男性の育児休業あるある!心境変化から周囲の反応まで
まだまだ前例の少ない男性の育児休業ですが、そんな男性の育児休業におけるあるあるを紹介したいと思います。
実体験を含むあるあるである為、一部偏った内容が含まれている可能性があるかもしれません。生温かい目で見逃して頂ければ幸いです。
1.育児休業期間が短い男性が言いがちな発言あるある
本記事では、「少なくとも6ヵ月以上の育児休業を取得した男性におけるあるある」を紹介しています。
しかし、6ヵ月以上の育児休業を取得する男性は、年間5,000人未満であり、圧倒的に母数が少なく、共感できる人がほとんどいません。
そこで、比較的に母数の多い短期間の育児休業を取得した男性が言いがちな発言から紹介したいと思います。
但し、短期間の育児休業を取得した男性よりも、そういった男性が身近にいる周囲の人たちに共感が得られやすい内容となっています。
1-1.目に見える育児だけ経験して「本当に大変だったわ」と胸を張る
SNS上でもたびたび取り上げられますが、短期間の育児休業を取得した男性は、オムツ交換や授乳、寝かしつけといった目に見える肉体労働だけを経験して、育児の大変さを理解した気になりがちです。
特に「夜も全然眠れないし大変だった」「ミルクあげてオムツ変えて寝かしつけて、本当に時間がない」といった発言を良く耳にします。
これ自体は育児の大変な一面でもある為、決して否定はしません。しかし、これらはあくまで育児の大変な"一面"でしかないことを忘れてはいけません。
育児には、乳幼児の大量の予防接種、保育園や幼稚園の事前調査や準備、慣らし保育、生活習慣の適正化、発達遅れや様子の確認などといった、目に見えない労働がいくつもあります。
育児休業期間が短い男性の多くは、そういった子どもの管理面における見えない育児を配偶者に任せっきりで、表面的な育児だけを経験している場合がほとんどです。
厳しく言えば、「育児」ではなく「保育」や「看護」といったことだけを経験しているとも言えるかもしれません。
これは厚生労働省の調査結果からも明らかであり、育児休業の有無によらず、子どもの管理面に関わっている男性は非常に少ないことが分かっています。
なお、本格的に育児を経験した人たちが声を揃えて発言することは、「育児の負担は、身体的負担から精神的負担にシフトする」ということです。
ここで言われる精神的負担とは、前述した子どもの成長管理や自身のキャリアへの影響等が該当します。
言い換えれば、乳幼児の時点で肉体的負担だけを経験して胸を張っていた男性は、子どもの成長に伴って育児でやることが無くなっていくことになります。
1-2.数日間のバタバタだけで「世の女性を尊敬する」と理解した気になる
また、たった数日間から数週間のバタバタ期間を経験しただけで、「こんな大変なことをする世の女性たちを尊敬する」と発言することも多く見られます。
前述したように、育児の大変さの本質を理解できているはずがない為、表面的に尊敬という言葉を使っているに過ぎません。
この発言の裏には、「自分はしたくないから、尊敬しておいてお任せしたい」という意図が間違いなく隠れています。
もちろん全く尊敬の意がないとまでは言いません。
しかし、心から尊敬するほど本当に大変だったと感じるのであれば、それだけ大変なことを配偶者にお任せして育児休業を切り上げるはずがありません。
「こんなに大変なこと良くできるね~」と言いながら、育児休業を早々に切り上げている時点で、その尊敬の度合いに違和感があることは間違いないでしょう。
1-3.たった数日間で「育児やってます」というイクメン感を出す
最近は減少傾向にあると考えられますが、前述したような発言を繰り返し、「自分は育児もする男性ですよ」というイクメン感をアピールする方もいます。
本格的に育児を経験している人であれば、育児も仕事も両方を100点満点でこなすことはできない、ということを良く知っています。
普通に仕事をこなしながら「育児も完ぺきにやってますよ~」とアピールをしている男性に対しては、影ながら「育児の本質を理解していないのだろう」と冷たい目線が向けられていることも少なくありません。
長年に渡って仕事と育児の両立に向き合ってきた女性たちですら、両方を100点満点でこなすことは実現できていません。
何らかの課題や能力不足を感じながら、日々切磋琢磨しているのです。
私の個人的な経験では、育児休業期間が長い男性ほど、「育児しています」とは堂々と胸を張って言えない傾向があるように思います。
育児休業を通じて、育児における自分の至らない点や力不足な点を理解しているからこそ、「まだまだ育児しているとは言えない…」と感じるのです。
2.男性の育児休業で起きる心境の変化あるある
続いて、長期間の育児休業を取得した男性に起きる心境の変化「あるある」について、紹介します。
