然な流れだと思います。
しかし、そのような職場環境を経験しながら出世した人が上層部に多い為、「これまで大丈夫だったから、体制ではなく、人材を強化しろ、効率化しろ」の一点張りになっていました。
効率化を進めるために、「一時的に体制の補強をしたい」と中間管理職がどれだけ懇願しても、「中間管理職の能力不足、制御不足」と言われてしまうような環境でした。
1-3.通常の5倍以上の業務を抱えていた
さらに、過去の人たちが残した負の遺産 (優先順位で切り捨てられた業務)が積み重なり、現在の職場の業務量は、他の職場の5倍以上となっていました。
正確な数字は避けますが、通常の職場の1人当たりの業務負担を1億円上限とした場合、筆者の職場の1人当たりの業務負担は5億円を超えるような状態でした。
それだけ業務量が増えている為、トイレの回数を減らし、昼食中も業務を進め (昼食中に会議があることも)、数分のロスすら出せませんでした (当然、それでも終わりませんが…)。
2.育児休業を伝えた時の会社の上層部の反応
そのような職場環境の中でも、筆者はさらに業務量が多く、各計画を組み立てたキーパーソン的な存在となっていました。
たった1人の欠員でも大きな影響を及ぼす職場体制の中で、キーパーソン的な存在である筆者が育児休業すれば、その影響は非常に大きいものとなります。
しかし、筆者としては、それを分かったうえで職場の上司や同僚の同意を得て、育児休業することを決意しました。
育児休業しようと考えた背景は、別記事にて詳しく紹介していますが、その中に「業務体制のリスク」を上層部に伝えたい思いがありました。
誰かが育児休業しただけで、基幹的な位置付けの職場の機能が失われる可能性がある、ということを上層部に実感してほしかったのです。
これだけでは、クーデターのようにも聞こえますが、実行の1年以上前から計画を立て、業務の棚卸や可視化を進めていたので、実際には引継ぎ相手さえ確保できれば、ほとんど影響がでない状態としていました。
2-1.中層部までは欠員補充が必要と判断していた
当然ながら、そのような労働環境で欠員が出れば業務が回らなくなる為 (既に回っていないですが…)、中間管理職 (課部長クラス)としては、欠員補充が必要と判断していました。
その為、上司からは「欠員補充するから、その計画で進めてくれ」と伝えられており、その言葉を信じて準備を進めていました。
2-2.上層部が欠員補充を認めなかった
しかし、ある時から雲行きが変わりました。
上司から突然、「話があるから」と呼び出され、「まだ交渉中だが、欠員補充は難しそうだ。でも残った人員で何とかするから、育児休業はしてもらって問題ない」と言われました。
当然、残った人員で何とかすることはできるはずもなく、どうしても納得できない為、その理由を詳しく上司に確認しました。
すると、上司からは「私も交渉しているが、上層部 (事業部長クラス)が認めない。ただの制度利用であり、そういった欠員が出ることも想定された体制になっているはずだ、と言われている」という回答が返ってきました。
2-3.いつまで経っても結論が出ない日々
それにはさすがの中間層 (部課長クラス)も納得していない様子であり、何度も交渉を繰り返してくれていましたが、上層部 (事業部長クラス)は、「認めない」の一点張りでした。
私は、育児休業開始前の6ヵ月以上前には、会社に相談していたにも関わらず、直前になっても、その交渉が折り合うことはありませんでした。
職場の過酷な労働環境を見ている筆者からすれば、欠員補充なしでは業務が回らなくなることは明らかであり、会社に対する不信感が募る一方でした。
「私が必死に走り回っていた業務は、別にできなくても良い業務だったのか」「部下が悲鳴を上げていても、話も聞かない会社なのか」と、次から次へと不信感は高まりました。
3.育児休業の欠員補充を認めてもらう為にとった行動
筆者としては、育児休業を後押ししてくれた職場に、これ以上、負担をかけるわけにはいかないと思い、退職覚悟で直談判することを決めました。
3-1.最下層の筆者が中層部に直談判した
まずは、中層部 (部課長クラス)に直談判することから始めました。
