【夫婦で育児】夫に育児休業を取得してもらう方法!実例あり!
近年、共働きや専業主婦に関わらず、夫婦で育児の大変さや充実感を共有するために、夫に育児休業を取得してほしいと考える家庭が増えてきました。
しかしながら、男性が長期の育児休業を取得する事例は少なく、会社側としても休業中の評価や処遇に悩んでいることも少なくありません。
男性からすれば、休業による出世や継続就業への影響も懸念されますし、家庭では「取るだけ育休(休業しても家事育児に協力しない)」の不安もあります。
本記事では、そういった悩みを抱える方たちのために、男性の長期育休取得事例を踏まえながら育休までの流れ、注意点、夫の説得方法を紹介しています。
1.夫に育児休業を取得してもらうまでの基本的な流れ
まずはじめに、夫が育児休業を取得するまでの基本的な流れは、以下の通りとなります。
- 【夫に育児休業を取得してもらうまでの流れ】
- (1)出産後の具体的な生活スケジュール(役割分担)を共有する
- (2)育児休業を取得してほしいことを伝える
- (3)夫が前向きでなければ説得する
- (4)育児休業の時期と期間を決める
- (5)会社に育児休業の意向を伝える
- (6)出産⇒育児休業に突入する
- ※最悪の場合は休業中に転職準備をする
なお、夫に育児休業を取得してもらう上で、最も大切なことは、育児休業の取得を前提に考えるのではなく、家庭の将来や夫婦の役割分担のために、育児休業が必要かどうか、夫婦で確認するということです。
自分(妻)の為に、夫が育児休業するのではなく、「自分たちが望む家庭を築くために、夫の育児休業が必要だ」というイメージが大切です。
2.夫に育児休業を取得してもらう際のポイント(仕事対策)
続いて、男性が最も気にする可能性の高い「会社に育児休業を伝える際の注意点」を紹介します。
2-1.会社の理解度を把握しておく
まずはじめに、会社の「仕事と家庭の両立」に対する理解度を確認しておきましょう。
具体的には、就業規則に育児休業が定められているか(給与や評価の取扱いといった詳細まで)、国の「子育てサポート企業」認定マーク(くるみん)を受けているかといった視点で確認します。
※くるみんマークについては「厚生労働省:くるみんマークについて」を参照ください。
また、会社の理解に問題なさそうな場合は、職場の理解度についても、夫に確認してもらうようにしましょう。
具体的には、短期育児休業の事例があるか、女性が一定数居るか、その他の休暇制度が利用しやすいか、といった視点です。
大企業であれば、会社自体に理解があっても、特定の激務な職場などでは理解が得られにくいこともあるので、必ず職場の理解度も確認しておきましょう。
2-2.夫の市場価値(職種の求人率)を把握しておく
続いて、会社や職場の「仕事と家庭の両立」に対する理解度に不安がある場合は、万が一に備えて、夫の市場価値を確認しておくと良いでしょう。
具体的には、職種の求人倍率を見たり、転職エージェントサイトに登録してみることをおすすめします(転職エージェントによりますが、多くの場合、転職する意思が無くても、市場価値を把握したいという目的で相談することが可能です)。
なお、育児休業の利用を理由とする不利益な取扱い(解雇や退職勧告など)は、法律によって禁止されていますが、そういった取扱いが完全に無くなっているわけではありません。
男性に限らず、女性でも育児休業を理由とする嫌がらせ(「育児休業する人がいるせいで忙しい」といった嫌味を執拗に言われる等)を受ける事例は少なくありません。
そういった嫌がらせ等は、コンプライアンス室や「国の相談窓口」に相談することで、解消されるかもしれませんが、その職場で働き続けることは難しくなることも考えられます(夫自身の気持ちとして)。
別の職場に異動するといった対応もありますが、最悪の事態に備えて、夫の市場価値を把握しておいて損はないでしょう(夫婦間のトラブルを避けるため、妻が勝手に登録することは避け、夫自身で登録するように促しましょう)。
余談になりますが、近年では、経団連が「終身雇用の継続が難しくなってきた」と発言していることから考えても、育児休業に関係なく、市場価値をしっかりと把握しておくことは大切と言えます。
2-3.復職後の働き方も想像しておく
育児休業を取得することを決めた後は、復職後の働き方についてもイメージしておくことが大切です。
そして、会社に休業の意向を伝えるタイミングに合わせて、復職時の働き方についても相談しておきましょう。