2-1.家事や育児に対する抵抗感が無くなる
まず第一に、家事や育児に対する抵抗感が無くなります。
育児休業して家事や育児に専念していない場合、配偶者に任せっきりでやり方を把握していない家事や育児があったりします。
例えば、一般的な洗濯のやり方は分かっていても、柔軟剤や洗剤の使い分けや、色物や白物の洗い分け等、といった個人のこだわりによるものは意外と分からないものです。
そういった妻のこだわりを知らずに、型物に柔軟剤を使ってしまった日には、叱咤激励が浴びせられることもあるでしょう。
こういった叱咤激励が何度か続くと、「協力してもどうせ迷惑かけるからやめておこう…」と家事や育児に抵抗感を持つようになりがちです。
妻ルールの共有不足によって、家事や育児にこのような抵抗感を持っている男性は少なくないと考えられます。
しかし、育児休業を通じて妻ルール(又は夫ルール)を共有する機会を持つことができれば、家事や育児に対する抵抗感が少なくなるように思います。
2-2.平日に出掛けた時の周囲の視線が気になる
また、平日に家族全員(又は男性と子ども)で出掛けた際の周囲の視線が気になります。
観光地や旅行先であれば、「平日に休みを取ったのかな~」程度である為、特に問題ありませんが、問題は定期的に訪れるスーパーや公園です。
平日に頻繁にスーパーや公園に訪れていると、「あの人はどんな職業だろう…」という様な視線が向けられることがあります。
実際に平日に公園に行って男性を見かけることはほとんどありませんし、見かけたとしても全体の1割未満です。
特に気にしなければ気にならないことですが、何となく「無職と思われていないかな…」というどうでもいい不安を抱きがちです。
2-3.休日に子どもと遊ぶパパを見つけるとほっこりする
その反面、休日に子どもと一緒に出掛けているパパを見つけると、心がほっこりします。
個人的な偏見かもしれませんが、休日にパパと出掛けている子どもたちは、何となく平日の時よりもワクワクしているように見えます。
少しだけ身体の動きが大きかったり、ニコニコ飛び跳ねていたりと、普段よりも遊ぶことに意識が向いているのです。
もちろん反対に、「パパは嫌だ、あっちに行ってて」と言われている悲しい場面を目にすることもある為、一概には言えませんが…。
いずれにしてもそういったパパの姿を見て、「少ない休日で時間を確保してて偉いな~」「形は違えど努力しているんだろうな~」なんて感じることもあります。
2-4.曜日や大型連休の感覚が失われる
そういった人目や周囲の男性の動向も、育児休業に入って数ヵ月が経つと気にならなくなります。
それと同時に、曜日や大型連休といった社会人の一般的な感覚が失われ始めます。
前半は「あれ?今日は何曜日だっけ?(曜日を気にする)」、中盤は「今日は○曜日だったか…(曜日に気付く)」、後半は「明日はこれをしよう(曜日に意識がない)」と変化していきます。
友人の飲み会に誘われて、日程を再確認してみると「あっ、金曜の夜だったんだ」なんてことに気付くほどです。
曜日や大型連休の感覚が薄れていくにつれて、「本当に仕事復帰できるのか…」という不安が強くなっていくかもしれません。
但し、ドラマやテレビをよく見る方であれば、ある程度の曜日感覚は残るかもしれません。
2-5.家事や育児に慣れると怠慢な部分が露出する
最初の頃は、家事や育児の抵抗感が無くなり、「家事も育児もできるぞー!」と高いモチベーションを持っていますが、慣れてくると徐々に怠慢な部分が露出し始めます。
「洗濯よりも皿洗いの方が面倒くさい」「オムツ交換より授乳の方が面倒くさい」といった自分なりの家事や育児の大変さランクが出来上がります。
そのランクが出来上がった上で、「私が洗濯やるから皿洗いよろしく」となることもありますが、そういった場合に「ああー…、皿洗いかー…」と感じるようになりがちです。
家事や育児の大変さを知り、自分自身の成長も望めなくなると、家事や育児が単なる作業と化し、急にやる気が出なくなるのです。
ここまでくると、家事や育児の単調な作業を継続することがどれだけ大変なのか、感覚的に理解できるようになります。
肉体的な労働よりも単調な作業を毎日繰り返すという、精神的な負担を身に染みて感じられるはずです。
2-6.仕事以外の新しい働き方を探したくなる
そうこうして家事や育児に慣れてくると、仕事以外の新しい働き方を探したくなってきます。
これまで学校や職場で何らかの学びや経験をし続けてきた人ほど、育児休業中盤からの平凡で単調な生活に物足りなさを感じ始めるはずです。
自然と何らかの働く手段を探し始めるのです。
まず初めに手を出しやすいのは、隙間時間で始められて参入障壁の低いブログ(アフィリエイト)やプログラミング、Youtube等です。
いずれも成果が得られるまでに非常に時間がかかる為、ほとんどの方が途中で挫折するはずです。
