【男性必見】会社に長期育児休業を伝える時の注意点!タイミング等…

 2019年度の男性の育児休業取得率は、「7.48%」まで上昇していますが、3か月以上の長期取得者は、そのうちの約4%(全体の0.3%)と非常に少数です(「厚生労働省:雇用均等基本調査」より)。

 その為、社内や職場初の長期取得者となり、周囲に参考となる事例のないケースも少なくありません。

 そこで、本記事では、社内初の長期(1年間)育児休業を取得した筆者の経験を基に、男性が会社に長期育児休業を伝える際の注意点(タイミングや伝え方)を紹介しています。

 なお、本記事では、主に会社を敵に回さない為の注意点を主に説明している為、育児休業を取得する前の準備事項等に関しては、「【後悔しない】男性が育児休業する前にしておくべき8つの準備事項!」をご覧いただければ幸いです。

1.男性の育児休業に対する会社の理解度を確認する

 まずはじめに、自分が勤めている会社の男性育児休業の理解度(取り組み度)を確認しておきましょう。

 会社の理解度によって、取得時の注意点や取得に必要な労力も変わりますので、以下を参考にひとつひとつ時間をかけて確認しておくと良いでしょう。

1-1.育児に関する制度が就業規則に明記されているか

 はじめに、育児休業に関する制度が就業規則に定められているかを確認してください。

 単に「育児休業できる」と記載されているだけではなく、休業中の査定や給与、賞与の扱い、期間といった詳細までしっかりと定められているか確認しておきましょう。

 なお、育児休業そのものは法律によって定められているため、例え就業規則に定められていなかった場合でも取得できますが、給与や賞与の扱いは会社によって異なります。

就業規則に記載が無ければ、人事担当などと相談して、ひとつひとつ決めていかなければならない為、かなりの労力が必要となる可能性があります。

 令和元年度の「厚生労働省:雇用均等基本調査」によると、500人以上の規模における事業所においては、99.8%の事業所で育児休業に関する制度が就業規則で定められているとなっていますが、30人未満の事業所においては、76.1%まで下がります。

 大きな企業であれば、あまり心配する必要はないかもしれませんが、詳細まで定められていない可能性もある為、一度就業規則を確認しておくと良いでしょう。

 さらに、仕事と子育ての両立を図るために行動計画を立てて周知している企業に対して、厚生労働大臣の認定(くるみんマーク)制度があります。

 同認定がされている企業であれば、会社自体の理解度は高いとみて問題ないでしょう(男性の育児休業取得率も認定要件の一つである為)。

 ※くるみん認定の有無は、「厚生労働省:くるみん認定企業一覧」で確認できます。

1-2.上司や同僚は多様性を尊重しているか

 続いて、日常的に接している際の感覚的なものとなりますが、上司や同僚が多様性を尊重しているか、確認しておきましょう。

 例えば、以下のような視点で確認すると良いでしょう。

  • 【多様性の確認例】
  • ・子どもの体調不良等で休暇(半休含む)を取得した人に対する扱いはどうか
  • ・職場内の上司や同僚が何らかの制度利用(有給など)に対して愚痴をこぼしていないか
  • ・LGBTQ等、価値観の異なる人を極端に否定していないか

 今回は、育児に関しての多様性が尊重されていれば心配する必要はありませんが、有給消化すら難しい(取得しにくい)職場では、少し説明に時間をかける必要があるかもしれません。