会社としては、夫の育児休業中(または休業前)に、職場の人員配置について考えなければいけません。
その際に、本人の復職後の働き方(例えば、短時間勤務を利用したい、等)が分かっていれば、早期に職場の人員配置を考えることができるようになります。
また、休業時点で復職後の働き方を考えておくことは、家庭にとってもメリットがあります。
具体的なものでなくても、「短時間勤務を利用したい」「所定外労働制限を利用したい」といった、制度利用の有無だけでもイメージしておくと良いでしょう。
2-4.可能な限り速やかに上司に相談してもらう
育児休業について考え始めたタイミングで、速やかに上司に相談してもらうようにしましょう。
安定期に入って、予定日がはっきりしているのであれば、「育児休業を考えていること」と「その時期」を上司に伝えるようにします。
まだ妊娠前や安定期に入る前であれば、「育児休業を考えていること」だけ伝えておくようにしましょう。
3.夫に育児休業を取得してもらう際のポイント(家庭対策)
続いて、実際に育児休業を取得するにあたり、夫婦で考えておくべきポイントについて紹介します。
育児休業の主な目的は、夫婦で育児のやりがいや充実感を共有することです。
育児休業を取得しただけで、満足してしまわないように、育児休業中の生活を夫婦でしっかりと話し合っておくことをおすすめします。
3-1.育児休業の目的を夫婦で共有しておく
「取るだけ育休(育休しているのに家事育児に協力しないこと)」になってしまう一番の要因は、育児休業する目的を夫婦でしっかりと共有していないことです。
妻としては、夫婦平等な家事育児を考えていても、夫としては、あくまでサポートだと考えていることも少なくありません。
周囲の男性を見ても、夫婦平等に育児をしている家庭は少なく、「育児休業して家事や育児に向き合っているだけでも偉い!」と感じてしまう男性もいます。
そういったトラブルを避ける為に、育児休業に入るまでに、しっかりと夫婦の気持ちを共有しておきましょう。
なお、育児は育児休業期間(1年間)だけでは終わりません。
育児休業を通じて、夫の働き方(残業など)まで見直したい場合は、家事や育児だけでなく、転職に必要な資格勉強なども必要になるかもしれません。
ただ単に、1年間だけ家族でいっぱい過ごしたいのか、将来に渡り生活設計を見直したいのか、夫婦で育児休業の位置づけ(目的)を共有しておくと良いでしょう。
3-2.夫の家事能力を把握しておく
普段から夫婦で家事を分担している場合は、あまり心配する必要はありませんが、家事経験の少ない男性の場合、育児休業に入る前から家事のやり方を教えておくことをおすすめします。
出産後1か月間は、安静にしておく必要があるため、妻が里帰り等をしない場合は、夫が全ての家事をすることになります。
その時点で、初めて家事をすることになれば、手取り足取り、妻が教えなければならず、非常に苦労します。
単純に、洗濯を例にとっても、「洗濯機の使い方、洗剤の場所や量、色物の分け方、回す頻度、干し方、畳み方」など、こだわり始めるとキリはありません。
これだけは最低限守ってほしい、という妻のルールを教えておくと良いでしょう(特に、男性は女性もの衣類の洗濯の仕方などは教えられなければ分かりません)。
3-3.可能な限り休業中の役割分担も決めておく
これまでの内容と少し重複しますが、可能であれば休業中の役割分担を決めておきましょう。
休業中の役割分担を明確にしておくことで、夫の「取るだけ育休」を回避することに繋がります。
役割分担を決めると、「やらないといけない」というプレッシャーがかかるため、嫌がる人も居ますが、お互いに家事が得意(好き)でない限り、とりあえず分担を決めておくことをおすすめします。
どちらの役割分担になっていても、時間や余裕がある場合は、お互いに協力するようにしておくことで、分担に縛られすぎることもありません。
4.夫が育児休業に前向きでない場合の説得方法
続いて、夫が育児休業に前向きでない場合の説得方法を紹介します。
育児休業の主な拒否理由としては、「家事や育児をあまりしたくない」「会社を心配している」「キャリアの影響に不安がある」という3パターンがあります。
本項目では、これら3パターンの説得方法を紹介します。
4-1.夫自身が家事や育児に前向きでないケース
このケースの解決策は分かりやすいです。
そもそも夫婦協力して育児をするつもりがないなら、子どもを産みたくない、という趣旨で説明することが効果的でしょう。