2-7.仕事に対するやる気が新入社員並みになる
そして、雇用されている(出社するだけで安定して給与が貰える)ことの素晴らしさを再認識します。
場合によっては転職や異動を伴うことはあるかもしれませんが、仕事に対するやる気が新入社員並みにまで回復する傾向があると感じます。
「可愛い子どもを育てる為」「お世話になった職場への恩返し」「働きたい欲求のはけ口」等、その原動力は様々です。
いずれにしても仕事と少し距離を置くことで、働く意欲が高まる傾向があるように感じます。
2-8.ジェンダー平等の道のりの長さを実感する
こうして育児休業における心境の変化を感じると、ジェンダー平等の道のりの長さを改めて実感する方も少なくないはずです。
相変わらず幼稚園や病院は、「お母さんたちは~…」と女性による育児を前提として接してきます。
お父さんたちは、仕事の片手間で育児を手伝っている程度だとして扱われます。
世の中全体で、まだまだ「女性が家庭を守り、男性が外で働く」という風習が根強く残っています。
意識的な行為に限らず、無意識にこういった風習が残っている場面も多くあります。
例えば、システムキッチンの換気扇フードの高さが女性に合わせて165~175cm程度で作られていることや、オフィスの作業着が男性の体形に合わせて作られていること等が挙げられます。
そういったことに気付く人が増えることで、ジェンダー平等に一歩ずつ近付くものの、現実的にはまだまだ長い道のりなのだと実感することでしょう。
3.男性の育児休業で起きる周囲の反応あるある
続いて、男性の育児休業で起きる周囲の反応あるあるについて紹介します。
3-1.第一声の反応は必ず「えっ!?」という驚嘆
まず第一に、育児休業を周囲に伝えた際の第一声は必ず「えっ!?」という驚嘆だということです。
会社の同僚や昔の友人、両親や保育園の先生等、様々な関係者がいますが、必ずと言っていいほど第一声は「えっ!?」です。
決して悪意があるわけではなく、圧倒的に母数が少ないせいで、想定する選択肢の中に「男性の育児休業」が入っていないのです。
さらに「1年間です」等と長期間であることを伝えると、もう一度「えっ!?」という反応が返ってきます。
3-2.配偶者や家庭の事情に探りを入れられる
そして立ち続けに、「妻が働いているの?」「どうして育児休業したの?」という質問が飛んできます。
こちらも決して悪意があるわけではなく、周囲に前例が無いことからくる素直な疑問から生まれた質問だと考えられます。
極端な例で言えば、ほとんどの人が洗濯機で洗濯をしている現代において、洗濯板で洗濯している人が目の前に現れたようなイメージです。
まず第一に「えっ、何で洗濯板なの!?」と感じることと同じように、「何で男性が育児休業なの!?」と感じるのです。
人間は、少数派の選択をする為には、特別な理由が必要だと考えがちです。
自分とは異なる選択をした相手の考え方を知りたいという危機管理能力の一種なのかもしれません。
3-3.今と昔の比較を1度は聞かされる
そういった会話を横から聞いていた年配の方から、「昔の男性は抱っこすらしなかったのにね~…」といった昔話を聞かされることもあります。
おそらくこういった昔話を一度も聞かされていないという方は一人も居ないといっても過言ではないのではないでしょうか。
「最近の男性は抱っこして連れて偉いね~…」等と様々な場面で褒められる為、ついつい自信が出てきて、イクメン感を出してしまうこともあるかもしれません。
但し、その程度でイクメン感を出していると世の女性たちから厳しい言葉を頂くことになる為、注意しておく必要があります。
3-4.会社の同僚や後輩からはヒーローのように扱われる
また、会社の同僚や後輩といった「これから育児制度を利用する機会があるであろう人たち」からは、称賛の声を頂くことが多くあります。
私個人の例で言えば、「これで私も育児休業できる!」「働き方を見習いたい!」「第一号に続いて全力で支えます!」といった声を頂いています。
全員が必ず称賛してくれるわけではありませんが、一部の人たちからは、職場の働き方の選択肢を増やしたヒーローのように扱われることでしょう。
3-5.会社の先輩や上司からは問題児のように扱われる
反対に、会社の先輩や上司といった「これから育児制度を支える立場にあるであろう人たち」からは、問題児のように扱われます。
厚生労働省は、イクボス(育児に理解のある管理職)プロジェクトを掲げているものの、注釈を入れなければ意味を理解してもらえないほど、ほとんど普及していない状況です。
育児休業という前例を作ることで、後に続く人たちが増え、職場の体制や仕組みを改善しなければいけなくなることは少なくありません。
慣れた環境でのらりくらりと働きたかった先輩や上司は、そういった業務負担が増える為、「余計なことをしてくれた…」と感じてしまうのです。