1-3.短期(数日間)の育児休業事例はあるか

 こちらは、直接的な確認方法になりますが、社内や職場の短期事例について確認しておきましょう。

 短期取得率の高い職場であれば、長期取得も受け入れられやすいと考えられますが、短期取得率がゼロに近い場合、こちらも少し説明に時間をかける必要があるかもしれません。

 例え、上司に理解があったとしても、さらにその上の上司の理解が無い場合、人員補充の観点で少しもめてしまう可能性もあります。

 また、前例が少ない場合は上司自身も対応に慣れていないため、人員配置や必要な手続きが把握できておらず、そういったフォローが必要になることも考えられます。

2.長期育児休業の意向を会社に伝える

 続いては、実際に会社に長期育児休業を申請する際の注意点について紹介します。

 筆者は男性初の長期休業でしたが、以下に紹介する方法で説明したことで、他部署の上司含めて後押ししてくれました。

 必ずしもこの方法が正解ではありませんが、一つの参考としてご覧いただければと思います。

2-1.育児休業の意向は可能な限り早く伝える

最も大切なこととして、育児休業したいことを上司に"速やかに"伝えることです。

「厚生労働省:令和元年度雇用均等基本調査」によると、62.4%の職場で育児休業者の欠員に対応するために何らか(派遣や人事異動)の人員補充を行っています。

半数以上の職場において、人員補充を行わなければならず、その為には最低でも3~4か月前には準備が必要です。

 法律上は、1か月前までの申請と定められていますが、会社側の対応を考えると、安定期に入れば(約6か月前)速やかに伝えることが望ましいでしょう。

また、女性は妊娠により、必然的に早期に育児休業の意思を確認することができますが、男性は見た目では分からない為、自ら早期に相談するように努めましょう。

 参考までに、育児休業の意向を早く伝えることによるメリットとデメリットを記載しておきます。

  • 【育児休業の意向を早く伝えるメリット】
  • ・万が一、早産など育児休業開始が早まっても対応しやすい
  • ・会社側に猶予時間ができ、スムーズな引き継ぎをしやすくなる
  • ・会社や上司に対する誠意を示すことになり、信頼関係に繋がる
  • ・引継ぎ体制の目途が立てば関係部署や同僚への説明もスムーズにしやすくなる
  • ・育児休業にスムーズに移行すれば、復職もスムーズにしやすくなる

  • 【育児休業の意向を早く伝えるデメリット】
  • ・どうしても理解が得られない場合、休業開始まで少し業務がやりにくい
  •  (但し制度利用を理由として職場に居づらくなるような扱いをすることは法律で禁止されています)
  • ・万が一、不幸があった場合に職場をバタバタさせてしまう可能性がある
  • ・休業開始まで重要な業務に携われなくなる可能性がある
  •  (但し制度利用を理由として軽易な業務に従事させることは法律で禁止されています)

 基本的には、デメリットは職場の理解度が低い場合に発生するものであり、法律上は制度利用を理由とした職場環境の悪化や、不当な業務転換は禁止されていますので、デメリットを極端に心配する必要はないでしょう。

 万が一、不当な扱いを受けそうになった場合は、社内コンプライアンス室や「相談窓口:都道府県の労働局」に相談することで解決できる可能性があります。

2-2.育児休業の前向きな理由を直属の上司に伝える

 男性の育児休業に対する理解度が低い場合、前向きな理由を伝えることをおすすめします。

 本来は、「育児のため」だけで取得できる制度ですが、社会的な理解はまだそこまで進んでいません。

 これを機に、男性の育児休業が抱える社会的な課題や背景を理解し、それらを踏まえた上で、会社に説明することで理解が得られやすくなります。

 以下に、厚生労働省Q&Aに記載されている男性育児休業の目的を紹介しておきます。

「国が男性の育児休業を推進している背景、理由は何ですか?」

 勤労者世帯の過半数が共働き世帯になっている中で、子育て期の父親と母親がともに子育ての喜びを感じ、その責任を果たしながらやりがいや充実感を持って働き続けられる社会の実現を目指すことは大変重要です。

しかし、男性の家事・育児時間は先進諸国と比べて短い状況にあります。その結果、女性に子育てや家事の負担がかかりすぎて、女性の継続就業を困難にするとともに、第二子以降の出産意欲にも影響を及ぼし、少子化の原因になっているとの指摘があります。

こうした状況を踏まえ、女性の仕事と子育ての両立の負担を軽減し、その継続就業や円滑な職場復帰を図るため、また、男性の子育ての最初の重要な契機とするため、国は男性の育児休業の取得を促進しています。

「イクメンプロジェクト:育児休業等についてよくある質問」より

 難しく記載していますが、要するに男性の育児休業推進の背景には、「女性の継続就業や円滑な復職」「少子高齢化社会」があるということです。

 つまり、上司に説明する際は、以下のような内容を参考にすると良いかもしれません。

  • 【育児休業の前向きな理由例】
  • ・女性が活躍しやすい社会を実現する取り組みの力になりたい
  • ・家庭と仕事の両立が認められる職場を作りたい
  • ・育児を通じて自身のスキルを磨くとともに温かい家庭を築きたい