夫に伝える際には、夫に育児を押し付けるために育児休業してほしいのではなく、育児のやりがいや充実感を共有したいということを伝えると良いでしょう。
それでも家事や育児をあまりしたくないという姿勢の場合は、強制的に育児休業を取らせてしまった方が良いかもしれません。
育児休業しなかった場合、本当に一切育児を手伝わない夫になってしまうリスクが考えられるためです。
4-2.会社の影響や評価を心配しているケース
こちらは一番良くあるケースかもしれません。
男性の長期育児休業は、全体の0.4%程度しか利用されていないため、社内初(職場初)の事例となることがほとんどです。
前例がない場合は、育休取得による出世や評価への影響が予想しにくく、育児休業をためらってしまいやすいものです。
また、出世や評価への影響を気にするだけでなく、育児休業中の職場の業務負担を懸念する声も多く聞かれます。
実際に上司に相談することなく、「今は抜けられないから無理だ」等と早々に諦めてしまっている男性もいます。
しかし、そもそも男性の育休事例が無い職場において、誰かが育児休業を申請する前から育児休業できる体制が整っていることはまずありません。
誰かが育児休業を申請して、初めて職場全体が育児休業について考える機会を持つことを忘れてはいけません。
そういった職場の理解については、別記事「【男性必見】育児休業を諦める前に!負の連鎖を断ち切る勇気を」にて詳しく紹介していますので、必要に応じてご覧頂ければ幸いです。
但し、本当に会社への大きな影響が避けられず、最悪の自体(退職)に追い込まれる可能性は否定できません。
最悪の事態(退職)となった場合は、経済的にも身体的にも相当な負担がかかることも事実です。
万が一、そういう事態になった場合は、「私(妻)が支えるから大丈夫」という気持ちを持つことも妻の心得として大切です。
最悪の事態になっても、夫婦で協力できるのであれば、夫も安心して育児休業の取得を決断できるでしょう。
4-3.夫がキャリアを優先したいケース
夫が今の会社に満足しており、かつキャリアを優先したいケースは一番厄介です。
そういった男性と結婚して、育児休業を望むことは一昔前では難しかったでしょう。
しかし、現代においては、諦めるのはまだ早いかもしれません。
一昔前とは異なり、現代では育児休業がキャリアになる時代になりつつあります。
自分の上司が「家庭をないがしろに仕事第一で働いている人」か「家庭と仕事を両立している人」ならどちらに上司になってほしいと思うでしょうか。
現代においては、間違いなく後者が支持されるでしょう。
そのうえ、国際的に求められている持続可能な開発目標(SDGs)においても、仕事と家庭の両立が求められており、これから社会を勝ち上がる企業には、「仕事と家庭の両立」は欠かせない要素となっています。
また、本当に実力があれば、キャリアアップはいつでもできますが、育児休業は今しか取得できません。
たった1年、家庭に向き合うこともできない人が、将来誰かの上に立ちたいと思うのは時代遅れです。
これを機会に、「キャリア」とは何なのか、広い視野で考え直してもらうと良いかもしれません(誰かの上に立つ人は未来を作り出す人であり、過去を築いた上司の真似をしていても意味がありません)。
5.夫の育児休業には夫婦で向き合おう
最後になりましたが、男性の育児休業取得には非常に労力がかかります。
育児は夫婦が共に責任を有し、協力して行うものですが、育児休業の取得にあたり、会社と揉めてしまう等、精神的な負担があることも事実です。
育休取得が一般的な女性ですら、嫌がらせを受けることは少なくありません。
そういった社会的な背景を理解し、妻としても夫の育休取得を支える覚悟が必要であることは言うまでもありません。
>但し、本記事では、男性の育児休業のリスクを中心に説明してきましたが、実際の復職率は95%です(厚生労働省:平成30年度雇用均等基本調査より)。
また、現職復帰又は希望通りの復職は、91.6%となっていますので、心配しすぎる必要はありません。
まずは、色々と悩むよりも、夫に育児休業してほしいことを素直に伝え、夫から会社に確認してもらうと良いでしょう。
貴重な育児休業が、夫婦にとって有意義なものになることを期待しています。
なお、育児休業を会社に相談してからの準備事項については、別記事「【後悔しない】男性が育児休業する前にしておくべき8つの準備事項!」にて詳しく紹介していますので、合わせてご覧頂ければ幸いです。