何とか後に続く人を減らそうと、「評価を下げてやろう」「嫌がらせをしてやろう」といった行為を行うこともあるかもしれません。
こういった不利益な取扱いは、法律によって禁止されているものの、現実的には大なり小なり存在しています。
理解のある上司が居ないわけではありませんが、関係者から何らかの不利益を受けることは少なくないでしょう。
3-6.悪意のない無意識のパタハラを受ける
また、前述したように悪意があるハラスメントばかりではなく、無意識のハラスメントを受けることもあります。
例えば、前述した「何で男性が育児休業するの?」という発言は、友人の発言であれば問題ありませんが、上司の発言であればハラスメントに該当します。
上司に悪意は無く、無知からくる純粋な疑問だったとしても、ハラスメントは受けた側の受け取り方に依存します。
「何で男性が育児休業するの?」という発言には、「男性は仕事で成果を出すべきだろう」「妻は育児ができない人なのか」といった潜在的な攻撃が隠れています。
その他、「妻は何をしているの?」「職場に迷惑がかかることはどうも思わないの?」「1年も必要なの?」といった発言も同様です。
これらは受け取る側の受け取り方にもよる為、受け取った側もそのパタハラに気付いていないケースもあります(その場合はパタハラと言わないわけですが…)。
いずれにしても悪意のない無意識のパタハラ(になりかねない発言)を受けることは少なくないでしょう。
3-7.平日の買い物でやたらと話しかけられる
平日の買い物では、とにかく高齢者と女性が多いです。
女性から話しかけられることはほとんどありませんが、赤ちゃんを連れていると高齢者からはやたらと話しかけられるようになります。
赤ちゃんを連れているだけでも話しかけられる機会が増えるのですが、男性が連れていることがプラスされて、さらに話しかけられます。
高齢者の活力に繋がる良いことなのですが、今のご時世を踏まえると衛生的にはあまり望ましくないかもしれません。
3-8.意外な相手の理解の早さに驚かされる
たまに近付いてくる高齢者に混じって、定年退職された会社のOBの方が近付いてくることがあります。
「平日のこんなところで何をしているの?」と話しかけられるので、「1年間の育児休業頂いてますー」と返すと、「あ、ほんとー!そりゃいいことだね、頑張んなよー!」と返ってきて驚かされます。
直接的に関係ないからなのか、仕事が無くて心にゆとりがあるのかは分かりませんが、不思議とスムーズに理解される方がほとんどです。
何よりもほとんど育児に関わってこなかった自分の父親に話した際に、「挑戦的な行動でいいね、存分に楽しめばいい」と返ってきたことが一番驚きでした。
実際の育児を経験して年を重ねるごとに、もっと育児に関わっておくべきだったという後悔に近い反省が増えていくのかもしれません。
3-9.育児休業の気配もなかった職場で後に続く人が続出する
最後に嬉しい変化として、育児休業の気配すらなかった職場でも、後に続きたい意向を示す人が続出し始めることがあります。
育児休業で懸念される多くは、「職場の理解の無さ」と「出世や仕事への影響」です。
まず第一に、入社して数年も経てば、自分がどこまで出世できそうかはおおよそ予想できます。
多くの人は課長や係長止まりである為、たった1年間育児休業したところで、実質的には出世への影響はほとんどありません。
もう一つの「職場の理解の無さ」は、誰かが育児休業してくれたことで明らかとなり、その際の待遇を見ることで判断できます。
さらに、育児休業から復帰した同僚がいれば、間違いなくその同僚は味方である為、誰も味方が居なくなる不安はありません。
こうして育児休業で懸念される二大問題が解消され、育児休業が選択肢の一つに挙がるようになるのです。
後に続く人が増えれば、復帰した人も働きやすくなり、お互いWin-Winな関係性を築くことができます。
4.会社の反応は多種多様でケースバイケース
最後に、実際の会社の反応は多種多様でケースバイケースです。
私自身も育児休業前に様々な調査をして、事前に身構えていましたが、ほとんどが想定外の反応でした。
協力してくれると思っていた管理職から厳しい発言を受けたり、批判されると思っていた管理職や同僚から激励されたりと、予想は外れるばかりでした。
仕事では、責任感を持ってテキパキ動く人も、プライベートではダラダラとマイペースに過ごす方もいます。
仕事の様子だけでは判断できない各個人の内面があるのだということに気付かされたように思います。
SNS上や本記事で紹介されているパタハラを懸念して、育児休業を諦めてしまうことなく、まずは会社に相談することから始めて頂きたいです。
育児休業しても後悔しないかどうかは、育児休業してからの行動で変えることができます。
ぜひとも育児休業を前向きに検討し、さらには復職後の育児制度の利用まで検討して頂ければ幸いです。