中層部 (部課長クラス)は、元々欠員補充に賛成している為、スムーズに話は聞いてくれましたが、完全に諦めムードが漂っている状態でした。
これまでも様々な理由で、何度も何度も人員補充を要求し、全て却下されている為、今回もダメだろうと、薄々感じていたのだと思います。
3-2.最下層の筆者が上層部に直談判した
そこで、私は、上層部 (事業部長クラス)に直談判することを決めました。
ただ、上層部にもなると、同じ地域で働いていないので、まずはメールで思いを直接伝えることにしました。
特定が怖いので、あまり詳細には記載できませんが、上層部に直談判した内容の趣旨としては、以下のようなものでした。
- 【筆者が上層部に伝えた内容】
- ・欠員補充が無ければ、到底業務は回らない
- ・回らない業務負担をかけても同僚を苦しめるだけになる為、引継ぎできない (しない)
- ・私が担当している業務は、全て引継ぎできず、業務が止まる
- ・それでも良いと判断するなら、この会社にやりがいは感じられない
脅迫に近い内容となってはいけない為、基本的には、もう少しオブラートに包んでいたと思います。
また、本来、欠員補充は会社側の責任である為、最下層である私がこのようなアプローチをすることは、望ましいことではないと思います。
それでも、私が行動しなければ、職場の上司や同僚に大きな負担が掛かることは明らかでしたので、行動せざるを得ませんでした。
3-3.多くの支援者を味方につけた
また、退職覚悟とは言いつつも、事前に多くの支援者を味方につけていました。
具体的には、人事部や労働組合、他部署の部課長クラスに事前に相談して、上層部のメールのccに一緒に宛先を入れさせてもらいました。
おそらく、一番効果があったのは、人事部と労働組合の支援だと思います。
特に人事部は、「育児休業がしにくい職場を作ることは絶対に認めない」というスタンスを強く保っていた為、「育児休業で職場に多大な負担がかかることで困っている」という状況は見逃せないものだったようです (会社自体は、ホワイト企業ランキングで常に上位になるほどのホワイト企業なので)。
それらの効果があったかどうかは分かりませんが、そのメールの直後 (半日後)に、欠員補充されることが決まりました。なお、明らかに欠員補充までの動きが早かった為、裏で何らかの働きかけがあったものと推測されます。
そのうえ、今まで絶対に人員を補充してこなかった上層部が何を感じたのかは分かりませんが、+3人もの人員補充をしてくれることになったのです (但し、2人は短期のピンチヒッターで別の背景もあり)。
そうして、何とか筆者の育児休業による欠員補充がなされ、無事に引継ぐことができました。
実際には、欠員補充が決まったのが、休業開始前ぎりぎりであった為、かなりバタバタしましたし、休業中にも何度も業務問い合わせは発生しましたが、業務が停止するほどの多大な影響は避けることができました。
4.欠員補充は職場の為にも、休業者の為にも欠かせない
育児休業によって、職場に過度な負担が掛かれば、職場全体が疲弊しますし、そうなると育児休業者自身も後ろめたさから復職しにくくなります。
つまり、育児休業による欠員補充は、職場の為にも、休業者の為にも欠かせないと言えると思います。
筆者のように、上層部と直接争うことはオススメしませんが、職場に迷惑をかけない為に、身を削って行動したことが評価され、職場からの信頼と後押しはより高まったと思います。
ただ、筆者の場合は、人事部や労働組合、中間層など、上層部以外の強力な支援者が味方をしてくれたおかげで、何とか丸く収まりましたが、そういった強力な味方がいなければ、私に復職先はなかったと思います (育児休業は強行していたと思います)。
世の中では、まだまだ会社全体に味方がいないような環境で、育児休業を諦めざるを得ない男性も少なくないと考えられます。
その為、そういった会社で働く男性を、社会全体で支援し、男性の育児進出を支えていかなければいけないと思っています。
本記事による発信が、誰かの意識を変え、社会全体、会社全体、職場全体の支援力が高まることに繋がれば、幸いです。