 その他、「上司や同僚に響きそうな言葉」を使って伝えると効果的です。

育児休業は、会社や社会にとって決してネガティブなものではありません。前向きな取り組みをしている誇りを持って伝えると良いでしょう。

 また、このタイミングで必要な根回し(他部署の説明など)についても、上司に相談しておくと良いでしょう(上司を信頼して相談していることが伝われば信頼関係を築くことにも繋がるため、一石二鳥です)。

2-3.休業前と復職後の働き方を伝える

 育児休業取得に必死になると、忘れがちですが、「復職後の業務への向き合い方」を同時に伝えておきましょう。

 休業前と復職後の働き方については、以下を参考にすると良いでしょう。

  • 【休業前の業務について】
  • ・復職前の労働条件(業務内容など)について意向を伝える
  •  (引継ぎ資料が必要な場合は通常業務を少し調整してもらわないと難しい場合もあります)
  • ・引継ぎ資料の進捗や内容についてすり合わせる
  •  (事前にいつ資料確認してもらうのか等、合わせて確認しておくと良い)

  • 【復職後の業務について】
  • ・復職後の労働条件(フルタイム、短時間、残業規制等)、職種について意向を伝える
  • ・復職がずれ込む可能性(保育園、配偶者の育休期間)を伝える
  •  (誕生月によっては保育園に入りづらい、慣らし保育が必要など、意外と後ろにズレやすいです)

 なお、「厚生労働省:平成30年度雇用均等基本調査」によると、育児休業後に復職する割合は95%、そのうち原則として現職復帰する割合は、67.6%となっています。

 男女関係なく調査されたデータとなっていますが、法律で不当な取扱いが禁止されている以上、基本的には希望(現職相当)に近い復職が可能と考えてよいでしょう。

3.長期育児休業を取得する目的を整理する

 ここまで、育児休業を会社に申請する上で意識しておくことを紹介してきましたが、育児休業を申請する前に、改めて育児休業を取得する目的を整理しておくことをおすすめします。

3-1.育児休業を通じて何を達成したいのか確認する

 育児休業を通じて何を達成したいのか、夫婦でしっかりと話し合って決めておきましょう。

 育児休業の目的が、夫婦で認識が異なっていると、「全く家事に協力しない」「取るだけ育休」などと言われ、夫婦関係の悪化につながってしまう恐れもあります。

 育児休業を通じて、家族との時間を多く過ごしたいのであれば、夫婦対等な家事育児ができるように、育児休業前から妻の家事のやり方を教わる等、事前準備も欠かせません(慣れない育児と一緒に始めるのは難しいです)。

 「何故自分たちに育児休業が必要なのか」「そのためにどのような準備が必要なのか」もう一度、夫婦で確認しておきましょう。

3-2.育児休業の目的を夫婦で共有する

 育児休業の目的や、その目的を達成するために必要な準備について、夫婦で共有しておくことも大切です。

 最近では、SNS等でも情報が手に入る為、例えば「家事や育児は全部旦那がしてくれるはず」等、お互いの認識がズレている可能性もあります。

 単に「育児の為に休業する」と言っても、夫婦平等に分担する場合もあれば、将来の為の投資や自己研鑽に時間を使う場合もあります。

 せっかく労力をかけて取得した育児休業を無駄にしない為にも、育児休業の目的について、お互いの認識がズレていないか、お互いに納得感を持っているか、もう一度確認しておくことをおすすめします。

職場の理解度に応じて臨機応変に対応しよう

 本記事では、筆者の経験を基に育児休業を会社に申請する際の注意点について記載してきましたが、必要な配慮や準備に関しては、職種や職場の理解度によっても異なります。

 その為、育児休業をスムーズに進める為に、最も大切なことは、職場の理解度に応じて、ひとつひとつ"職場と協力して"準備を進めることだと考えられます。

 そして、育児休業を通じて達成したい目的をしっかりと達成し、その恩を職場(会社)に返すということです。

 育児休業は、"貴重な人材が働き続けるため"の法律ですので、会社(や上司)と親密に相談しながら、必要な根回しや準備をしていくと良いでしょう。